あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2021年6月11日

ベテランコーチも呆れるほど集中力が続かない子どもたちを集中させるにはどうしたらいいか教えて

コーチの話を聞かない、集合をかけても集まらない、練習中もおしゃべり......。ベテランコーチたちにも「ここまで集中できない代は初めて」と言われるぐらい集中できない低学年を練習に集中させるにはどうしたらいい?

サッカー歴は30年あるけど、指導者としては素人で怒鳴る以外の方法が思いつかない。とお悩みのコーチからご相談をいただきました。みなさんならどうしますか?

今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、悩める指導者に寄り添ったアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

<<サッカー未経験でコーチ就任、練習時間も少ない中でしっかりM-T-Mを実施するにはどうすればいい?

 

<お父さんコーチからの質問>

はじめまして。サッカーのメニューというよりは、低学年の扱いについての相談になります。

息子がいる小学2年生のコーチを担当しています。

2年生で13人いますが、半数以上がコーチの話を聞きません。集合を呼びかけてもすぐには集まりません。

また、そういった態度は練習中にまで引きずるケースもしばしばあり、練習中もおしゃべりしたりして集中できていません。ベテランのコーチ達もここまで集中できない代は初めてだと言うくらいです。

私はサッカー暦は30年以上と長いですが、指導者としては素人なので、怒鳴る事しかできません。

みんながコーチの話を聞かない→私が怒鳴る→みんな辞めて行く となって、チーム崩壊しそうな気がします。

そういった、話を聞かない、集中出来ない年代に対してどう改善していけばいいのでしょうか? アドバイスをよろしくお願いします。

 

 

<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

子どもたちがコーチの指示を聞かない。言ったとおりにやらない。

これは、子どもの年齢にかかわらず、指導者側の問題が大きいと思います。「指導者としては素人なので、怒鳴ることしかできない」と書かれているので、ご自分に対しこのままではいけないと感じてもいらっしゃるようです。

どうやれば子どもに伝わるか? どう言えば、聞いてくれるのか? そういったことを学ぶ必要があります。

 

■子どもたちの「波長」に合わせる

「波長合わせ」という言葉をご存知でしょうか。感受性トレーニングのひとつで、カウンセラーの勉強をすると出てくる臨床心理学の用語です。何かをやってもらうときに、子どもたちの興味があるもの、流行っているもの、みんなに話が通じるものに関連したものを掲げることです。

例えば大人でも、自己紹介をすることで「あの人、あんなことしてるんだ」などと情報を共有することで共感が得られて、コミュニケーションがスムーズに行えたりします。

 

■子どもたちが知っている話からサッカーにつなげていく

私が指導者になったころ、NHKの「おかあさんといっしょ」という番組を欠かさず見ていました。幼児クラスの子どもたちは見ているので、「今日、こんなのあったね」などと番組の話をして子どもが乗ってきたところで、その日に行う練習の話につなげたりしました。

今であれば、ゲームの話でしょうか。アニメーション、例えば「鬼滅の刃」でしょうか。「全集中」や「(例えば、ボールを)失っても失っても生きていくしかない」といった、子どもがよく真似をするセリフなどをちょっと挟んでもいいでしょう。

それ知ってる!!となりますね。

それじゃあさ、サッカーでこんなこと、知ってる? サッカーでこんなことしたいんだけど、と持っていく。そんな導入を試みてください。子どもたちにとって、コーチがぐっと近しい存在になるでしょう。

なおかつ、大声で怒鳴ったりしないこと。あくまでやさしい口調で語り掛けましょう。家庭がそうあるべきなのと同じように、何を言っても大丈夫な空間を作り出してあげてください。

 

■子どもの興味や世界に歩み寄ることで心の氷が溶ける

ここでの波長合わせは、いわば歩み寄りです。大人が子どもの興味や世界に歩み寄ることで、アイスブレークの役目も果たします。アイスブレークは、緊張した固い空気や心を氷にたとえて、それを溶かすことを指します。会議や研修をはじめる前に簡単なゲームや自己紹介をおこない、初対面の人どうしのぎこちない雰囲気を和ませたりします。

アイスブレークは、仲間との壁をなくすために行うことが多いですが、指導者と選手の壁を取り除くことにも役立つでしょう。ご相談者様を怖がってかやめる子どもが出てくることを心配されているようなので、ぜひそう考えてやってみてください。

 

■シュートを使ったゲームをウォーミングアップに入れる

では、何をやるか。

子どもが喜ぶのは、ゴールに向かってシュートを打つことです。よって、シュートを使ったゲームみたいなものをウオーミングアップに取り入れるとよいでしょう。

サッカーゴールをいくつか用意します。きちんとしたゴールでなくてもいいです。コーンでゴールを作ってもいいです。それをたくさん作って。なるべく一斉に始められるようにします。

もしくはドリブル競争でもいでしょう。コーンを通過すると1点。「さあ、10点とろう! 誰が一番早いかな?」と競争させます。また、いくつかあるゴールのひとつにはコーチがゴールキーパーとして立ってあげます。「ここは簡単に入らないよ!」とアピールすると、賢い子は他の子がシュートを打ってコーチがセービングしている間に打ったりします。そこは「卑怯だ」などと言わず、そのアイデアを称えてください。

メニューはどこにでもあります。何のメニューを選ぶかはあまり重要ではありません。そして同じく大切なのは、何をするかではなく、子どもたちにとってどんな指導者でいるか、です。

 

■子どもたちに気持ちよく練習に向かってもらうための注意

ご相談者様が、どうあるかによって、子どもたちの姿は変わってきます。怒鳴ったりではなく、子どもたちがうまくなるように考えてあげましょう。

そのためには、気持ちよく練習に向かってもらう必要があります。そして、練習メニューも何でもよいです。最高の練習はミニゲームであることだけ覚えておいてください。М‐T‐М(マッチートレーニングーマッチ)。試合をやってから練習をやって最後に試合。日本サッカー協会のサイトにも指導指針が出ているので、ぜひ読んでみてください。

ただ、アイスブレークをする際に、気を付けてほしいことがあります。それはアイスブレークのメニューで「ちゃんとやれ!」とか「ちゃんとやったら楽しいやろ?」みたいに、きちんとやることを押し付けないでください。そうなってしまうと、アイスブレークではなくなります。

 

■声掛けも変えてみよう 子どもたちを動かすのは「真面目にやれ」ではない

ご相談にはサッカー歴30年と書かれています。であれば、たくさんの指導者に出逢ってこられたと思います。では、今まで会ってきた指導者はどうだったのか? 子どもたちを成長させたのか? サッカーの楽しさを伝えていたのか? そんなことをまずは考えてみてください。

それから時代も変わってきています。今の時代に合った指導とは何なのか? そんなことをぜひ勉強してください。

声かけの仕方も、変えてみましょう。例えば「真面目にやれ」ではなく「ふざけてると勝てないぞ~」などと言うと、子どもは全員勝ちたいので真剣に取り組もうとします。

そもそも怒鳴ったり、厳しく言うことで、人の心が動くことはありません。子どもたち自らが「やりたい!」と思わない限り、集中しません。その意欲を引き出すために、楽しいことや勝ち負けのある練習を用意してあげましょう。

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Jクラブの外国人監督に指摘された日本の育成現場の問題

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