あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2023年10月20日
ドイツと日本の育成年代で大きく違うところは? 指導経験が浅くてもマネできる練習メニューを教えて
■田中碧選手の所属チームでは擬人法を使って「サッカーの本質」を伝えている
田中碧選手が在籍するフォルトゥナ ・デュッセルドルフにも視察に行った際、広報を務める日本人スタッフの方にとても興味深い話を聞きました。フォルトナでは小学生に大事なことを伝えるときに、擬人法を使うそうです。動物に例えるのです。
「さあ、君たちはオオカミの群れです。獲物をとらえるために、みんなそれぞれ役割が決まっている。みんなで協力して狩りをして、みんなで美味しい食事をしよう。でも、誰かひとりでも一匹オオカミになってしまうと、協力し合えない。一匹オオカミはひとりでえさをとれなくて死んでしまうんだ。だから一匹オオカミを作ってはいけないよ」
これはサッカーというスポーツはみんなでやるものだ。自分勝手にプレーしないことが大切だ。チームで動かなくてはいけない――そんなサッカーの本質を子どもにわかりやすく伝えるため、狼に例えています。
さらに、ピッチの上で首を振っていっぱい見たほうがいい、と視野を取る重要性を伝えるときは「フクロウの眼のようになれ」を挙げます。フクロウは右と左の眼球をバラバラに動かせます。いろんなところがいっぱい見られるというわけです。
サッカーを理解してもらうために、どうすれば子どもに伝わるかにとてもエネルギーを割いていました。大人から「ちゃんと見ろ」とか「走れ」といった抽象的な声掛けも耳にしませんでした。
メニューはネットでも本でもどこからでも引っ張れます。まずは、ここまで説明したことを参考にして、ボールを運ぶことを理解させてください。メニューはひとりでやらないものを軸に選んでください。
こちらの連載でもメニューの話はたくさん出てくるのでチェックしてみてください。
池上 正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。
12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。