あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]
2023年12月19日
スクールのみでチームに所属してない子、対外試合の経験が積めない弊害はあるのか教えて
■池上さん自身、子どもたちが楽しむことより園の要求を優先され「もう来なくていい」と......
最後に、私の経験をお伝えしましょう。YMCAで指導員だったころ、保育園のスポーツ指導に通っていました。
「気をつけの仕方を教えて」「ラジオ体操を美しくできるようにしてください」といった園長先生からの要望に応えました。ある意味、園長が望んだ指導をしたのです。その出来栄えに、園長は喜びました。
ところが、子どもたちは窮屈そうに見えました。
「教え込むようなそんな指導じゃないほうがいいですよね? こうもできますよ」と異なるやり方を提案しました。若い先生たちにみていただくと「こっちのほうがいい」「楽しそうですね!」と賛同を得ました。
そこに運動会がやってきました。私はサーキットトレーニングのような鉄棒や跳び箱を子どもたちにやってもらいました。入場行進や退場行進といった園長先生が好むようなものを省き、園庭の真ん中に立つと「みんな、さあおいで! 好きなものをやってごらん!」と声をかけました。
子どもたちは喜びいさんで飛び出してきました。わーっと歓声をあげてやり始めました。年中さんでも逆上がりをしていました。みんなが楽しんでいて、若い先生たちは満足そうでした。
ところが終了後、私は園長から呼ばれて「もう来なくていいです」と言われました。40年も前の出来事です。3歳児が入場行進で手が上がっていないと、その小さな手を叩かれる。そんな時代でした。
先日も、ある自治体のスポーツ協会主催で「スポーツインテグリティ」をテーマに講演をしました。スポーツはどこから来たのか? スポーツとは何なのか。そこを大人が理解して変われなければ、子どもはスポーツで幸せになれない。私はそう思います。
池上 正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。
12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。