子どもの本気と実力を引き出すコーチング
2019年6月 4日
承認欲求を満たすことが成長のカギ! 子どもの本気を引き出す「声かけ」具体例
自分の指導していることが子どもにうまく伝わらない。「なぜ出来ないんだ」と言ってしまうあなた。人間の本能と心理を理解すると、ガラっと子どもを見る目が変わります!! するとあなたの指導力もグッとレベルアップします。
4月6日に発売された「子どもの本気と実力を引き出すコーチング」(内外出版社)より、「なぜ出来ないの?」ではなく「どうすればできる?」のか、失敗を怖がって無意識にかけてしまうブレーキの外し方、緊張のコントロールなど、現代の子どもたちのコーチングに必要なスキルと、ケガの応急処置など大人が知っておかなければならないことをピックアップしてご紹介します。
「子どもにこうなってほしい」と思っているだけでは現状は変わりません。
あなたが変われば子どもも変わるのです。指導者だけでなく、保護者の方も普段の会話に取り入れるなど参考にしてください。
最終回となる第六回目の今回は、国際武道大学でスポーツ心理学、コーチング科学の教育・研究に携わる前川直也准教授による、子どもの実力を引き出すコーチングをご紹介します。
<<前回:具体的な目標設定がパフォーマンスを上げる! 目標設定の5原則とは
■「ほめて伸ばす」ではなく「努力・事実を認める」
人が声をかけられて一番うれしい言葉は何だかわかりますか?
「速いね」「上手いね」「強いね」と言った能力をほめる言葉ではありません。
「頑張っているね」「休まず練習にきているね」「先週より上手く出来るようになったね」「前よりも記録が伸びているね」
という、行動や事実を認める言葉です。つまり結果を見てかける言葉ではなく、過程を見てかける言葉です。
「ほめて人を伸ばす」と言われますが、これはほめているのではなく、その人が努力している事実を認めてあげているのです。心理学的に言うと「承認欲求を満たす」わけです。
その人なりに努力したこと、進歩・成長した点があるはずです。それがどんな小さなことであっても、目の前にある「事実」として伝えてあげる。これを事実承認と言います。事実を認めるためには、その人のことをよく観察しないとできないことです。そのため認めてもらった人も「自分のことを気にかけてもらっている」と感じることができます。
「今日一番に練習にきた」
「一番最初に道具の用意をした。掃除やグランド整備にとりかかった」
「集合の声をかけたら一番にやってきた」
そういった日々の練習の中で、どんなに小さなことでもいいので「一番」をいかに細かく見てあげるかということです。いろいろな視点での一番を作るのです。何かしらの一番になることが、その人のチーム内での居場所を作ることになります。
■力を発揮できる環境づくりが指導者の使命
人は自分では能力と努力の区別ができないこともあります。技術の習熟度や体力などで競争させてしまうと、「自分は能力が足りないから一番になれないのだ」といったマイナス思考に陥いる恐れもあります。
努力を認められた人は、「ここが自分の居場所なんだ」という安心感を持ち、さらにはチームへの愛着、参加意識も強くなります。それが個々の成長にもつながっていくでしょう。
人問は誰しも成長する可能性を持っています。そのために、その人の居場所を作り、その人が力を発揮できる環境を作っていくことが指導者の使命です。力を発揮できる環境を作っていくことで、チームに人をとどめおく力、「集団凝集性」が高まります。
<<前回:具体的な目標設定がパフォーマンスを上げる! 目標設定の5原則とは
【著者プロフィール】
前川直也(まえかわ・なおや)
1977年生まれ
国際武道大学体育学部准教授、同大学大学院武道・スポーツ研究科准教授
博士(スポーツ健康科学)
著書...「公認柔道指導者養成テキストA指導員」公益財団法人全日本柔道連盟
その他...日本傳講道館柔道六段、全日本柔道連盟公認Aライセンス審判員、全日本柔道連盟公認柔道指導者A指導員、公益財団法人日本スポーツ協会公認柔道コーチ、国際武道大学柔道部コーチ