U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2014特集
2014年8月28日
日本が世界に追いつくために!「幅の広さと縦の深さ」とは?
本日から『U12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2014』が開幕しました。昨年第一回を行い、大反響を巻き起こした大会を『ジュニア年代に身につけておきたいプレーのコンセプト』という視点から、サッカーサービスのポールコーチに分析してもらいました。FCバルセロナを始め、世界トップレベルのサッカーを知るポールコーチは、日本のジュニア年代のプレーをどう見たのでしょうか? 先日配信した「世界的指導者集団が分析!ジュニア年代の日本と世界との差とは」の続きをお届けします。
取材・文/鈴木智之
■両脚でドリブルできる日本人
みなさん、こんにちは。サッカーサービスのポールです。私は今年から日本に住み、ジュニア年代の選手たちの指導をしています。サッカーサービスのスクールでは、ジュニア年代に身につけておくべき様々なコンセプトにもとづいて、トレーニングを行っています。前回に引き続き、日本のジュニア年代の子どもたちが、もっと向上できるプレーを紹介したいと思います。
前回、紹介した2つのコンセプト「マークの仕方」と「サポートの動き」に加え、私が日本の子どもたちに感じた3つ目のコンセプトは「幅と深さ」です。
日本の選手たちはボールを扱う練習をたくさんしているので、ボールコントロールについては良い場面がありました。たとえば「相手から遠い方の足を使うドリブル」です。相手が自分の右側から寄ってきたとき、最初は右足でボールを触っていましたが、相手が右側から来るので、左足に持ち替えてドリブルをしている選手がいました。そして、相手とボールとの間に体を入れてブロックし、空いているスペースへと進んでいきました。U-12年代において、左足、右足に差がなくドリブルができるのは優れた能力です。状況に応じて適した足を使い、ドリブルをする判断はすばらしいものがありました。このドリブルは、プロの選手全員ができるわけではありません。ドルトムントのマルコ・ロイスなど、限られた選手が得意とするプレーです。
一方で『パス』を使って攻撃をするとき、日本の多くの選手が『ピッチの奥行きと横幅を使う』というコンセプトを教わっていないのか、とにかく焦って前へ前へ、相手のゴールに直線的に迫ることが多くありました。ピッチの横幅を使う意識が低いので、選手は中央にばかりポジションをとり、パスにしてもドリブルにしても相手選手が密集するところに進入するなど、自ら難しい局面を作っていました。日本の多くの選手は、たとえ前方に相手のDFが2人いて、味方が1人しかいない状況であっても、直線的に中央のエリアを攻めこんでいきます。しかし、数的不利の状態のため、突破するのは至難の業です。ピッチの横幅と縦の深さを考えて、バランスよくポジションをとっていれば、2対4などの数的不利で攻める場面はそれほど多くは生まれません。幅と深さをとることでピッチを広く使うことができ、プレーをするスペースが生まれるからです。
センターフォワードが高い位置をとっていれば、中央にスペースができますし、そこを使うこともできます。サイドでボールを持ったときも、サイドハーフとサイドバックの距離が近すぎることがよくあります。狭いスペースを強引に進んでいこうとするので、プレー自体が難しくなり、ミスをして相手にボールを奪われることが頻繁に起こります。
ボールを持っている味方に近づき過ぎると、プレーをするスペースを潰してしまうことにもなります。また、守備側からすると守るべきスペースが狭くて済むので、守備をしやすくなります。サッカーサービスでは、サポートなどの概念を教える前に、ピッチを広く使ってサッカーをすることを教えます。それができていないと、プレーするスペースを持つことができないからです。チームとして幅と深さをとり、ピッチを広く使ってプレーしないと、スペースがないのでパスを繋ぐことも難しくなります。ドリブルにしても、相手が密集している場所を突破することは難しいプレーです。