U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2014特集
2015年3月26日
FCバルセロナに0-9で負けたチームが学んだこと
「悔しい」「もっとうまくなりたい」「あんな風にプレーしたい」
ひとつの試合、ひとつのプレーで子どもたちが変わる。サッカーでは、100の言葉より1試合、自ら学び取った経験がやる気に火をつけ、その後のプレーを大きく変えていくことがあります。
「ああ、そんなに悔しかったんだ」「あの試合からなんか練習に向かう姿勢が変わったよね」
これまでどんなに言葉を尽くしてものんきに構えているように見えたわが子が、急に姿勢を正してサッカーに向かう姿を感じたことのあるお父さんお母さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
昨夏行われたジュニアサッカーワールドチャレンジ。バルセロナ、ACミランなど世界の強豪に文字通り“チャレンジ”するこの大会では、会場のそこかしこで子どもたちを一瞬で変えてしまう体験、一種の“化学変化”が起きていました。
なかでも最大級の衝撃を経験したはずのチームがあります。第二回大会の昨年から新設された「街クラブ枠」で出場し、グループリーグでバルセロナと対戦した諏訪FCプライマリーです。(取材・文 大塚一樹 写真 大塚一樹/田川秀之)
■ワールドチャレンジの蒔いた種を追いかけて
「応募した時はまさか当選すると思っていませんでしたし、バルセロナと同じグループに入るとも思っていませんでした」
井川雅文監督は「セレクションもないようなチームですから、一体どんな試合になってしまうんだろうという不安もあった」と率直な胸の内を証してくれました。結果は0−9での完敗。それでもバルセロナの監督は女子選手を含む諏訪の子どもたちの最後まで諦めないプレーに「脱帽でした」と賛辞を送り、試合を終えた選手たちのなかには、世界最高峰と言っていいバルサに負けた後、悔しさをにじませた選手もいたのです。
このチームはここからどう変わっていくんだろう?
サカイクでは、約半年が過ぎた1月、神奈川県秦野市の招待試合に参加した諏訪FCプライマリーの監督、選手たちを訪ね、彼らの“その後”についてお話を聞きました。
■バルサだったらどうする!? プレーの基準が底上げされた
「あのときのバルサみたいなプレーができるといいね、ああいうときバルサだったらどうする?」
井川監督はワールドチャレンジ以降、選手たちの意識が変わっていくのをはっきりと感じ取ったといいます。
「試合での課題やプレーがうまく言っていないとき、これまではどうしたらいいかというのが子どもたちの中でもはっきりとはしていませんでした。それがバルサや日本のトップクラスのチームと試合ができたことで、こうしたい、こうしよう、というのが共通のビジョンになった」
練習でも「バルセロナは1タッチ、2タッチでボールを離していたよね。そのためにはどうしたらいいだろう?」「そう、そのための準備をしなきゃいけないよね」という会話が成り立つようになりました。それまでも「3タッチ以内!」と声をかけることはあったそうですが、バルセロナと対峙することで子どもたちは「なんで3タッチ以内なのか?」「ボールを素早く回すとどんなサッカーが出来るのか?」を肌で感じることができ「そんなプレーしてみたい」と自ら取り組むようになったというのです。
「バルサだけじゃなくて、ワーチャレに来ていたチームのレベルが高くて勉強になりました。他のチームの練習にも気がつくところがたくさんあった」
はじめにワーチャレ体験を話してくれたのは、キャプテンの塚田蒼選手。諏訪FCは大宮アルディージャジュニア、鹿島アントラーズジュニアとも対戦しましたが、バルセロナだけでなくこうしたチームの試合前の準備、練習などにもしっかり目を向けていたようです。
「バルサとできる! ってワクワク感はあったけど、いざ試合が始まると課題がたくさん見つかって、試合が終わったらやっぱり悔しかった」
レベル差がありすぎて試合が成立しないのでは? そんな穿った見方をしてしまう大人の心配を他所に、子どもたちはピッチの中で普段感じることのできない“世界”を思う存分身体に浴びていたのです。