U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2014特集

2015年4月 3日

格上チームの試合を観て、子どもたちが考えだしたこと

■大人より的を得ている? 子どもたちの視線の先

「動き方の引き出しがたくさんあった。海外のチームは足の早さじゃないプレーのスピードが違った」
 
チームのキャプテンでFWの村上慶選手は、自分と同じポジションの選手の動き出し、ボールのもらい方、身体の向きに目を凝らしました。
 
「バルサの9番は動き方もそうだけど、足が届きそうもないボールも気持ちで届かせているようなすごさがあった」
 
バルセロナのエースストライカー、パブロ選手は、柔らかなボールタッチと豊富なボールの引き出し方で現地でも高い評価を受ける選手です。彼の技術はもちろん、スピリットにも目を向け「自分たちとはなにか違う」と感じ取れる感性に驚かされます。
 
「パス回しのところでは遊んでいるように見えた。楽しそうにボールを回していて、抜きに行くところではタイミングをずらして逆を取ったりしていた。自分もそういうプレーがしてみたいと思っていたので、同じ動きをして真似したりした」
 
増田鈴太郎選手は自分と同じくらいの体格の選手の動きを参考に、フェイントや逆を取る動きを、早速、実践していると言います。
 

■"観る"ことでプレーが広がる

「試合を"観る"だけでなにか変わるの?」
 
そんなふうに思っている方も大勢いるかもしれませんが、大切なのは試合の観方なのです。
 
じつは元石川SCでは「観る」ことをメインテーマのひとつに掲げています。鈴木監督は「たとえば相手チームやマッチアップした相手をしっかり観ること。これは情報を得ることで駆け引きが重要なサッカーでは、情報の得方、相手を観察することがとても大切」だと選手に伝えています。
 
表面的な視覚だけでなく、相手の内面や性格を見抜いて動きを予想する観方や視覚以外の感覚をフル活用して相手を感じ取る方法。こうしたプレーが出来るようになれば、もっとうまくなれる。鈴木監督がワールドチャレンジに選手たちを連れて行ったのも、観察すること、観ることの大切さを選手たちに体験してもらいたいという思いもあってのことです。
 
元石川SCでは、日本代表の応援を兼ねて試合を題材にスカウティングを行うこともあると言います。選手たちにスカウティングのポイントを聞くと「ゴールキックがどこまで飛ぶかとか、DFの守り方がどうなっているかとか、チームとしてどういうラインを作っているかとか……」次々に専門的なサッカーの観方の話が出てきました。
 
「戦術に詳しくなることが目的ではないんです。自分たちならどうするか、どう動くか、相手をどう崩せるか、何を仕掛けてみたいかを考えて欲しくてやっているんです」
 
鈴木監督はサッカーの観方を学べば、プレーに生かせる観方ができるようになるといいます。
 
「ワールドチャレンジのような世界を感じられる大会が日本であって、それを選手たちが観ることができるというのはとてもいいことですよね」
 
プレー分析の他にも、ワールドチャレンジの数試合を観た元石川の選手たちは「自分たちも出たい」「バルサとやりたい」「もっと強いチームとやりたい」と目の色を変えたといいます。彼らにとってはここに参加したすべてのチームが“同い年のライバル”になったわけです。
 
サッカーの練習ももちろん大切ですが、良いプレー、自分よりうまい選手のプレー、すごいチームのサッカーを観ることも、技術面、精神面の両面でそれまで観ることのできなかった世界を観せてくれる可能性を秘めています。身近に開催されているJリーグ、テレビで見ることのできる世界のサッカーを観ることも、子どもたちの上達に多いに役立つのです。
 
元石川の子どもたちがワールドチャレンジから感じ取ったものはまさに“世界”に目を開くきっかけになるものでした。あのときヴェルディグラウンドでバルサの試合を観た、あのプレーを生で観た、そしてその時こんなことを感じた。それらすべてが、彼らのこれからのサッカーに少なくない影響を与えていくはずです。
 
 

 

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