U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2015

2015年8月27日

「技術は教えても球際の激しさは一度も教えたことがない」柏レイソルが体感した己に足りない"なにか"【レポート1日目】

バルセロナ、エスパニョール(ともにスペイン)、デポルティーボ・カミオネーロス(アルゼンチン)、U-12ベトナム代表を招いて行われる、12歳以下の"世界"を体感する大会、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジが27日、対に開幕しました。
 
開幕カードで過去2大会を圧倒的な強さで制したバルセロナと対戦したのは、ダノンカップに本大会王者で、先日、強豪ひしめく関東大会を制したばかりの川崎フロンターレU-12。試合は開始3分に中央からのワンツーで崩したバルサが先制しましたが、川崎がPKで追いつき同点のまま後半へ。徐々にバルサのサッカーに慣れてきた川崎は勝ち越しの可能性を感じさせるサッカーを見せますが、28分、48分に失点を喫し、FCバルセロナが3-1で、3年連続の開幕戦勝利を果たしました。(取材・文 大塚一樹 写真 鈴木蹴一)
 
世界屈指のバルサを相手に確かな存在感を示した川崎フロンターレのCB甲斐翔大選手
 

■川崎フロンターレが体感した"世界"

「この時期にああいう相手と戦えることはいい経験になった」
 
バルセロナを率いるミラ・エレーロ・セルジ監督は、新チームとなり練習を開始してまだ1週間、プレシーズンの期間だというチームが苦戦したことを素直に認めました。
 
試合開始当初こそバルサの素早い寄せに戸惑った川崎の選手たちでしたが、時間が経つにつれてそのプレッシャーにも慣れてきた様子。
 
「バルサと同じポゼッションサッカーを志向する、とても力のあるチーム。チームプレーでやっているのでチーム全体に力があったが、選手たちの“速さ”には驚いた」
 
セルジ監督は、川崎がボールを保持したときに見せた攻撃の組み立てにポゼッションサッカーの匂いを感じ取ったようでした。
 
「日本にはあんな体格の選手はいない」
 
試合開始当初は、バルサの素早いプレッシャーに戸惑うこともあった川崎のDF陣。ダノンカップのMVPで対人プレーに抜群の強さを発揮するCB甲斐翔大選手は、試合開始当初バルサのFWバ・ママドゥ・サイドゥ選手に体を当てられ、入れ替わられてしまいます。さらにいつもは攻撃のスイッチになるビルドアップのパスをカットされるシーンも目立ちました。
 
「はじめの方はサイドバックへのパスを狙われてカットされた。寄せてくるのが早くてすこし焦ってしまった」
 
バルサの個の強さと強烈な守備の洗礼を受けた甲斐選手でしたが、そのあとは、バルサのスピードや当たりの強さに慣れていったようでした。
 
「11人制に慣れていないので、グラウンドの確認、ポジションの確認をして修正をしました」
 
その言葉通り、試合が進むにつれて川崎が守り切る、ボールを保持して攻めるシーンが増えていきました。
 
「攻撃で通用したこともあった」
 
中盤でプレッシャーを受けながらもパスを配球したMF小室愛樹選手は、自分たちがボールを持って攻める形がつくれたと胸を張ります。
 
バルサ相手に健闘した二人は声をそろえて「もういちどやって勝ちたい」と、今日の手応えを語りました。
 
世界を体感しないとわからないことが、そこにはありました。
 
中にはウエイトオーバーに見える選手も交じっていたが、南米独特の球際の激しさや巧みなボールキープ力、試合を左右する局面での力強さで、柏レイソルを苦しめたカミオネーロス
 

■カミオネーロスが見せた“アルゼンチン魂”

世界を感じた試合は他にもありました。今年から新たに加わった南米チーム、アルゼンチンのデポルティーボ・カミオネーロスは、会場に応援旗を取り付けたり歌を歌って他チームと交流を図ったりと、試合前から南米独特の自由な雰囲気を醸し出していました。アルゼンチンといえばメッシやマラドーナを生んだサッカー強国ですが、ピッチに立った選手のなかには明らかにウエイトオーバーに見える選手もいて、対戦相手の柏レイソルU-12の圧勝と予想する向きもありました。
 
試合が始まっても疑念はぬぐえません。国内随一のパスワーク、テクニックを誇る柏に対して、球際の強さを見せるもののボールを支配されるカミオネーロス。3分、10分と柏にゴールが生まれ、このままワンサイドゲームになるかと思われました。しかし、当たりの強さと球際の強さを発揮し続けたカミオネーロスが、徐々に主導権を握っていきます。FKがバーに阻まれても、あきらめずに詰めていたFWテグリオ・イアン・ホアキン選手が太ももでボールを押し込み1点差とすると、カミオネーロスの相手ペナルティエリア内での両足タックルをきっかけに、柏のDFがつられたようにスライディングを仕掛け、PKを献上。あれよあれよという間に同点に追いついてしまいました。
 
その後は、相手ボールホルダーに対してスライディングを辞さず激しく執拗に迫るカミオネーロスが“アルゼンチンらしさ”を存分に発揮します。柏はいつものパスワークが影を潜め、肉弾戦に引きずり込まれたようなプレーを続けました。それでも、10.植竹陸月選手のドリブル突破から最後は9.真家英嵩選手のゴールで勝ち越し。南米的な試合に感化されたわけではないと思いますが、柏の選手たちは、ゴールの瞬間喜びの声を大声であげました。
 
「技術は教えるが、アグレッシブさや球際の激しさは一度も教えたことがない」
 
カミオネーロスのホルヘ・ルベン・デウー監督は「それがアルゼンチンの文化なんだ」と言葉を続けました。
 
柏はこの試合で自分たちのサッカーはできなかったように見えましたが、カミオネーロスの日本では経験することができないサッカーへのアプローチに“世界”を観たはずです。
 
大会ははじまったばかりですが、それぞれの試合で世界レベル、サッカーの違い、文化の違いが多く見られます。国内の大会とはひと味違った魅力のあるワールドチャレンジは明日大会2日目が行われます。
 
次ページ:世界屈指の実力を誇るバルサの子たちも苦労する、11人制に移行する難しさ
 

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