U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2016

2016年10月18日

サッカー少年は親より対戦相手から学ぶ!大宮アルディージャを変えたバルサの流儀

2016年、夏の終わり。日本とスペインの少年たちが繰り広げた光景が、ひとつのニュースとして世界に配信されました。そのニュースの中心にいたのが、FCバルセロナと大宮アルディージャジュニアの選手たち。『U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ』決勝戦後、FCバルセロナの若き選手たちが見せた振る舞いが、感動の声とともに世界に広がっていったのです。
 
子どもは親からなにかを言われて成長するものではなく、サッカーを通して対戦相手や仲間から学び成長していく――。
 
そんなメッセージをわたしたち少年サッカーに関わる大人たちに投げかけているようです。(取材・文 鈴木智之)
 
 

■バルサの子どもたちが示した対戦相手への敬意

その光景は、試合終了の笛が鳴った後に起こりました。試合は1対0でFCバルセロナが大宮アルディージャジュニアを下し、2大会ぶりの優勝を果たします。ベンチからは控え選手がピッチに向かって走り出し、選手たちは全身で喜びを爆発させます。誰彼ともなく輪になり「カンペオン!(チャンピオン)」の大合唱です。
 
 
これだけならば決勝戦の後に見られる、よくある光景です。しかし、ここからが違いました。優勝したFCバルセロナの選手たちは、敗戦に打ちひしがれ、ピッチに横たわって悔しさを露わにする大宮の選手たちのもとに駆け寄ると、頭を抱えて起こし、声をかけます。そして、試合後に整列をするときも、泣きじゃくる大宮の選手の頭をなで、肩を抱き、健闘をたたえます。
 

■大宮アルディージャからバルサへのメッセージ

大宮アルディージャジュニアを率いる、森田浩史監督は言います。「バルセロナに負けたことが悔しくて、涙を流すほどの真剣勝負ができたことはいい経験だと思います。しっかりと粘り強く戦うことができ、ゲームもある程度作ることができました。だからこそ余計に悔しくて、涙につながったのだと思います」
 
 
なかでもキャプテンのカプテビラくんは、大宮の選手一人ひとりに声をかけ、頬を優しくたたき、励まし、なぐさめていました。その様子がテレビや動画サイトを通じて世界中に拡散されると、各地で「感動した」という声があがり、ニュースとして各国で配信されました。
 
バルサ戦後、選手たちが繰り広げた光景に対する反応は大きく、森田監督は「海外を含めて多くのメディアに取り上げられたので、反響はありました。久しぶりにメールをくれた知人がいたり、何人かには『見たよ』と言われました」と笑顔で振り返ります。
 
そして、ワールドチャレンジ決勝からおよそ1ヶ月後。大宮アルディージャはクラブのYoutubeチャンネルに「大宮アルディージャジュニアからFCバルセロナへのメッセージ」と題し、感謝の言葉を綴った映像を投稿します。そこでキャプテンの多久島良紀選手は、次のようなコメントを送りました。
 
 
「僕たちは、試合に負けて悔しい思いをしました。でも、バルセロナのみんなの優しさ溢れる振る舞いによって、とてもいい思い出になりました。もし逆の立場になったら、自分たちも勝敗を越えて、お互いにたたえ合うことのできる人間性を磨いていきたいです」
 
次ページ:相手を尊重することがサッカー選手として、そして人としての成長につながる
 

 
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