U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022

2022年8月31日

フィジカル差のある相手との対戦、個人ではなくクラブのイメージを考えての行動 バルサが考えるピッチ内外での大事なこと

8月25日に閉幕した、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022。大会の目玉、FCバルセロナは、ヴィッセル神戸との準決勝で姿を消しました。

2番のギウ・マルティネス選手、11番のルスナン・エルナンド選手を中心に、サイドから迫力ある攻撃を仕掛けるもヴィッセルの固い守備を崩すことはできず。50分の対戦では0-0のドロー。勝ち上がりを決めるPK戦で3人連続して失敗し、涙をのみました。

3年前も監督としてチームを率いたアルベルト・アルカイデ監督(以下、アルベルト)に、準決勝の感想とこの年代の指導で重視していることを聞きました。
(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)

 


有償を本命視されていたバルセロナだったが、準決勝でヴィッセル神戸にPKで敗退(C)新井賢一

 

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■ヴィッセル神戸が中央のスペースをしっかり埋めたのでボールが回せなかった

――ヴィッセル神戸との準決勝はPK戦で敗退しました。試合に関して、どのような感想を持っていますか?

アルベルト 相手がしっかりとブロックを作って守備をしてきたことで、中央にスペースがなく、うまくボールを回すことができませんでした。

そのため、相手の背後のスペースにロングボールを出すことや、サイド攻撃を仕掛けたのですがなかなかうまくいかず......。この大会に来る前に練習や練習試合ができていれば、もう少し良いプレーができたと思います。

 


――ヴィッセルの守備陣が中央を固める中で、打開するための指示はしたのでしょうか?

アルベルト 特に指示はせず、この状況でどのようなプレーをすればいいかを選手たちに考えさせました。7人制のときは相手が引いて守ることが多く、我々が常に攻めています。相手のチャンスはわずかしかありません。ですが11人制になるとそうもいかず、スペースがあるので、見るべきことがたくさんあります。選手たちは11人制に慣れていないので、判断を間違えることがありました。

試合の中で何度も間違える中で「中央をドリブルで崩すことはできないから、もっとボールを動かそう」といったように、選手たちが考えてプレーすることをうながしていました。

 

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■ワールドチャレンジはバルサにとっても有意義な大会

――ヨーロッパは9月から新シーズンが始まるので、このチームは立ち上がったばかりということでしょうか?

アルベルト はい。このメンバーはU-12で7人制をしていた2つのチームから集まってきた選手たちです。プレシーズンが始まったのが日本に来る1週間前で、まったく一緒にプレーできていない選手もいました。

7人制から11人制に慣れる時間もなく、大きなスタジアム、観客の前でプレーするのも初めてだったので、選手たちにはいろんなプレッシャーがあったと思います。

 

――毎年プレシーズンにワールドチャレンジに参加していますが、この大会はバルサにとって、どのような意味を持ちますか?

アルベルト バルサとしては新シーズンが始まる前に、短期間でたくさん試合ができる、有意義な大会だと思っています。多くの試合をすることで、プレーの仕方を早く学ぶことができます。

初めて顔を合わせるメンバーもいるので、遠征という形で遠い国に来て多くの時間をともに過ごすことで、よりよいコミュニケーションをとることができる場になっています。

 

■バルサもユベントスも日本チームに負けた。3年前より日本のレベルも上がっている


日本のレベルが高くなったこと、バルサの選手がピッチ内外で大事にしなければならない心得などを語ってくれたアルベルト監督(C)新井賢一

 

――アルベルト監督は、3年前のワールドチャレンジにも監督として出場しています。3年前と今大会を比べて、日本サッカーの印象で何か違うものを感じたことがあれば教えてください。

アルベルト 3年前の大会は、日本チームのレベルが拮抗していました。あまり差がなかったので良い競争ができていました。3年前は海外のチームが多く彼らが準決勝、決勝と勝ち進んでいきました。(※ワールドチャレンジ2019大会:バルサはラウンド16でタイ代表U-12に敗退)。

今年はバルサとユベントスだけでしたが、我々は引き分けが2試合あって、ユベントスも負けました。そのことから、日本のチームのレベルも上がっていると思います。

 

■審判に抗議した選手たちには注意した。選手は個人でなくクラブのイメージを考えて行動しなければならない

 


審判への抗議については選手たちに注意したそう(C)新井賢一

 

――今大会はヴィッセル神戸を始め、プレーモデルがあり、守備の組織を作ってバルサに挑んでくる日本のチームが多い印象があります。それについてはどう感じていますか?

アルベルト 正しい事だと思います。小さい頃から同じメソッドで育成をすると、ファーストチームまで行くチャンスが多くなります。もしそのチームでプロになれなかったとしても、その下部組織にいたという、クラブへの愛着も強くなりますから。

 

――ピッチ外で、バルサが大切にしていることを教えてください。

アルベルト 我々の選手たちが準決勝で審判に抗議をしていましたが、あれはやってはいけないことです。選手たちにも「それはいけないことだ」と言いましたし、これからも言い続けるつもりです。

アカデミーの選手が審判に対して異議を唱えることは、個人のことではなくバルサというクラブに影響をもたらします。選手個人ではなくクラブのイメージを考えて行動する必要があるのです。 

 

■バルサが考える「12歳のプレーにおける大事なこと」

――12歳という年代において、育成する中で何を一番重視していますか?

アルベルト この年齢で大事なのが、7人制から11人制の変更に慣れることです。バルサのU-13は、普段U-14チームと試合をしています。この時期の1歳差は、フィジカル面で大きな違いがあります。その相手に対してもしっかりとプレーすること、相手のプレーの仕方に慣れる事を大事にしています。

 

――最後に、日本の選手とバルサの選手とのコミュニケーションで印象に残っていることがあれば教えてください。

アルベルト 日本の子たちが「Hola(オラ)!」とあいさつをしてくれて、バルサの子たちが「ありがとう」と日本語で返したり、バッジやボールペンをあげたりしながらコミュニケーションをとっていたことが印象に残っています。

 

【独占取材】バルサ監督がU-12年代の選手に求める「FCバルセロナの一員」としてのふるまい>>

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