U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022
2022年9月 5日
止める、蹴る、運ぶを向上させながら中学以降で活かせる指導。子ども本来の姿と「サッカーを楽しむ」を大事にするYF NARATESOROの指導哲学
8月下旬に行われた、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022。決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)で実現したのが、西宮サッカースクール対YF NARATESOROの関西対決です。
試合は西宮が先制するも、後半同点に追いつき、PKを制したYF NARATESOROが勝利しました。子どもたちが伸び伸びプレーする姿が印象的だったYF NARATESORO。
試合後、杉野航監督(以下、杉野)と選手たちに話をうかがいました。
(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)
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■止める、蹴る、運ぶのベースを向上させながら、中学以降で活かせる指導をしている
――PK戦の末に勝利しました。試合の感想をお願いします。
杉野 相手に有利に進められた中で、粘って1点返すことができたのが良かったです。先制された後にベンチも含めて、もう一回パワーを出して追いつこうという姿勢が出せたのは、成長したところかなと思います。
――選手たちのプレーから、技術や判断を大切に指導されている様子が伝わってきました。どのような考えのもとで指導しているのでしょうか?
杉野 ボールを止める、蹴る、運ぶを大事にしています。それらのベースを上げながら、選手個々の武器や特徴を大切にし、中学、高校と次のカテゴリーで活かせるような指導をしているつもりです。ベースのところも含めて足りないところはありますが、この大会を通して少しずつ成長してもらえればと思っています。
■ワーチャレは普段の大会にはない良さがある
――ワールドチャレンジという大会については、
杉野 今回、久しぶりに海外からチームが参加して、本来のワールドチャレンジが戻ってきましたよね。バルセロナなど海外のクラブが来ることで、プレーを見るのもそうですし、それを見に来たお客さんの近くでプレーできるのも普段の大会にはない良さであり、規模的にも特別な大会だと思います。
■自分が得た知見を選手にも還元できれば、との思いから選手との対話を大事にしている
――選手たちに杉野監督のイメージを聞いたところ「芸術家」という声があがっていました。
杉野 そうですか(笑)。僕はサッカーを教えるのが仕事なのですが、サッカーコーチっぽいコーチじゃなくてもいいのかなと思っていますし、僕がいろんなことを見たり、知っていたりすることで、選手に還元できることもあると思います。
そういう対話の中で、選手もアンテナを張ってくれれば、人間性も豊かになると思うので、そのあたりは大事にしています。
■子ども本来の姿、一生懸命だけでなく「どれだけ楽しめるか」を大事にしている
――先程、選手たちにもインタビューしましたが、みんな元気で明るかったです。
杉野 うちのクラブはある意味、放牧状態なので、子どもたちは何かをもらえそうなら集まってきますし、どこかに行きたいときは、行ってしまいます(笑)。
それも含めて、子ども本来の姿が出るように心がけているので、それでいいのかなと思っています。その分、締めるところを締めるのは大変ですが、それも自分たちの楽しみや自由に繋がるので、日頃からスタッフ一同、サッカーを一生懸命真面目にやるだけではなく、どれだけ楽しめるかも大事にしています。
――プレー面で大事にしていることはなんでしょうか?
杉野 止める蹴る運ぶ、見て考える。それが全てです。うちのクラブには身体的に優れた選手はいないので、走り合いや体のぶつけあいになると分が悪いです。その中でどうやって優位に立つかを考えています。
それには見て考えることや、あらかじめ情報をとっておくことが重要になるので、選手の頭の中と僕たちコーチの考えをシンクロさせて、すり合わせることの積み重ねでしかないと思っています。サッカーは急には上手くなりませんからね。
■小学生年代の結果はジュニアユースでは関係ない。結果ではなく取り組みや努力の姿勢が大事
――子どもたちは来年からジュニアユースに上がりますが、この年代で大事にしていることは、どのようなことでしょうか?
杉野 正直、小学生の時に全国大会に出たり、選抜に入ったといったことは、ジュニアユースに行ったら何も関係ありません。
ただ、そこへ行くまでの過程でどのような努力をしてきたのか。どういう取り組みをしてきたから成功したのかといった、成功体験があることは大切だと思います。
当然、ジュニア年代で壁にぶつかったりと挫折することもあると思いますが、早いうちに挫折を経験した選手は立ち上がるのも早いと思います。ジュニアユースに行って頭打ちになったとしても、そこでめげない選手になってもらいたいです。
それは進路選びも同じで、Jクラブの育成組織に行っても思うように結果が出ない選手もいますし、反対にJクラブに行けなくても中学時代に頑張って、高校になるときに、Jクラブに行った子以上の評価を受ける子もいます。
それはユース年代でも同じことなので、サッカーに向き合って努力する姿勢は大事にしてほしいなと思います。
■選手たちは大会が進むにつれ声が出せるようになった
選手のみなさんにも、試合の感想をうかがいました。
背番号5番 DF・竹添大祐(たけぞえ だいち)
――試合を振り返って、感想をお願いします。
竹添 最初に1点決められてしまって、ピンチだったんですけど、後半にクロスからシュートを決めて取り返したので良かったです。
――自身のプレーはどうでしたか?
竹添 後半のクロスは良かったけど、前半はそこまで上がれませんでした。後半のプレーは良かったと思います。
背番号9番 FW・大田琉維(おおた るい)
――この大会で成長したなと思えるところは?
大田 チームで成長したのは、失点しても取り返せるようになったこと。個人では、点が取れるようになったことです。今大会は5点取りました。得意な形はクロスから、ワンタッチ、ツータッチで決めることです。
――好きな選手は?
大田 ハーランドです。ゴリゴリのところが好きです。
背番号3番 DF・金子卓豊(かねこ たくと)
――今大会で成長したところは?
金子 大会が始まるまでは、チームとしても自分としても声があまりなかったけど、大会が始まってからは声が出るようになったので、成長したと思います。
――チームの良いところは?
金子 個性豊かな人たちがいて、明るいところです。
背番号14番 FW・仲嶋大翔(なかじま はると)
――今日の自身のプレーはどうでしたか?
仲嶋 前半はあまりプレーが良くなくて切り替えも遅かったけど、後半になると抜け出しとかが早くなりました。
――チームの良いところは?
仲嶋 みんなが明るいことです。
背番号12番 GK・川瀬瑛大(かわせ えいた)
――PKを止めましたが、PKのときの気持ちは?
川瀬 最初はとても緊張したけど、気合を入れて声を出したら止められると思いました。止めた瞬間の気持ちは、とてもうれしかったです。
――身長はチームでも小さい方ですが、GKをする上で工夫しているところは?
川瀬 背が小さいのをジャンプ力でカバーできるように、ジャンプ力を鍛えています。体操をやっていたので、バク転もできます。