U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022

2022年9月 7日

「1対1は抑えられても複数で連動されると対応できない」 エコノメソッド選抜がバルサとの戦いで感じた、日本代表と同じ課題

3年ぶりにFCバルセロナが来日したことで注目を集めた、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022。

グループリーグでFCバルセロナと引き分けたのが、スペイン・バルセロナ発祥の「エコノメソッド選抜」です。

サッカーの原理原則を抑えた戦術、ポジショニングを駆使し、バルサを完封したエコノメソッド選抜のアンヘル・ガルシア監督(以下、ガルシア)と選手たちに、試合の感想をうかがいました。
(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)

 


バルサが外からしか攻められない状況を作ったエコノメソッド選抜(C)新井賢一

 

<<関連記事:バルサのPKを3連続ストップで勝ち上がったヴィッセル神戸を制し、malvaスクール選抜が優勝

 

■バルサが外からしか攻められない状況を作ることができた

――バルセロナを相手に0対0の引き分けでした。試合の感想を聞かせてください。

ガルシア バルサというヨーロッパでもトップレベルのチームに引き分けたことは、素直にうれしいです。選手にとってもご褒美になったのではないでしょうか。

我々は選抜チームなので、数日しか一緒に過ごすことができませんでした。その中で、攻撃と守備のポジショニングだけは徹底して指導しました。

バルサにとって、中央から前進するのは難しく、外からしか攻められない状況を作ることができたと思います。

 

■そのチームでしか使えないプレーを学んでも選手としての将来につながらない

――バルサはサイド攻撃に特徴がありましたが、サイドの守備に関しては?

ガルシア 相手はバルサなので、フィジカル的にもテクニック的にも優れている選手がいることはわかってました。サイドで1対1を作られると、突破されることも予想はしていました。ただし、中央よりもサイドの方がゴールを奪われる危険性は少ないので、相手をサイドに追い込んで守備をすることを意識しました。

 

――相手がサイドを突破してくるときに、「ボールに行くと裏を取られるから、人についていこう。マークを外すな」という指示を繰り返していました。ジュニア年代でサッカーの原理原則、メカニズムを教えることの重要性はどう考えていますか?

ガルシア U-12年代はサッカーを学ぶ段階です。週末の試合に勝つことだけを考えて指導をしたり、そのチームでしか使えないようなプレーを学んでも、サッカー選手としての将来にはつながりにくいと思っています。

この年代で教えるべきは、いつドリブルをするのか、いつドリブルをしてはいけないのか。相手がワンツーをしてきたときにどうやって守備をするのかといった、原則の部分です。

大切なのは、サッカーを理解することを優先して学ぶこと。そうすることで18歳、20歳になったときに、選手たちのポテンシャルを最大限発揮できるようになると思っています。

 

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■一人が抜かれてもカバーすればいい。集団で戦えれば個を上回れる

――エコノメソッド選抜の選手たちが「1対1ではバルサの選手に勝てるときもあったけど、2対2とかグループになると全然だめだった」と言っていました。奇しくも東京五輪でスペイン代表と対戦した、日本代表選手も同じこと言っていたのですが、どう思いますか?

ガルシア サッカーは集団スポーツなので、11人全員が共通の目的に向かっていく必要があります。チームとして一人ひとりの役割があり、それが積み重なって結果につながります。

相手チームにすごくドリブルの上手な選手がいたとして、一人が突破されてもカバーする選手がいればいいわけで、チームとして集団で戦うことができれば個を上回ることができます。

 

――個を活かすためにも、周囲のサポートが必要です。

ガルシア そのとおりで、攻撃の才能を持った選手がいるのなら、その選手にできる限り有利な状態でボールを届けることをチームとして考えるのは重要なことです。

選手の特徴やプレースタイルに応じたプレーモデルを作ることで、選手の能力を最大限活かすことができ、それが成長につながると思っています。

 

■日本にもヨーロッパサッカーの考えが浸透し始めている


日本にもヨーロッパサッカーの考えが浸透し始めていると感じる、と語ってくれたガルシア監督(C)新井賢一

 

――エコノメソッドが日本に来て10年が経ちますが、この間、日本サッカーのインテリジェンスについての変化は感じますか?

ガルシア 私は日々スクールで日本の選手たちを教えていますが、新しい選手が来たときに、数回トレーニングをすれば理解して吸収してくれます。

その理由のひとつが、日本にもヨーロッパサッカーの考え方が浸透し始めているからだと思います。もちろん、もっと向上できる部分はあると感じているので、我々としても選手たちにたくさんのことを伝えていきたいです。

 

■バルサは空いたスペースを上手く使ってサポートしていた

エコノメソッド選抜の選手たちに、バルサ戦の感想をうかがいました。

インタビューに答えてくれたのはこの3名です。
背番号 3番 DF・中島昴(なかじま・すばる)
背番号10番 MF・市原颯馬(いちはら・そうま)
背番号18番 DF・水谷アルトゥール(みずたに あるとぅーる)


同年代のバルセロナと戦って感じたことを語ってくれたので、彼らのリアルな言葉をご覧ください。

 


バルサを外から攻めさせるために中盤をのスペースを締めた15番の吉村優志くん(左)と10番の市原颯馬くん(C)新井賢一

・自分たちはパスで繋いでいくサッカーだけど、ほとんどパスコースを切られて前に蹴ることしかできなかった。前に蹴っても、センターバックはファーストタッチが上手いので、ボールを拾って前に運んでパスを出していた。

・印象に残ったのが、アンカーとインサイドハーフの関わり。サイドバックが広がって、空いたスペースを上手く使ってサポートしていた。ボールを奪いに行ってもすぐにはがされて、守備がしづらかった。

・中盤では相手が来るのをわかっていて、相手が来たらワンタッチでパスをして外したりと、めちゃくちゃ上手かった。FWもボランチがマークしづらい位置に降りてきて、パスを呼び込んでいた。

・FWは最初オフサイドラインにいて、センターバックに気づかせないようにしておいて、ボールが来る直前に降りてきて、パスを受けていた。瞬間的な動きが速かった。

・相手のセンターバックは、背後のスペースが空いたところを見逃さず、正確なロングボールを蹴ってきた。全部見ているんだなと思った。キック力と正確性がすごかった。

・印象に残った選手は8、9、10番。体の使い方が上手で真似したい。日本のチームとは圧が違う。最初から個人技で来ないというか、みんなを使ってくる。

・この選手は速いから裏に出そうとか、この選手は足下が上手いから、足下に出そうとか。個人個人の個性をみんなで活かしていた。

・またバルサと対戦したい。今度は絶対勝つ。

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