U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022
2022年9月 8日
ドリブルが上手くても判断力がなければ良いプレーはできない。中野島FCが考える「サッカーに必要な3つのこと」
8月下旬に行われた、U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。大会2日目に、イタリアの名門ユベントスと対戦したのが、神奈川県川崎市で活動する少年団・中野島FCです。
彼らは「アイリスオーヤマ プレミアリーグU-11チャンピオンシップ」で優勝し、ワールドチャレンジへの出場権を獲得しました。
中野島FCは、体格に優れるユベントスを相手に先制点を奪うなど高いテクニックとインテリジェンスが光るプレーを見せてくれました。試合後、中野島FCの岡本一輝監督(以下、岡本)に指導についての話をうかがいました。
(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)
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■ユベントスと対戦して球際の強さ、ボールへの執着などサッカーの本質を感じられた
――ユベントス戦は1対2での敗戦でした。試合の感想を聞かせてください。
岡本 前半はボールを持つことのできる時間があったので、良いペースで進んだのですが、後半になると、相手にセカンドボールやルーズボールを拾われることが多くなりました。
選手たちは、普段であれば通るようなパスが通らなかったり、外国人選手のリーチの長さ、球際の強さ、ボールをどちらが奪うかなど、サッカーの本質的なところを感じたと思います。
今後はそこにこだわれる選手になってほしいです。
■頭の中を変えると、選手たちの動きも変わる
――体格に勝るユベントスに対し、良い判断をベースにプレーする姿が印象的でした。トレーニングで大切にしていることはなんでしょうか?
岡本 選手たちには「サッカーに必要なことは3つある」と言っています。それが見る、判断する、実行するです。この3つが備わっていないと、たとえばドリブルが上手くても、周りを見て判断するところが欠けていたら良いプレーはできないし、判断力が優れていても、正確に実行する技術がないと試合では活躍できません。
なので、この3つは同じぐらい力を入れて練習しています。
――選手たちのプレーから考えてプレーしている様子が伝わってきました。どのような指導で「考える力」を伸ばしているのでしょうか?
岡本 考える力は特に身につけてほしいので、頭の中を鍛えることは意識的にやってます。午前中に試合があったら、午後は振り返る時間に当てたりと、試合をして終わりにしないようにしています。
コロナで長期間活動ができなかったときは、毎日Zoomでサッカーの勉強をしていました。「アタッキングサード」や「5レーン」などのサッカー用語を覚えたり、「どのエリアからゴールが生まれやすい?」などのお題を出して、子どもたちに答えてもらう活動を、3、4か月しました。
――子どもたちの頭の中は変わってきましたか?
岡本 はい。試合の映像を切り取って思ったことを発言してもらったのですが、最初は「ドリブルがうまくてシュートすごかったです」などの感想だったのが、何回か続けていくと「逆サイドの選手が裏抜けをしたから相手のマーカーが食いついて、ドリブルがしやすくなった」など、ボールの周辺以外にも目を向けるようになってきました。
それを3、4か月続けていざ活動を再開したときに、周囲を見ることのできる子が増えてきました。それまではボールしか見ていなかった子が、「このときはこうすればいいんだ」と、考えて動けるようになったんです。
頭の中を変えると、選手たちの動きも変わるんだと感じました。
■返事はタメ口でもいい、わかってないのに「はい」と言うのはやめようと伝えている
――選手の考えを引き出すために、工夫していることはありますか?
岡本 ミーティングのときに、僕だけが話すのではなく選手たちに質問をして、発言を促すようにしています。
僕が一方的に話をして「わかった?」「はい!」というのだと、本当に理解しているかどうかがわかりません。
試合中も僕の指示でわからないことがあったら、とりあえずうなずくのではなく、タメ口でもいいので「なんて言った?」「なに?」みたいに聞き返そうと伝えています。
「わかっていないのに、はいと返事するのは絶対にやめよう」と言っています。
■ワーチャレの4日間を通じて「見て判断する」部分が伸びている子が増えた
――ワールドチャレンジを振り返って、選手たちの成長を感じられたのはどのようなところでしょうか?
岡本 技術的な部分はもちろんですが、見て判断するところが伸びている子が増えたように感じます。試合を見ていても、ワンテンポ、ツーテンポ速くボールを回せるようになってきました。
トレーニングでもそこは意識していて、体が大きい子、足が速い子の場合、判断がおろそかになっていても、身体能力でプレーできてしまいます。
そういう子には厳し目に「こっちのスペース見えていた?」「その選択肢じゃなくて、こっちもあったよ」など、いろんなアイデアを与えて、状況に適したプレーを選べるように心がけています。
――中野島FCは少年団で、近隣には川崎フロンターレや東京ヴェルディなどのJクラブがあります。そのような地域に位置するクラブとして、どのような考えで育成をしているのでしょうか?
岡本 中野島は父が代表をしていて、僕もOBです。僕自身、ジュニアユース、ユースは川崎フロンターレでプレーしました。ちなみに中野島の1学年下に、三好康児がいます。
小学生で上手な選手は、Jリーグの育成組織に流れる傾向がありますが、そこに負けないぐらい「中野島も良い育成しているよね」と言われるチームを目指しています。
中野島FC出身の三好康児選手が語るサッカーが上手くなるサッカーノートの書き方>>