中村憲剛の「KENGOアカデミー」
2020年10月28日
カラダの小さい選手は必見!中村憲剛の「相手にぶつからない技術」
中村憲剛選手が、これまでのサッカー人生で培ってきたサッカーがうまくなるヒントをお届けする「KENGOアカデミー」。第六回目は大柄な選手に勝つための「ぶつからない技術」について話をしてもらいました。
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■勝つためにはぶつからなければいい
ぶつかられたら、倒されてしまう——。
そんな悩みを抱えているサッカー少年・少女は多いと思います。人によって体格は違いますし、有利・不利はどうしてもあります。そういう僕も、フィジカルコンタクトにはずいぶんと悩んできました。
この連載でも何度か話していますが、僕は小学生まではスピードもあって、ドリブルで相手をかわしていくプレーを得意にしていました。でも中学生になったときに、周りの選手に身長で追い抜かれ、線も細かった僕は、厳しい現実を思い知らされます。
ボールを受けようとしても、ガツーンとぶつかられて吹き飛ばされてしまう。ドリブルで相手を抜いたと思っても、後からやってきた相手にカラダを入れられて奪われてしまう。自分の良さを全く出せなくなってしまったんです。
自分の方がうまいはずなのに——。
悔しくて、ショックで、僕は中学1年生の途中でサッカーを止めてしまったほどです。カラダの強さというのは先天的なものもあるので、線が細い選手がフィジカルモンスターになろうとしても限界がある。
じゃあ、線が細くて、身長が低い選手は、プロになれないのか? そんなことはありません。世界のサッカーを見ても、それほど大柄じゃなくても活躍している選手はたくさんいますよね。そこにヒントがあります。
大柄な選手に、小柄な選手が勝つためには何をすれば良いのでしょうか。答えは、とてもシンプル。
ぶつからなければいいんです。
とはいえ、ぶつかりたくないからといって、誰もいないところに逃げてボールをもらおうとする選手は、相手にとっては全く怖くありません。そんなところにいてもボールは回ってこない。大事なのは相手がたくさんいる中でも、ぶつからずにボールをもらえるようなることです。
■大柄な選手に勝つための3つのコツ
ぶつからないようにするには3つのコツがあります。
・相手の動きを見る・相手の視野から消える・パスの出し手を見る
一つ目のコツは相手の動きを見ること。相手の近くで止まってボールを受けていると、すぐに相手のプレッシャーを受けてしまいます。だから、ボールをもらう前に自分の近くに相手がいないかを確認して、相手が見えたときは距離を作って、パスをもらうことを心掛けます。
ただし、何メートルも遠くに行く必要はありません。2、3メートル移動するだけでいい。それだけで、相手との距離ができるので、プレッシャーが来るまでの時間を稼ぐことができて、その間に余裕を持って考えることができます。
二つ目のコツは相手の視野から消えること。相手の視野から消える動きができれば、極端なことを言えば、相手との距離が1メートル以内でもパスを受けられるようになります。どういうことか説明したいと思います。
パスをもらおうとしている自分の近くに相手選手がいるとします。このとき、まともにパスをもらおうとすれば、ガツーンとぶつかられてしまう。でも、相手の背後に回って、いったん視野から消えてから、素早くボールを受ける動きをすれば、ぶつかられない距離で受けることができます。
三つ目のコツがパスの出し手を見ること。せっかく相手の視野から消えても、その動き出しに味方が気付いていなければ、パスが出てくるタイミングが遅れて、マークにつかまってしまう。だから、味方が顔を上げていて、パスを出せる状態になっているときに、動き出すようにしましょう。
とても奥が深いけれど、これができるようになれば、どんなに狭いスペースでも、どんなに大柄な相手がいても、ボールを受けられるようになるはずです。
フィジカルに優れた選手だったら、プレッシャーの厳しい場所でもガンガン身体をぶつけて受けられるだろうし、弾き飛ばしながらゴールに向かうこともできるかもしれません。でも、フィジカルに頼ってプレーしていると、自分より強い選手と当たったときに持ち味を出せなくなってしまう。
だから、「ぶつからない技術」は身体が小さい選手だけでなく、自分は身体が強いと思っている選手にとっても重要なものです。
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