中村憲剛の「KENGOアカデミー」
2020年11月 4日
試合から"消えない"ために。走れない選手はアタマを使おう!
中村憲剛選手が、これまでのサッカー人生で培ってきたサッカーがうまくなるヒントをお届けする「KENGOアカデミー」。第七回目は、プロの選手でも起こりがちな「試合から消えてしまう(ボールに触れず、プレーに絡めなくなる)」ことへの解決方法を話してもらいました。
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■試合から消えるのはなぜ?
あなたは、お子さんのプレーを見ていて、こんな風に感じたことはありませんか?
うちの子、最初の頃はボールにたくさん触っていたのに、時間が経つにつれて存在感がなくなっちゃう・・・。
このように、ボールに触れずに、プレーにも絡めなくなってしまうことを、サッカーでは「試合から消える」という風に表現します。テレビ中継で「あの選手、後半は消える時間が長くなっています」と解説者が言っているのを聞いたことがあるかもしれません。
当然ですが、試合から消えている選手は目立たなくなります。 試合から消えてしまう選手がいたら、そのチームは人数が1人少なくなってしまったようなものです。そうすると、早めに交代させられてしまったり、スタメンで使われなくなったりするといったことにつながります。
では、試合から“消えない”ためには何が必要なのか——。
真っ先に思いつくのは、「体力」ではないでしょうか。体力がないから、走れないから、試合から消えてしまうんじゃないかと。確かに、スタミナは大事な条件ではあります。
どれだけ走っても疲れない選手は、試合終盤になってもガンガン動けるので、試合から消えにくい。でも、僕はひたすら走り込んで、スタミナを上げることが一番の方法だとは思っていません。なぜなら、もっと良い方法があるからです。
それは、「アタマを働かせてプレーすること」です。
僕自身、誰よりもカラダが強かったり、足が速かったり、走れたりといった「特別な才能」があったわけではありません。だからこそ、どのように動いて、どうすればボールを受けられるか、どうすればチャンスに絡めるかを考えることは他の人よりもやってきたし、それが34歳の今も現役でプレーできている理由だと思います。
■アタマの力をつけよう
試合から消えてしまう選手に共通するのは、ボールを持っていない時のポジショニングが悪くなってしまうことです。試合の最初の方、体力がまだあるうちはガンガン動き回れるから、ボールを受けられます。
でも、体力は無限ではありません。だからこそ、ボールを持っていないときのポジショニングが大事になるんです。ただ漠然と立っていても、ボールは回ってきません。
自分がボールを持っているときに、パスを出しやすい選手とパスを出しづらい選手を思い浮かべて下さい。
パスを出しやすいのはこんな選手です。
・ボールが来る前にスッと動いてマークを外している選手・空いているスペースを見つけて走っている選手
パスを出しにくいのはこんな選手です。
・ピッタリとマークにつかれているのに気付いていない選手・スペースに動かず足下でばかりボールをもらおうとする選手
シンプルなことです。自分がパスを出しやすいと思う選手のような動きをして、パスを出しづらいと思った選手のような動きをしなければいい。
大事になるのは、自分の周りがどうなっているのかを把握することです。そのためには、ボールを持っていないときに「首を振る」という作業をして下さい。
自分の周りに、ボールを奪おうとしている相手はいないのか。空いているスペースはどこにあるのか。首を振ることで周りの状況を見れば、自分が次にどこに動けばよいのかを正しく判断できるので、ボールをもらいやすくなるし、チャンスにもどんどん絡めるようになります。
それから、覚えておいてほしいのがカラダの「体力」とアタマの「体力」はリンクしているということ。だから、走り回って疲れがたまってくると、考える力も落ちてきて、良いポジションをとれなくなってくるんです。だからこそ、がむしゃらに走り回るのではなく、しっかりと考えながら、ポジションをとる習慣をつけましょう。
試合から消えることなく、最後までピッチ上で存在感を放つ選手を目指してください。
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