中村憲剛の「KENGOアカデミー」
2020年11月18日
サッカー選手は性格が悪い方がいい!?相手をだます術を身に付けよう
中村憲剛選手が、これまでのサッカー人生で培ってきたサッカーがうまくなるヒントをお届けする「KENGOアカデミー」。第九回目は相手との駆け引きで優位に立つためのテクニックを紹介します。
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■サッカー選手に必要なこと
僕はサッカーのうまい選手には共通点があると思っています。
それが「性格が悪い」こと。
ビックリしましたか(笑)? もちろん、みんなが憧れているあの選手が本当は性格が悪かった……という話ではありません。僕が言っているのは、あくまでもピッチの上での話。サッカー選手にとって「性格が悪い」は「駆け引きがうまい」という意味だからです。
サッカーは相手がいるスポーツ。自分がドリブルで抜きたいと思っていても、相手がそれを読んで止めてくれば不利になります。パスを出す方向があからさまにバレていたら、簡単にカットされてしまう。
そのために、ドリブルで仕掛けないフリをして一気にスピードアップしたり、ノールックでパスを出したりする。日常生活ではウソをついたり、相手をだましたりすることは「良くないこと」「やっちゃいけないこと」ですが、サッカーでは「良いこと」「やらなきゃいけないこと」になるんです。
だから、サッカーのうまい選手というのは、例外なく駆け引きをする力に優れています。小さい頃から駆け引きをすることを習慣にして、相手をだます術を身につけることは大事だと思っています。
特に、僕のようにカラダがそれほど強いわけではない、わかっていても止められないようなスピードがあるわけじゃない、そんな“普通の選手”にとって駆け引きができるかどうかは生命線です。むしろ、それができなければトップレベルでは戦っていけません。
だから、ピッチの上では「相手が嫌がることは何だろう?」と常に考え、どんどん性格が悪くなってほしいと思います(笑)。
■カードを使い分ける
僕は試合中、常に相手がどんな出方をしてくるかを観察しています。
例えば、前線の選手にクサビのパスを出した後、相手がボールを目で追っている間に、素早く裏をとってリターンをもらったプレーをしたとしましょう。当然、ディフェンスの選手には、「あそこで裏をとられた」という記憶が頭の中に残ります。
そのプレーがあった後、同じような状況があったとします。僕だったら、こんな風に考えます。相手は裏をとられたことを覚えているだろうから、パスを出した後に裏に走るプレーには最大限の警戒をしているはず。
ディフェンスの立場からすれば、1回やられたプレーを2回もやられるわけにはいかない。だから、僕が2、3歩ダッシュしただけで、「ヤバい! 裏をとられる」と感じて必死になって下がります。
こうなったら僕の狙い通りです。裏に走るフリをした後、僕はピタッと止まります。相手はスペースを埋めるために下がっていますから、自分の周りにはマークがいません。2、3歩の移動だけで、余裕を持ってパスをもらえる状態を作り出せるんです。
僕はカードを使い分けるようなものだと思っています。「A」と「B」というカードがあって、最初に「A」を見せておいて、相手が「A」への対策を立ててきたら、今度は「B」というカードを出す。
駆け引きがうまい選手、つまりサッカーがうまい選手というのは、このカードをたくさん持っています。だから、激しくマークされてもボールを失わないし、「アイツは要注意」だとみんなわかっているのにゴールを決めることができます。
どんなに優れた武器を持っていても、1枚しかカードを持っていない選手、つまり一つしか選択肢がない選手はサッカーでは良いプレーはできません。何よりも、駆け引きの楽しさを覚えれば、サッカーがもっと楽しくなるはずです。
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