中村憲剛の「KENGOアカデミー」

2020年12月 2日

ボールに触らなくてもゲームをコントロールする「賢い選手」とは?

中村憲剛さんが、これまでのサッカー人生で培ってきたサッカーがうまくなるヒントをお届けする「KENGOアカデミー」。第11回目となる今回は、味方の選手を活かし、良い状況を作るための“オトリの動き”の重要性を解説します。
 
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中村憲剛が「オトリの動き」を実演!
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■試合中のほとんどがボールに触れていない時間

サッカーでは1人の選手が試合中ボールに触っている時間は90分間のうち、たったの2、3分だと言われています。つまり、試合中はほとんどがボールを持っていない、「オフ・ザ・ボール」の状態なのです。
 
現代サッカーでは「オフ・ザ・ボール」で何ができるかがますます大事になってきています。優れたパスセンスを持っていても、ドリブルでかわせる技術があっても、ボールをもらうことができなければ、それを発揮することができません。
 
だから、このKENGOアカデミーのコラムでもオフ・ザ・ボールについては何度も話をしてきました。
 
カラダの小さい選手は必見!中村憲剛の「相手にぶつからない技術」
 
試合から"消えない"ために。走れない選手はアタマを使おう!
 
オフ・ザ・ボールはとても奥が深い技術です。何よりも、人よりカラダが大きい、足が速いなどの特徴がない、“普通の選手”にとって、オフ・ザ・ボールの質を高めることは、上のレベルでプレーするためには必要不可欠です。
 
オフ・ザ・ボールには大きく分けて3つの目的があります。
 
1つ目が「自分が良い状態で受ける」。自分より大きい相手にマークされていても、相手の視野から外れるタイミングで動けば、ボールを受けても相手にぶつかられることなく、余裕を持ってプレーできます。
 
2つ目が「味方がパスを出せるところに動く」。がむしゃらに動き回るのではなく、味方がパスを出しやすいところにポジションをとったり、カラダの角度を工夫することで、効率的にボールに触れるようになります。
 
3つ目が「味方を助けるために動く」。自分がボールをもらう確率が低かったとしても、自分が動くことで、味方の選手が良い状態でパスを受けられるようになります。これが「オトリの動き」と呼ばれるプレーです。
 
パス回しが上手なチームを見れば、全員がボールをもらおうとするのではなく、パスを受ける選手のために、他の選手がオトリの動きをしていることがわかります。こうしたボールを持っていない人も含めた駆け引きがサッカーにおいてはとても重要なのです。

■「オトリの動き」でチームを助けよう! 

それでは、「オトリの動き」とは、どんな場面で必要になるのでしょうか。
 
例えば、中盤でパスを回しているとき。FWの選手にパスを通したいけれども、ディフェンスが立っているので、パスコースがない。このようなときは、ボールを持っていない選手が、わざと相手の前を通りながら、別のスペースに移動していきます。ディフェンスとしては、パスを受けるかもしれない選手を放っておくわけにはいかないので、そこについていきます。
 
「KENGO Academy~サッカーがうまくなる45のアイデア~」より
 
パスコースに立っていた選手がずれることで、つまり、1秒前までなかったパスコースが、ほんの数メートル動くだけで生まれるのです。ポイントはわざと相手の視界に入ることと、全力でダッシュするのではなく、ジョギング程度でゆっくりと動くこと。そうすることで相手の意識をより引き付けやすくなります。
 
 
あるいは、DFラインの背後にスルーパスを出したいとき。ディフェンスとしては裏のスペースでパスを受けられるとピンチになるので、最も警戒しています。もしもFW2人が同時に裏を狙えば、DFラインを下げられて対応されてしまうでしょう。
 
そこで、FWのうちの1人はボールを受けるために、ボールを持っている選手のほうへ下がってきます。それにディフェンスがついてきたら、もう1人のFWが裏のスペースへ飛び出します。DFラインの人数が少なくなるので、パスを受けやすくなります。
 
 
自分が動くことで、どこにスペースができて、誰がフリーになるのか。そこまで考えて動ける、賢い選手を目指しましょう。
 
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