中村憲剛の「KENGOアカデミー」
2021年2月24日
"苦手なことだらけ"の中村憲剛はなぜプロになれたのか?大切にしたのは「自分の100%をちょっとずつ上げていくこと」
中村憲剛さんが読者の質問に答える「KENGOアカデミー」。今回は多くの挫折を経験してきた憲剛さんだからこそ語れる「苦手克服のコツ」について話をしてもらいました。
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【質問】
子どもの頃、苦手だったことを教えて下さい。また、その苦手をどのように克服しましたか?
【憲剛さんの回答】
質問ありがとう!
プロ選手になるまで、僕は“苦手なことだらけ”の選手でした。
足は遅い、長距離も苦手、筋トレは全然できない……。
どうやって苦手なことに取り組んでいったのか、僕の経験をお話します。
■得意なことより苦手なことの方が多かった
プロサッカー選手はみんな、子どもの頃からスポーツ万能で、スーパーアスリートだった——。そんなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか?
確かに、プロの世界には何をやらせてもうまかったという選手もいます。
でも、僕は違います。むしろ苦手なことのほうが多かったぐらいです。
まず足が遅かった。50m走、100m走のタイムはクラスの中でも真ん中ぐらい。運動会ではリレーがあって、クラスで足が速い子が選ばれるのですが、僕は補欠になるのが精一杯でした。
小さい頃に苦手だったのは長距離でした。体育の授業やマラソン大会で長距離を走るのですが、あれが本当にイヤでした。
「サッカーをやってるんだから走れるんだろう」という目で見られるのですが、本当に“そこそこ”しか走れない。自分では頑張ってやっているのに……。
それから筋トレは自慢じゃないですが本当にできなかった。高校生で初めてベンチプレスのトレーニングをやったときは、1個でも重りをつけたら持ち上げられないので、重りを外して“棒”だけを上げていました。
高校に入ったときは154センチしかなくて、なおかつガリガリだったから、筋力がまるでなかったんです。
足が遅い、長距離も苦手、筋トレはまるでダメ……。
ウソのような話だと思うかもしれませんが、これが“中村憲剛の学生時代”でした。
ね?苦手なことだらけでしょう?
フィジカルのところは、全般的に得意ではなかったし、どうすれば良くなるのか悩んでいました。周りのうまい選手はみんな大きかったり、足が速かったりしたので、大きなコンプレックスでした。
■「嫌いだからやらない」ではなく、できるところまでやってみる
では、どのようにして苦手なことを克服したのか?
結論から言えば、完全に克服できたとは思っていません。現役時代、選手の中では足が遅い方だし、特別なスタミナがあるわけでもない。筋トレも得意じゃありません。
人にはそれぞれの得意分野があります。僕の場合はボールを扱う技術や、キックの正確さ、視野の広さなどは、他の人よりも秀でていると思います。でも、大きな相手とヘディングで競り勝つことは難しいし、スピードでぶっちぎることもできない。
サッカーというのは、たくさんの個性が混ざり合ってチームになっています。みんなのチームにも、いろいろなタイプの選手がいるはずです。足は遅いけどボール扱いがうまい選手、技術はあんまり高くないけど頑張って走れる選手、背が高くてヘディングで勝ってくれる選手。
大事なことは、自分の個性を見極めて、それを伸ばしていく。それこそが、高いレベルに行くためには重要になります。
だからといって、苦手を克服することを諦めろ、という意味ではありません。僕は確かに足が遅かったし、長距離も速くなかったけど、そういう練習こそ100%で取り組みました。
どんなに全力でやっても、他の人よりパフォーマンスは落ちるかもしれないけど、だからといってサボったり、手を抜いたりするのは違う。
自分の限界まで頑張れない選手は、上のレベルに行くことはできません。ましてや、僕のように身体能力に恵まれているわけではない選手だったら、なおさらです。ちょっとしたサボりは、必ず自分に返ってきます。
学校の勉強でも好き嫌いはあると思います。国語は好きだけど、算数はうまくできないとか。だけど、嫌いだからやらないというのではなく、できるところまでやってみる。そうやって自分の“100%”をちょっとずつ上げていくことが大切だと思います。
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