中村憲剛の「KENGOアカデミー」
2021年3月 3日
あなたの子どもに合ったポジションとは?中村憲剛に聞く「"天職"の見つけ方」
現役時代、ボランチとしてプレーをしていた中村憲剛さん。でも、プロ入りする前は別のポジションだったことをご存知でしょうか?
親御さんの気持ちとしては、自分の子どもがFWなど攻撃的な役割を担うポジションで活躍することを願っている人も多いかもしれません。また、監督からDFに転向を命じられたことで子どもがふてくされてしまうこともあるでしょう。
そこで今回は、「ポジション」についてどう向き合っていくべきか憲剛さんに聞いてみました。
<< 前回
【質問】
自分に合うポジションはどこなのか悩んでいます。憲剛さんはどうしてMFになったのですか?
【憲剛さんの回答】
質問ありがとう!
試合でいろいろなポジションで使われて、自分はどこが得意なのかわからなくなる。こういうことは小学生だけじゃなくプロにもあることです。
今回はそんな悩みに答えていきます。
■「とりあえずやってみる」が大事
中村憲剛=ボランチ。
ありがたいことに、そんなイメージが定着しています。ボールにたくさん触れて、試合全体に関わることができる。僕にとってボランチは自分の良さを最も出せるポジションです。
ボランチをやっていたから、川崎フロンターレでレギュラーになれて、日本代表になることができたと思っています。そういう意味でボランチは僕にとって"天職"です。
だけど、僕はサッカーを始めてから、ずっとボランチだったわけではありませんでした。小さい頃はチームでいろいろなポジションをやりました。小学3年生のときは、一学年上のチームでサイドバックをやっていました。FWをやったこともあるし、ウィングもやった記憶があります。
今回の質問は「自分に合うポジションはどこなのか悩んでいます」というものでしたが、最初から「ここだけをやろう」と決めてしまうのはオススメできません。
もちろん、自分は攻撃が大好きだからFWをやりたいとか、パスを出すのが得意だからMFをやりたいとか、それぞれの好き嫌いはあるはず。だけど、自分に合う・合わないを考えるよりも「とりあえずやってみる」。これが大事です。
サッカーがうまくなるには、まずは試合に出なければ始まりません。試合に出れば成長するチャンスがあるし、試合だから体感できることもたくさんある。ましてや、小学生のうちは自分の可能性を広げるためにも、たくさんのポジションをやったほうがいいと思います。
ただし、どんなときも自分の個性を出すことを忘れないでください。ドリブルが得意で普段はサイドでやっているとしたら、ボランチの位置で使われても、チャンスがあれば中盤からでもチャレンジしてみるとか。そうすれば監督やコーチにもアピールになるし、自分にとっても可能性を広げることになります。
どこのポジションでも、自分の個性を出す。それは小学生であっても、プロであっても重要なことです。
■どのポジションでも学べることはある
いろいろなポジションをやることのメリットは、それだけではありません。
例えば、元日本代表FWの中山雅史さんは、チームでは不動のエースストライカーだったにも関わらず、静岡高校選抜ではDFとしてプレーしていたそうです。
本当はFWなのにDFをやらされたら、ふて腐れてもおかしくありません。でも、中山さんは「ゴールを決める側」から「ゴールを守る側」に回ることで、自分がFWになったときに、こういうことをされたらイヤなんだなというのを学んだそうです。中山さんのボールを持っていない時のDFとの駆け引きの上手さは、DF経験が生きているのかもしれません。
どのポジションであっても学べることはあるし、絶対に無駄にはならない。そういう気持ちでやってほしいなと思います。
プロになってコンバート(ポジションを変更)される選手も少なくありません。
僕は中央大学でトップ下としてプレーしていて、自分に一番合っているポジションだと思っていました。しかし、プロに入って少し経つと、関塚隆監督に「ボランチをやってみろ」と言われました。
「チャンスだ」と思いました。
当時、川崎フロンターレが所属していたJ2リーグはベンチ入りメンバーが5人だけでした。まだレギュラーじゃなかった僕は、まずはベンチに入らなければいけなかった。
そのとき「トップ下しかできない選手」と「トップ下もボランチもできる選手」だったら、どちらが有利になると思いますか? 僕はコンバートを受け入れて、そして結果的にボランチが"天職"になりました。
ネガティブだと思うようなことも、ポジティブなことに変わることがある。いや、ポジティブなことになるように努力する。その姿勢を持って、サッカーに取り組んでほしいと思います。
【動画で解説】中村憲剛が教える「サッカーがうまくなる45のアイデア」はこちら>>
<< 前回
1