子どもの疲れやケガを防ぎパフォーマンスを高めるには?

2022年6月10日

疲れたままではいいプレーはできない...少年サッカーにおけるコンディショニングの重要性

サッカーに取り組む少年・少女の中には、日常的に疲れが溜まっているケースが少なくありません。疲れた状態でプレーを続けていると怪我につながる恐れがあります。そういった意味でも、子どもの頃からコンディショニングの重要性を意識することは大切です。

日々のトレーニングも大切ですが、それに加えて休息や栄養面も大切にし、三位一体となることでサッカーのパフォーマンスは向上していきます。

そこで今回は「サッカー選手のコンディショニング」について、ヴァンフォーレ甲府で長く選手のコンディショニングを担当し、20年に渡りJリーグでフィジカルコーチを歴任してきた谷真一郎さんにうかがいました。

(取材・文:鈴木智之)

子どもの成長や回復に必要な親のサポートとは?
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Jリーガーもやっている「自覚疲労度」のチェック

サッカーに限らず、トレーニングの原則に「過負荷―超回復の原則」があります。これはトレーニングをして身体に負荷をかけ、回復していく過程でコンディションが高まり、身体が以前よりも良い状態になっていくことを言います。

「ハードなトレーニングをして身体に負荷をかけた後に、超回復を導くためには十分な栄養と休息(睡眠)が必要です。この2つがとれていないと、回復しきれない状態が続き、トレーニングの効果が限定的になってしまいます。また、十分に回復できない状態でハードなトレーニングをすると、ケガにつながることもあります。トレーニングの時間や回数と同じぐらい、栄養や休息を含めた"コンディショニング"も重要なのです」

そのために、谷さんが推奨している方法「自覚疲労度のチェック」があります。それは、自分で自分の身体をモニタリングすること。具体的には、毎日の疲労を10段階で自己評価し、カレンダーなど紙に記入します。これはJリーグの選手にも実施していて、効果を感じている方法だそうです。

自覚疲労度をチェックするコンディショニングチェックシートは、ここからダウンロードできます>>

「まずは自分の身体に目を向けて、自分の体調や疲労度を知ること。最初はわかりづらいかもしれませんが、続けていくと『今日はいつもより調子がいい』『調子が悪い』といったことを子どもでも感じ取れるようになります。Jクラブの選手が実施していた際には、この実感値は正しくて、血液検査による疲労度合いと関連性がありました」

コンディショニングの目的とは?

コンディショニングとは、100%のパフォーマンスを発揮するために必要となる全ての要因を望ましい状態に整えることです。簡単にいうと、コンディショニングを行う目的は、練習や試合の時に、選手が全力でプレーできる状態にすることだと言えます。全力でプレーできれば、子どもたちもサッカーをより楽しむことができます。

コンディショニングと一言で言っても、体を整えるもの、プレーする環境を整えるもの、プレーに臨む心理的な側面を整えるものがあります。

例えば、疲れた状態でプレーしていては、いいパフォーマンスを発揮することはできないため、体を回復させるといったイメージです。

子どもの頃から意識することが大きな差に

大事な試合で活躍したいという思いから、練習量を増やし過ぎて肝心な試合の日に疲労がピークにきてしまう。こういったケースは特に育成年代でおこりやすいそうです。

普段より疲労を感じている場合は、練習量を減らす、疲労回復に効果的な食事メニューを選ぶ、睡眠時間をしっかり確保する、疲労回復効果のある入浴剤を使う、サプリメントで足りない栄養を補給するなど工夫をすることで、コンディション向上に役立てることができます。

子どもの疲労回復に必要な栄養を補うには?>>

「サッカーがうまくなるために練習をするわけで、身体を疲れさせるために練習をするわけではありませんよね。ときには、練習をするよりも休息にあてた方が、身体が回復し、トレーニング効果がアップする場合もあります。これは育成年代の子だけでなく、アスリート全般に言えることですが、質の高いトレーニングだけでなく、質の高い休息、栄養をとることにも目を向けてほしいと思っています」

トップレベルの選手を目指すにあたって、子どもの頃からコンディショニングや栄養、休息に目を向けているのと、何も考えずに取り組むのでは、知識や身体作りの面からも、大きな差となって現れてくるのではないでしょうか。

「子どもはサッカーが大好きで、毎日でもやりたいと思うもの。楽しんでいるうちはそれでもいいのですが、小学校高学年になると競技レベルも上がり、スクールとクラブを掛け持ちして、睡眠時間が少なくなったり、精神的、肉体的に疲労を感じているお子さんも多いと聞きます。その場合は、保護者が子どもの様子をいつも以上に気にかけてあげて、食事や休息面でサポートしてあげると良いと思います」

回復のやり方次第で実力差も逆転できる!

谷さん自身、指導現場で「子どもたちは疲れているな」と感じることがよくあるそうです。

「1日に3試合、4試合やってから、個人トレーニングを受けに来る子もいます。トレーニングをしないと不安な気持ちもわかりますが、そのような状況のときは保護者が、子どもの体調面を気遣ってあげてほしいと思いますし、実際にそういう話はよくしています」

サッカーがうまくなるため、試合で良いプレーをするために練習をしているのに、トレーニングのしすぎやコンディションに目を向けないあまり、試合で実力を発揮できないのは本末転倒。とてももったいないことです。

「私はこれまでたくさんのJリーガーを指導してきましたが、回復(リカバリー)のやり方次第で、相手との実力差を埋めたり、逆転する場面を何度も見てきました。それほど、コンディショニングは重要なのです」

疲れた体の回復には食事と睡眠が欠かせない

いくら質の高いトレーニングを行ったとしても、疲れた状態が続いていてはいいパフォーマンスを発揮することはできません。選手として高いパフォーマンスを見せるためには、トレーニングに加えて、食事と睡眠を意識することが大切です。疲れが溜まった体を回復するには、たんぱく質やアミノ酸、ビタミンB群などバランスのいい栄養が欠かせません。また、睡眠は疲労回復の基本となるものです。また、バランスの良い食事と睡眠は子どもの成長にも繋がります。

繰り返しの説明となりますが、子どもの頃から食事や睡眠などの重要性を踏まえたうえでコンディショニングに取り組むことが大切です。保護者の方や指導者の方には、子ども自身がコンディショニングの重要性を理解できるように、働き方けることが求められます。

子どものコンディショニングは親のサポートが重要

子どもの場合、自らコンディショニングに目を向けるのが難しいこともあるので、保護者のサポートで、より良い状態に導くのが理想です。

「いかに心身ともに回復させて、良い状態で練習や試合に臨むことができるか。そのために大切なのが栄養と休息。さらにはストレッチなどのアクティブリカバリー(積極的な回復)です。身体を冷やす、温める、マッサージ、入浴、リカバリーウェアの着用、サプリメントの摂取など、できることはたくさんあるので、練習をしたらしっぱなしではなく、その後の回復まで目を向けてもらえたらと思います」

日頃から子どものことをよく見ている親御さんであれば、子どものちょっとした変化にも気付きやすいはずです。少し顔つきが暗いな、体が重そうだな、といった場合は、無理をさせずに休ませることも一つの方法です。

子どもたちは、サッカーが好きで、チームメイトと一緒に過ごす時間が楽しいからこそプレーしているものと考えられます。サッカーを全力で楽しめるようにするためにも、コンディションを整えるサポートを親がしてあげましょう。

キーワードは「積極的な回復」です。受け身ではなく、自分から回復するための行動を起こすことを心がけてみてください。

また、この記事で紹介した自覚疲労度をチェックするコンディショニングチェックシートは、以下からダウンロードできます。ぜひご家庭で使ってみてください。次回の記事では、具体的な疲労回復法を紹介します。

自覚疲労度をチェックするコンディショニングチェックシートはこちら>>

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谷真一郎/ヴァンフォーレ甲府・フィットネスダイレクター
筑波大学在学中に日本代表へ招集。卒業後は柏レイソルでプレー。引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FC、ヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを歴任。『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』

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