子どもの疲れやケガを防ぎパフォーマンスを高めるには?
2023年6月12日
汗で排出されるのはミネラルだけではなかった! 夏にハイパフォーマンスをキープするために肝心な栄養素とは
日ごとに夏に近づき、汗ばむ日が増えてきました。サッカージュニアを育てる親御さんにとっては、熱中症や夏バテ対策を本格的に実施し始める時季ですね。そこで、汗をかく季節に意識したい栄養摂取のコツを管理栄養士さんに聞きました。
「知らなかった!」という事実がたくさんあるはずです!
■汗対策&栄養管理は今が頑張りどき!
今年も予想される猛暑。そろそろ子どもの体調への備えに関心が高まってきませんか。実は、"汗対策"は春や初夏にテコ入れすると良いのだとか。そう教えてくれたのは、管理栄養士で公認スポーツ栄養士である横山笑子さんです。
「汗対策を入念に行うべきなのは実は春です。理由は2つあり、1つ目は季節の変わり目だから。とくに5月からは急に暑くなる日が出てきますが、体が暑さに慣れておらず、上手に汗をかく体制が整っていない子が多くいます。そしてもう1つは学年の変わり目であること。サッカーをするステージが上がり、ゴールデンウイーク以降はトレーニングの負荷が高くなったという子もたくさんいるはずです」
気候とトレーニングの変化から、子どもたちの汗をかく量が急激に増え、耐性やリカバリーが追いつかなくなった場合、夏を前に早くもバテてしまう子が現れがちなのが初夏だと言います。
「本格的に暑くなる前の今だからこそ、汗をかくための体の体制を内側から整えておくことがこの夏を元気に乗り越える大切なポイントともいえます。そのために着目したいのが栄養摂取です」(横山さん)
本格的な夏を迎える前に知っておきたいのは、誰もが知る"あの栄養素"。子どもがこの夏も思いっきりサッカーを楽しむために重視したいものの1つです。
■汗をかくと「ビタミン」が排出されてしまう
汗対策のための栄養摂取というと、真っ先に思い浮かぶのは「ミネラルと水分摂取」ではないでしょうか。脱水症状や熱中症、夏バテにならないために適切な水分摂取をすることは周知されていますね。
ですが、汗とともに排出されてしまうのはミネラルだけではないことはあまり知られていません。何が流れ出てしまうかというと「ビタミン」。とくにビタミンB群が不足することが、夏の体調を大きく左右します。
水分摂取のために子どもたちが口にするスポーツドリンクに含まれているのはミネラルと糖分だけなので、ビタミン摂取のことを考えるとスポーツドリンクだけでは不十分。子どもが帰宅してからの食事での栄養摂取が肝心です。
■ビタミンB群不足は、サッカーにも勉強にもいいことナシ
ビタミンB群は「代謝」にかかわるビタミン。食事でとった栄養をエネルギーに変換するための栄養素です。車で言うとエンジンのようなもの。ガソリン(糖質・脂質・タンパク質)を燃やすためにはエンジンが欠かせない存在と思うとわかりやすいでしょうか。ビタミンB群をどれだけ摂れたかが、どれだけエネルギーをつくれるかに比例するといっても過言ではありません。
麺類やご飯などで試合前にたっぷり糖質を摂ってガソリンを満タンにしても、エンジンがかからなくてはそのガソリンは燃焼されません。「糖質をしっかり摂っているのにコンディションが悪い」のはビタミンB群不足かもしれません。
また、代謝だけでなく「造血」にもビタミンB群が深く関わっています。血の巡りが悪くなると、だるくなったりふらふらしたりといった貧血のような症状が出やすくなりますし、筋肉痛がなかなか取れなくなったりもします。
さらに、メンタル面でもビタミンB群不足によるエネルギー減のデメリットは多くあります。集中できない、頭が働かない、判断力が鈍る......。そういった不調は「やる気が出ない」ことにもつながります。サッカーにも勉強にもいいことはありませんよね。
「このように、汗でビタミンBが排出されることによる消耗はサッカーキッズにはとても激しいので、汗ばむ時季は普段以上にしっかり【ビタミンBを摂る】ことを意識してほしいです」と横山さん。
■ところが!ビタミンB群を十分摂るのは大変です...
ここまでをご覧になって「ビタミンB群の摂取」を意識しようと思ってくださった方は多いはず。ですがやっかいなことに、ビタミンB群を十分に摂ることはなかなか大変です。ビタミンBは「水溶性ビタミン」。熱に弱く、水で溶けやすい栄養素であるため、食事だけで必要量を摂るのは難しいと考えられています。では、どうしたらいいのでしょうか。答えはPart2の記事でご紹介します
●横山笑子
公認スポーツ栄養士・管理栄養士・調理師
保育園、小・中学校給食センター、総合内科を経て 16 年勤めた産婦人科を退職 。2021 年 12 月よりフリーランスで活動開始。「選手は栄養でパフォーマンスが変わる」という熱い思いで実業団やアスリートのサポートや地域の食育講演活動、小・中・高校の教育講演やアスリートの栄養セミナーを行っている。その他、鹿児島でスポーツ栄養部会を発足し、若い栄養士の育成にも注力している。