代表選手を分析! タイプ別で育てる兄弟構成別成長法

2014年2月24日

創造力が豊かな一人っ子は、サッカー日本代表の救世主となる?

みなさんは「一人っ子」にどんなイメージを持っていますか?
「寂しくてかわいそう」「協調性がない」「わがまま」長らくこんなイメージを持たれていた一人っ子ですが、兄弟や姉妹がいないことをメリットとして捉えて才能を伸ばせば、むしろ大きく成長するという説が主流になりつつあるのをご存じでしょうか?
 
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少子化、晩婚化、出産の高齢化が進む社会環境の変化で、これからも増えていくことが予想される一人っ子。兄弟構成をみると、これまでは日本代表クラスの選手をほとんど出していない一人っ子ですが、既成の概念を覆す、大きな可能性を秘めているようです。
 
 

■「親との時間」「一人の時間」で育つ一人っ子

 まず、一人っ子に生まれることのメリットについて考えてみましょう。後の環境によって作られた性質や性格ではなく、物理的な面から挙げると「両親との時間を長く持てる」「一人の時間が持てる」といった時間の面でのメリットが大きいのかもしれません。
 
 兄弟、姉妹と争わずに済む一人っ子は、競争心に欠けると言われることがありますが、裏を返せばマイペースで自分の道を突き詰めるのは得意。愛情を注がれすぎて過保護になると見る向きもありますが、ここはお父さんお母さんの育て方で変えていける部分です。
 
みなさんのお子さんの中に「架空のお友達」や「話し相手」がいる子はいませんか? こうした架空のキャラクターは、名前や設定まで意外にきちんとしていて、子どもの話に耳をすませていると、その内容のリアルさに驚くこともあるくらいです。
 
こうした子どもの“空想”は、実は想像力や創造力を高めるだけでなく、問題解決能力を高めてくれる重要な存在であることがわかってきました。
 
一人の時間を多く経験することになる一人っ子は「架空のお友達」を持つ割合が多く、そのことがクリエイティブな発想を生むきっかけになるというのです。
 
独り言や、一人遊び、妄想がちで困る。ちょっと問題あり? いえいえ、そんなことはありません。
 
「そんな子いないでしょう?」「作り話はやめなさい」
みなさんの一言が子どもたちの可能性を閉ざしてしまっているかもしれないのです。
 
 

■個人競技向き? いいえ、サッカーにも向いています!

 生まれついての生存競争にさらされない一人っ子は(この時代にきょうだい間の生存競争は大げさですが)、マイペースに自分の探究心で動く傾向があるようです。こうした特性からスポーツの「個人競技に向いている」という指摘は以前からなされていました。
 
 一人っ子アスリートの代名詞、水泳の北島康介選手、フィギュアスケートの荒川静香さんら五輪の金メダリストも個人競技で結果を出しています。
 
 たしかに、一人っ子の特性は団体競技よりも個人競技に向いていると言えるのですが、これから先のことを考えるとそうとばかりも言えません。
 
 サッカー日本代表の選手たちは規律に優れ、献身的にピッチを動き回り、どんな状況でも精一杯の力を発揮します。日本サッカーはこうしたチームプレーの分野で世界から高い評価を受けています。国民性もあると思いますが、一方で、マイペースに自分の才能を発揮する選手が、サッカーにおけるクリエイティビティ、イマジネーションといった“違い”を生み出すのも事実です。
 
 

■一人っ子が救世主に? 求む! 現状を打破するストライカー

 たとえば長年待望論がある、ときにエゴイスティックにゴールを狙う本格派FWや、創造力で芸術的なプレーをする“ファンタジスタ”など、日本代表に足りないと言われている要素を埋めるのは、もしかしたら、一人っ子たちに秘められた才能なのかもしれません。
 
ルイス・フィーゴやマヌエル・ルイ・コスタのポルトガル黄金期を支えた二人の天才はいずれも一人っ子。世界的にも一人っ子の名選手は少ないようですが、突き抜けた才能をうまく活かせる環境にさえ出会えれば、サッカーでの活躍も夢ではありません。
 
 
一人っ子をうまく伸ばす、特性を活かして成長させるためには“過度の期待やプレッシャー”に気をつけなければいけません。
 
 兄弟、姉妹に両親の愛情を奪われない一人っ子は、その副作用ではありませんが、多くの期待を背負うことになります。第一子にも見られる傾向ですが、期待が大きすぎるあまり過干渉、過保護になってしまうのです。特に現代は、両親と、両家の祖父母4人、併せて6つの財布がついているという意味の「シックスポケット」という言葉が象徴しているように、一人の子どもに対する関心や期待が高まっている時代です。
 
 これは一人っ子に限らずということになりますが、わが子可愛さの余り子どもの人生に自分の人生を投影したりせず、あくまでも見守り、勇気づける視点を持つことが大切です。
 
 

■タイプ別の傾向をつかんで個を大切にする成長法を

 この連載の端緒となったのは、日本代表選手の兄弟構成にある特徴があることを見つけたことでした。しかし、それはいま現在の社会状況や家族構成や考え方に大きく左右されているものであり、未来を決定づけるものではありません。
 
 そもそも一人っ子のマイナスイメージを定着させたのは、アメリカの心理学者、スタンレー・ホールだと言われています。彼がこうした研究を発表したのは19世紀の終わり頃のこと。そこから研究が進み、教育心理学者トニ・ファルボら多くの研究者が統計に基づいて「一人っ子だけが負の特性を持って生まれ、育つ事実はない」と結論づけたのですが、一度広まった先入観をぬぐい去ることは難しかったようです。
 
環境は大きな要因ですが、子どもにはそれぞれ個性があり、それに合った成長方法があるはずです。
 
 今回ご紹介した兄弟構成別の成長法は、これまでの統計や研究に基づいてそれぞれの特徴を捉えたもので、あくまでも傾向とその対策です。こうした傾向を把握した上で、わが子と向き合い、何か困難にぶつかったらそのときそのときを一緒に考えて、ともに成長していけるのが理想ですよね。
 
いつの日か新しいタイプの一人っ子たちが、一人っ子しか持ち得ない才能、適性をうまく活かして、サッカー日本代表の兄弟構成の勢力図を塗り替える日がやってくるかもしれません。
 
 
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大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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