「超弱いチームでも強くなるよ」と語る監督が実践した、選手がよく伸びる指導法
2018年4月12日
「個性を生かす」「特長を伸ばす」の真義<後編>
元大分高校サッカー部監督・朴英雄氏。Jユース・公立高校に優秀な選手が流れる環境のなか、県内で二番手・三番手の選手たちを率いて全国高校サッカー選手権・インターハイに幾度も出場した名監督です。
2010年の高校サッカー選手権では全国3位という好成績。記者会見では
「うちのように県で2.5番目の選手を集めたって、弱いチームこそ強くなる。それを本にして、県でベスト8以上のチームには売らない。それ以下の、小学校から幼稚園までわかるような説明が入っているものを皆さんに配りたいくらいの気持ちがあります。そうしたら強くなるので。タイトルまで考えています。『超弱いチームほど強くなるよ』」と語り注目を集めました。
そんな朴監督の選手の個性を生かし、特長を伸ばす指導、そしてモチベーションを引き出すノウハウに迫ってみました。
前編ではチーム編成はオーケストラのようだという表現で、選手それぞれの特長を伸ばす指導のコンセプトについてお話を伺いましたが、今回は一人ひとりの個性を磨くトレーニングについてご紹介します。
(記事提供:内外出版社、取材・写真:ひぐらしひなつ)
■必要だから禁止する
ドリブルが得意な選手に、「ドリブルするな、ワンタッチやツータッチでボールを動かせ」とプレーを制限して練習させた時期がありました。タッチ数を少なくすれば早目に周囲を見る能力を高めることにつながるし、ファーストタッチですべてが決まるからそのトレーニングにもなる。球離れが良くなればチームのテンポも良くなる。
でも、僕の本当の狙いはそこじゃない。厳しくドリブルを禁止したのは、逆に、サッカーはドリブルがないと絶対に成り立たないんだ、というふうに思わせたかったんです。
ワンタッチ、ツータッチでボールを回していたほうが、自分がボールを受けたときにドリブルするチャンスが出来やすい。でもドリブルばかりすると、逆にドリブルのチャンスは少なくなってしまう。ボールを持ったら相手がいっぱい寄せてくるから。だから一旦ボールを離して、次にフリーで受けられる状態をつくってからドリブルしたほうが効果的です。ドリブルは敵を食いつかせているからこそ必要なんであって、敵が目の前にいなかったら、かわしたり抜いたりキープしたりする必要はないですから。
僕は彼に、ドリブルの本当の意味を教えたかったんです。細いけどしなやかな体を持っていて将来性のある子だと思っていたので、そういうところを改革してやらないと、ドリブルばっかりして終わってしまうから。
ドリブルは敵をかわすための技術ではなく、ボールポゼッションをする中で、フリーな状態でボールを受けてゴールに近寄るための技術なんです。
でも彼は人を抜こう人を抜こうとしてドリブルしていたから、一時的にドリブルを禁止した。いや、もちろんドリブルは必要なんですよ。だからこそワンタッチ、ツータッチでのみプレーさせると、ドリブルの必要性が余計にわかる。それで実際の試合になったとき「行け!」と言ったら、フリーになった状態でボールを受けて、相手をかわす必要なく一直線に、素早く相手ゴールに近寄れるんですね。