子どものサッカー 母親にできること

2013年8月23日

父親と母親の役割分担 子どもがやる気を失わない声がけ

 
読者アンケートをもとに「お母さん」の役割について考える連載の第二回は、サカイクでもおなじみ、プロフェッショナルコーチの守屋麻樹さんをお迎えして、さらに深く「お母さんにできること」を掘り下げていきたいと思います。
 
 子どもを伸ばすお母さんの行動、思考とは? 逆に子ども追い込む行動、思考とは? あなたのお家は大丈夫ですか?
 
 
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■父親と母親の役割分担が必要な理由

 世の中には男性と女性がいます。男女平等が当たり前の世の中ですが、差別や不平等とは別に、性差というのが存在するのは事実。特に子どもへのアプローチに関して、お父さん、お母さんの役割の違いというものはあるのでしょうか?ビジネスコーチとしても活躍する守屋さんは、ビジネスでのリーダーシップを例に出してわかりやすく説明してくれました。
 
「男女の違いというか、子どもたちがお父さん、お母さんに求めるものはそれぞれ違うはずです。人を育むには、男性性(父性)が得意とする「厳しさ」と女性性(母性)が得意とする「優しさ」の両方の要素が必要となります。企業の場合、部下育成に優れたリーダーは、一人で男性性と女性性をうまく使いこなしています。すなわち、叱咤激励する、意思決定する、物事を前に推し進める、論理的であるといった“いわゆる”男性的な要素(父性)と相手の話を傾聴する、受容する、認知する、共感的である(感情を扱う)といった“いわゆる”女性的な要素(母性)とのバランスを取りながら、部下をやる気にさせています。 子どもに対する接し方もリーダーシップ論と同じこと。家庭においては、お父さんとお母さんとで男性性の果たす役割と女性性が果たす役割を分担することで、異なるアプローチで子どものやる気に働きかけることができるようになります。お父さんと、お母さんがそれぞれの役割をうまく分担して子どもに接することが、子どもたちのやる気を引き出し、よりよい関係づくりに役立つのです。
 
「お父さんがサッカーの技術的なことを話していたら、お母さんは感情面を引き受ける。二人で同じことを話していたら子どもは嫌になってしまうかもしれません。ここら辺のさじ加減は自然と出来ているご家庭も多いのではないでしょうか」
 
 確かにアンケート結果を見ても、父は実技、母はメンタルといった役割分担のご家庭が多く「大切なことは意図的に父親から言ってもらうようにしている」という答えもありました。男性と女性では感性のバランスが違うという研究結果もあるようですが、みなさんここはナチュラルに使い分けができているようです。
 
 

■我が子をバーンアウトさせないために

「気をつけたいのがうまくいかなかった時の声かけです。試合に勝ったとき、成功体験があったときは子どもは黙っていても、話を聞いてほしい人のところに行って、聞いて欲しい話をするものです。問題なのは負けたとき、失敗した時です。こちらから声を掛ける場合は、さらに役割を意識したほうがいいでしょう。普段はサッカーの話をしないお母さんに『でも、あのシュート惜しかったよ』と慰められてしまうと、『わかっていないくせに……』と慰めがお仕着せに感じられて、かえって傷つけてしまう場合があります」
 
 早稲田大学アーチェリー部の監督として現場にも直接携わっている守屋さんは、両親共に競技に詳しいより、どちらかが知識がないくらいのほうが子どもが救われる場面もあるのではと指摘します。
 
「あるアーチェリーの有望選手のお母さんは『アーチェリーのことは全く知らないんで』と公言しています。お父さんはコーチ役を務めているのですが、その子を見ていると、お母さんがアーチェリーを知らないこと、これは性格もありますが、彼女のおおらかさに救われているなぁと思う場面が何度もありました」
 
 サッカーの勉強をして、サッカーを理解しようとすることも大切ですが、わからないならわからないなりにできることもあります。両親がふたりとも専門的なことを子どもに指摘してしまっては、子どもの逃げ場所がなくなってしまいます。これも「大人の方が声掛けのバランスをとる必要がある」のだそうです。
 
「大切なことは親子のコミュニケーションがうまく行っているかどうかです。会話がサッカー一辺倒になってしまったらそれこそ子どもを追い込むことになります。こういう子どもは親の期待に応えようと頑張りすぎて、結局バーンアウト(燃え尽きてしまうこと)してしまいます。小学生のうちからサッカーだけにしか目が行かない環境というのも考えものです。親としては選択肢を他にも示し、可能性を広げてあげることも大切でしょう」
 
 サカイクでも再三取り上げているように、子どもが小さいうちは運動能力の面からもさまざまな競技、さまざまな方面からの刺激を入れてあげることが有効です。お母さんはたくさんの選択肢を示すのが役割で「最終的に決めるのは子ども」。これくらいのおおらかさが必要なようです。
 
 言葉は悪いですが、サッカーだけしかできない“サッカー馬鹿”になるよりは、お母さんにガミガミ責め立てられることなく、見守られながら自分でその道を選んだ子どものほうが、これからどんな道に進むにしても結局は後悔せずに前に進めるのです。
 
 
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守屋麻樹//
もりや・まき
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。ローレルゲート株式会社の代表取締役として法人向け人材育成コンサルティングを手掛けるとともに、研修講師、セミナー講師、大学講師、プロコーチとして活動中。プライベートでは、2004年より早稲田大学アーチェリー部ヘッドコーチ、2010年より監督を務める。「若者を元気にすること」と「スポーツを通じて日本の社会をもっと活気あるものにすること」を自分が与えられた使命と考え活動している。
プロフェッショナルコーチ 守屋麻樹のブログ
 
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