大西貴の親子でサッカーを楽しもう!

2011年6月19日

「8人制サッカー」と、雨が降った際のサッカーの楽しみ方

 
「ウチの息子が、娘が今度サッカーを始めました!......でも、サッカーってどんなところを見たらいいんでしょう?そして、どんなところが楽しいんでしょうか?」そんなホントは相談したいけど、いまさら人にはいえない悩みをもっているお父さん、お母さんに応えるべく、前回からスタートした「大西貴のサッカーを楽しもう!」。
 
今回は現在各県大会で開催中の「第35回全日本少年サッカー大会」にまつわるお話。今回から採用されている「8人制サッカー」と、この季節につきものの雨が降った際のサッカーの楽しみ方、あとはお父さん、お母さんの応援について。さらに、みなさんから頂いた質問にも答えてもらいました!
 

■ボールを触れる8人制、だからファーストタッチが大事!

――今年から全日本少年サッカー大会が8人制になりました。今、実際に愛媛県大会をみてもらってどんな感想を持ちますか?

「これは昨年まで11人制だったからだと思うんですけど、まだFWはFW、中盤は中盤、DFはDFとポジションを守りすぎる傾向がありますね。ヨーロッパで8人制をするとDFは2枚にしてポジションはこだわらず、誰かが上がったら、誰かがカバーをするというようなバランスの部分を覚えながら進めていくような感じになります」
 

――スペースが広くなったので、ボールを触る機会は増えますよね?

「そうですね。ですから全てのプレーをダイレクトにする必要はないんですよ、止める時間も生まれますから。ですから、そこで次のプレーをするために「どこに止める」が重要になってきます。「前を向く」のか。「キープする」のか。パスをするにしても「前」なのか。「横」なのか。「後ろ」なのか。その選択肢を増やすために前後左右、右足、左足で目的をもったファーストタッチをするべきだと思います。
 
ゴールを奪うことは確かに重要ですけど、8人制だと指導者はそんなところも見ることもできる。お父さんやお母さんも子どものファーストタッチを見て、ほめてあげることが大事だと思います」
 

■雨でも対応できる技術を!そして応援でも「投げかけ」を!

――雨が降るとその技術がなおさら大事になりますよね。

「そうなんですよ。雨が降るとピッチが重くなるのでディフェンスをするときにも攻撃をするときにもパワーが必要になりますが、その中でもファーストタッチでは力を抜くことが大事。他にもドリブルのときにはボールの下を蹴らないと前に進みませんし、雨の日は選手の技術差がはっきり出るんですよね。
 
僕が愛媛FCユース監督をしていたときは雨練習をあえてしたこともあります。サッカーは雨が降っても試合があるスポーツですし、雨の状況を経験しておくことも必要ですね」
 

――全日本少年サッカー大会はお父さん、お母さんの応援も熱が入ります。応援の方法についてはどう思いますか?

「応援の方法は人それぞれとは思いますが、忘れてはいけないのは『試合に勝とうが負けようが、主役は子どもたち』ということ。つまり、子どもたちがプレーの内容がよくて負けて、試合後にみんなが満足していたら、そこはそれでいいと思うし、1人がミスをして0-1で負けたとしても、チームが負けたのは決してその子だけのせいではないし、点を取れなかったのも悪い。
 
みなさんはよく『がんばって』といいますが、がんばっていない子どもはいないんです。そこを理解した上で、どんな言葉かけをするかが大事になりますよね。 一生懸命応援するのはいいとは思いますが、応援は勝ってほしい、いいプレーをしてほしいと思ってすることが大前提。結果については勝ち負けよりも、子どもたちがそれを、どのように受け止めるかの方が重要です。
 
だから、親御さんは負けたときほど子どもに『自分はどうだった?』と問いかけてみることも必要ですよね。負けて得るものを小さいものにするのか、それとも大きいものにするか。ここもものすごく大事だと思いますよ」
 

――シュートを「撃て」とか、「撃たせるな」という応援も多いですよね。

「そこは『シュートを撃つために何をするか』、または『シュートを撃たせないために何をしなきゃいけないか』を言ってあげたほうがいいですね。  子どもたちに判断材料を与える応援をするには自分たちも勉強しないとできないですし、そうするとサッカーがより楽しく見ることができると思いますよ」
 

――ちなみに、大西さんのころの「全日本少年サッカー大会」はどうだったんですか?

「成績は県大会止まりでした。僕は後に南宇和高校の主力になる選手たちと一緒に城辺サッカースポーツ少年団でプレーしていましたけど、南宇和郡の大会を勝つのが大変で、県大会でも3位くらいで終わっていました。中学時代はシュート1本で負けましたし(笑)。僕のサッカー人生の中では、わりとそういうことが多いです」
 

大西貴の「サッカーお悩み相談室」

Q1 小学二年生の息子がいますが、テレビゲームについて悩んでいます。今は「リフティングが300回できたら」など条件をつけており、ゲームをやらせていないんですが、子どもにテレビゲームをやらせることはいいんでしょうか?
 
A1「ゲームをすること自体は悪くないと思いますよ。サッカーゲームであれば自分の試合では普段見ることができない三次元で見て『ああ、こうなるとディフェンスラインができるんだな』とか学ぶことができますから。実際、僕らもJリーガー時代はゲームをして距離感とかを覚えたこともありました。
 
自分の子どももゲームはしていました・・・、というより今もしていますけど(笑)。選手の名前や特徴を覚えて、サッカー全体を好きになるにはテレビゲームも方法の1つではあると思います。
 
ただ、実際にボールを蹴らないとサッカーはうまくなりませんから、テレビゲームをしないのも1つの方法。僕もゲームは1時間から2時間くらいしかしなかったですし、ゲームはあくまでバーチャルな世界であって、コミュニケーションの方法の1つであることを分かっていればいいと思いますよ」
 
Q2 私の子どもは性格が控えめです。それでも積極的なプレーをしてほしいのですが、有効な手段はありますか?
 
A2「失敗を怖がらせないことですね。1つ例をあげましょう。 僕は今回、松山北高校のコーチとして愛媛県高校総体のベンチに入りましたけど、わりとうまく試合が運んでいた試合で、ハーフタイムに「今日のゲームは楽しいか?」と最初に選手たちに問いかけました。そこで選手からは「楽しいです」と答えが返ってきたので、「じゃあ、もっと面白くしようか」ということだけ伝えました。
 
これがいいか悪いかはわかりませんが、僕はうまく運んでいる試合で「こうしろ、ああしろ」ということはいいたくない。もちろんうまくいっていない場合は指示をしないといけないですけど、気をつけるところだけいえばいいと思うんです。
 
なぜ消極的になるかというと、1つは自分に自信がないから。ですから、そこで自信をつけてあげることが大事ですね。そこに至るまでには試合や練習でチャレンジさせる。あとは「今日はどんなプレーをしたい?」と問いかける。「シュート決めたい」「じゃあ、どんなシュート決めよう?」となると、自分の意見を持って積極的になると思いますよ」
 
 
大西貴(おおにし・たかし)//
1971年愛媛県生まれ。南宇和高では主将として1989年度の第68回全国高校サッカー大会制覇。福岡大を経て1994年に広島へ加入(マンチェスター・ユナイテッドへの短期留学も経験)。主にDFとしてJ1・21試合に出場。98年、四国リーグ所属(当時)だった愛媛へ里帰りし、愛媛FCでサッカースクールコーチを務め、2001~03年には選手兼監督・04年には監督としてJFLでも采配を振るった。その後、愛媛FCユース監督を経て、現在は愛媛県立松山北高コーチと、スカパー!愛媛中継解説者として活躍中。日本サッカー協会公認A級ライセンス保持
 
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