不安定で不確実な社会を生き抜くスキルの身につけ方
2019年2月 6日
「忘れ物を届ける」ことは子どもの思考力を奪っている。思考力をつけるための会話とは
2020年に大学受験改革を象徴とする大教育改革を控える日本では、この年を契機に〝賢さ〞の中身が大きく変わります。
これからの子どもたちには、親世代が経験しているような、記憶力や知識を基に「正解」早く見つけ出したり、テストの点数を競うだけではなく、いろいろな人を納得させられる答えを自分で導き出す思考力が問われます。
本連載では「自分で決められる賢い子供 究極の育て方」(KADOKAWA)から、10年後の社会を賢く生き抜くために、子どもたちが身につけておくべきスキル(ライフスキル)についてお伝えします。
教育の場でも重要なワードとなっている「非認知スキル」は、スキル=技術なので、親の学歴や経済力、生まれ持った資質や才能、特質ではなく、後天的に習得が可能なのです。
■「忘れ物を届ける」ことは子どもの思考力を奪っている
みなさんのお子さんは忘れ物をしたことはありますか?
例えば、子どもが宿題のノートをテーブルに置いたまま学校にいってしまったら、あなたはどうしますか。たいていの親は「忘れ物を届ける」「先生に連絡する」などの行動をしがちですよね。
しかし、この一見当たり前に見える行動が、子どもたちから考える力を養うための貴重な機会を奪っているのです。
学校について宿題のノートを忘れたことに気づいた子どもは、「忘れちゃった! 先生になんて言おう」「取りに帰る時間はあるかな」と授業までの短い時間に考えだします。
それなのに親が届けてしまったらどうでしょう。親は「よかった。間に合った」と安心するでしょうが、子どもは忘れ物をしたという自覚もないままなんとかなってしまうのです。
先回りしてすべてをお膳立てしてしまう親に育てられた子は、自分からは何もしなくても「なんとかなってしまう」人生を歩むことになります。
そのように「なんとかなってしまう」人生を歩んできた子どもは、自ら工夫したり考えたりする事態に遭遇した経験が極端に乏しいので、考える力が身につきませんし、上手くいかなかった時に「失敗したのはお母さんのせいだ」などと他者のせいにします。
多様化・複雑化し、正解が一つではないかもしれない不安定で不確実なこれからの社会において、自分で考え、答えを導き出し、納得して行動することは、問題にぶつかったときにどのように解決するか思考するベースにもなります。
■考える力を身につける会話例
「今日のテストどうだった?」
「あんまりよくなかったかも」
「なんでよくなかったの?」
このような会話を繰り返しているようでは残念ながら「考える力」は育ちません。大切なのは親の問いかけ、質問ですが、ただ質問を増やしただけでは、子どもにうっとうしがられて終わりということも。
質問は考える力を引き出すいい練習になりますが、聞き方にはちょっとしたコツがあるのです。考えることに不慣れな子に、何の材料もないまま、「考えろ」とだけいっても、頭が〝フリーズ〞してしまいます。
そういう子には、「遊園地と動物園どっちがいい?」「今夜の夕食、ハンバーグとトンカツならどっち?」など具体的な選択肢を与えて、自分で決めることからスタートしましょう。
過保護や過干渉は百害あって一利なし。適度な質問で子どもたちの頭を刺激したら、あとは考え出すのを待つだけです。