不安定で不確実な社会を生き抜くスキルの身につけ方
2019年2月27日
子どもたちの「幸せになる力」を伸ばす、感謝の言葉「ありがとう」
2020年に大学受験改革を象徴とする大教育改革を控える日本では、この年を契機に〝賢さ〞の中身が大きく変わります。
これからの子どもたちには、親世代が経験しているような、記憶力や知識を基に「正解」早く見つけ出したり、テストの点数を競うだけではなく、いろいろな人を納得させられる答えを自分で導き出す思考力が問われます。
本連載では「自分で決められる賢い子供 究極の育て方」(KADOKAWA)から、10年後の社会を賢く生き抜くために、子どもたちが身につけておくべきスキル(ライフスキル)についてお伝えします。
教育の場でも重要なワードとなっている「非認知スキル」は、スキル=技術なので、親の学歴や経済力、生まれ持った資質や才能、特質ではなく、後天的に習得が可能なのです。
■周囲に感謝する力は「幸せ」を作り出す
感謝する、という行動は当たり前のことに感じる親御さんもいると思いますが、この「感謝する力」こそ、WHOが提唱する10のライフスキルの中でも「効果的コミュニケーションスキル」「対人関係スキル」「自己認識スキル」「共感性スキル」「情動への対処スキル」「ストレス・コントロールスキル」をはじめ、ほぼすべてのスキルの源泉になり得る重要なスキルなのです。
アメリカでの研究では、感謝の心を伝えることで幸福度が増すという結果が出ています。
「ありがとう」「お世話になりました」などの感謝の言葉は、礼儀や道徳だけではなく、科学的にも「いいこと」だったのです。
これまでの研究では、感謝しやすい人は、ストレス反応が起こりにくいこと、感謝しやすい人ほど、「自分は充実している」と思う心が育ちやすく、感謝することが習慣化している人は、自分が困ったとき、ピンチのときに「周りの人から助けてもらえる」と思えるそうです。
■親がいない環境、失敗から生まれる「感謝の心」
「感謝する力」を身につけるきっかけとして有効なのが、子どもたちが非日常に身を投じ、「自分が1人で生きているわけではない」ことを認識できる体験をすることです。
親のありがたみに気づき、感謝する心を持てるようになるのは、親がいない、先回りして助けてくれる人がいない「非日常」を体験するからにほかなりません。
自分がすでにできるようになった練習ばかりを繰り返しても上達しないように、ちょっとつまずく、自分でなんとかしなければいけないこと、もう一歩進んで1人では対処できないかもしれないくらいの課題にチャレンジする環境で子どもたちは成長していくのです。
そんな経験を経て、これまでやってもらっていたことが当たり前でないと気づき、親への感謝の気持ちが生まれるのです。
また、子どもの「感謝する力」が育たないのは、親が子どもたちに見せている姿も影響します。
「感謝の心が大切だよ」といっている大人が、自分では何かしてもらっても「ありがとう」をいわない。夫婦なんだから、家族なんだからやってもらって当たり前。ありがとうなんていわないという親が、子どもにだけ「感謝しろ」というのは理屈が通らないのです。
他人への感謝は「生まれつき」のスキルではなく、後から身につけられるものです。
まずは家庭で「ありがとう」を増やしてみてください。