不安定で不確実な社会を生き抜くスキルの身につけ方
2019年3月28日
運動ばかりしてたらバカになる、は間違い!? 調査で判明! 運動が脳を鍛え、成績アップする理由
2020年に大学受験改革を象徴とする大教育改革を控える日本では、この年を契機に〝賢さ〞の中身が大きく変わります。
これからの子どもたちには、親世代が経験しているような、記憶力や知識を基に「正解」早く見つけ出したり、テストの点数を競うだけではなく、いろいろな人を納得させられる答えを自分で導き出す思考力が問われます。
本連載では「自分で決められる賢い子供 究極の育て方」(KADOKAWA)から、10年後の社会を賢く生き抜くために、子どもたちが身につけておくべきスキル(ライフスキル)についてお伝えします。
教育の場でも重要なワードとなっている「非認知スキル」は、スキル=技術なので、親の学歴や経済力、生まれ持った資質や才能、特質ではなく、後天的に習得が可能なのです。
■運動ばかりしていたらバカになる?
受験勉強のためにスポーツを辞めるのは当たり前、と思っていませんか。
実際、中学受験する子が多い地域では、小学4年生の終わりごろにサッカーを辞めて受験に専念する子もいると聞きます。「チームに高学年がいなくて......」という声も。
そして、受験までの間の「運動」といえば学校体育だけ。外遊びを含めたスポーツはほとんど何もせず勉強に専念、というご家庭もあるそうです。高学年の約2年を運動不足で過ごし、いざ中学に入って部活動でサッカーに復帰、となっても体力的・技術的についていけなくてサッカーがイヤになって辞めてしまう子もいるのだとか。
もちろん学習は大事です。サッカーを深く理解するにも知識とイメージする力、理解力が重要になります。
一方、親御さん世代の中に運動ばかりしていると勉強がおろそかになる、という考えを持つ方もいらっしゃいますよね。
小学生年代では気づくことが少ないかもしれませんが、中学・高校になると、夏前まで部活に打ち込んでいた子が受験勉強をしだしてグーンと伸び、勉強だけしていた子に追いつくこともあります。
スポーツで養った集中力、思考力は勉強にも役立つのです。また、勉強に集中するにも体力が要ります。
成績を上げるためにスポーツを辞めるというこれまでの概念が、子どもたちの可能性を狭めているとしたらどうでしょうか。
近年、ハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士が「適度な運動が脳の神経細胞を増やす」という新説を発表し、話題となりました。博士の研究によると、脳の神経細胞を増やしたり、脳に栄養を送る血管の形成を促進させる物質が、運動によって分泌されることが分かったのです。
物を覚える(認知能力=学校のテストで数値化される能力)を高めるために必要な神経結合を増やしたり、思考や感情に関わる神経伝達物資の分泌も促されるのだということです。
■運動によって脳が鍛えられるという真実
1980年代からアメリカで行われた「運動と学習効果の因果関係」の調査で、体力調査の成績が良かった子どもほど学業成績が良かったという結果もでています。
また、高校生を対象に行った調査で、1時間目が始まる前に有酸素運動で心拍数を185以上に上げたところ、読み書きと理解力のテストの成績が向上したのだそう。しかもそのプログラムを受けた生徒が国際的な調査で数学が世界6位、理科では世界一という好成績を収めたことからも、運動が脳に働きかけ学習効果につながるとして世界中の研究者から注目されているのです。
「でもサッカーばっかりしていて、勉強する時間が無ければ意味がない」
そういいたくなる親御さんも多いはずです。たしかに運動ばかりしていて勉強しなければせっかく運動で増えた脳細胞を活躍させることができません。どちらも行うことで、学びが深まっていくのです。
勉強のためにサッカーを諦める、もしくはその逆といった極端な考え方を周囲の大人が見直すことから始めてみませんか。
■部活生の方が時間管理ができている
ベネッセが定期的に行っている「子ども生活実態基本調査」によると、高校生年代の部活参加と平日の家庭学習時間を調べたところ、部活動に参加している生徒の方が参加していない生徒より学習時間が多かったという結果が出ています。
つまり、部活動などで時間が限られている子どものほうが、時間管理をしっかりして学習時間を管理できていたのです。
好きなことをやる、そのためにはやらなければならないことをいつやるか、自分で考えて行動しているということです。
「サッカーのあと、寝る時間まで○時間あるから、宿題は▲時に始めよう」と子どもたちが主体的に考えられるようになれば、学習効果は上がっていきます。
サッカーは思考力やリーダーシップ、感謝する力など「非認知能力」を高める力があります。そしてそれらの数値化できない非認知能力、人間性を高めることは、結果として学校の勉強やテストの点数、IQなどの数値化できる「認知能力」の向上にも影響を与えるということです。
運動ばかりしていたらバカになる、というのはもはや過去のことなのです。