誰でも速くなるサッカーのスピードアップ講座
2016年12月16日
ドリブルをうまくするには「足のどこに当てるの?」「足の角度は?」【谷コーチの出張指導:後編】
Jリーグで17年以上の指導実績があるフィジカル・コンディショニングコーチ谷さんの出張指導、ヴァンフォーレ八ヶ岳U-12編。前回の「キック上達編」に続き、今回は「ドリブルがうまくなるトレーニング」を紹介します。タニラダーを使って簡単にできるトレーニングなので、ぜひチャレンジしてみてください。(文:鈴木智之)
■アウトサイドではなく、スウィートスポットを意識しよう!
トレーニングに参加したのは、ヴァンフォーレ八ヶ岳U-12の選手たち。幼稚園から小学校6年生、ジュニアユースの女子選手などカテゴリーの垣根を越えて、たくさんの選手達が谷さんのトレーニングを受けに来てくれました。
前回の記事で紹介した「キック編」に続き、今回は「ドリブル上達編」です。谷さんは子どもたちを前に「まずは横一列に並んで、みんなでドリブルをしてみよう」と語りかけます。このときのポイントは、キック編でもお伝えしたとおり「姿勢を良くすること」。背筋を伸ばして顔を上げ、ボールを目の端で見ながらドリブルをしていきます。
一通り、子どもたちがドリブルをし終えたところで、谷さんは次のようにアドバイスをします。
「ボールをタッチするときは、足の“スウィートスポット”で触ってみよう」
スウィートスポットとは、足の甲の中心よりやや外側のことを言います。なぜ、スウィートスポットでボールを触ると良いのでしょうか? 谷さんはこう説明します。
「ドリブルをするとき、つま先でボールを蹴ると加減が難しく、遠くへ飛んでいってしまうことがあります。インサイドでボールを触ると、股関節が開いた状態になるので、スピードを上げることができません。しかし “スウィートスポット” (足の甲の外側)でボールを触ると、良いランニングフォームのまま進むことができます。結果としてドリブルのスピードも上がりますし、パスを出すにしても、スムーズに足を動かすことができるんです」
■「身体の動き」を抜き出してトレーニングしてみよう
では、どのようにして、『スウィートスポットを使ったドリブル』を身につければ良いのでしょうか? ここで登場するのがタニラダーです。谷さんは「つま先がラダーのマスの角に向くようにして、ステップを踏んでみましょう」と言うと、お手本を見せます。ドリブルの動きのように、リズミカルにラダーを進んで行く姿を見せた後、子どもたちが実践していきます。谷さんは言います。
「ラダーを使って身体の動き方を抜き出してトレーニングし、動かし方を身につけてから、ボールを使ってトレーニングをします。そうすることで、ボールだけに意識が向くことがなくなるので、結果として動きを習得しやすくなります」
ラダーを使って動きを繰り返しトレーニングした後、いよいよボールを使ってドリブルの実践です。谷さんは「背筋を伸ばして、顔を下げなくてもボールが見える所にボールを置いて、背筋を伸ばして目と足の感覚でドリブルをしてみよう」とアドバイス。スウィートスポットにボールを当てて進んで行く子ども達のドリブル姿が、クリスティアーノ・ロナウドに似てきます。
■何となくではなく、しっかり動きを意識することができる
ドリブルとは、まっすぐ進むためだけのものではありません。相手が前からボールを奪いに来たときに、クルッとターンをして方向転換するのも、サッカーに必要なドリブルの技術です。この動きも、タニラダーを使うことで習得することができます。
谷さんは「ラダーの横棒に足の内側(注・インサイドキックをするときにボールを当てる面)を平行に置き、股関節を開くようにしてステップを踏んでみよう」と、新たな動きを説明。これはまさに、アウトサイドにボールを引っ掛けてターンをするときの動きです。
ラダーを使って動きを繰り返した後は、実際にボールを使ってトレーニングをします。ここでは谷さんの合図に合わせて、子どもたちがアウトサイドでクルッとターン。そのたびに谷さんは「いまの鋭い動き、良いね!」「いまの、メッシみたいだったよ!」と、子どもたちを褒めてやる気にさせていきます。
トレーニングの最後は「ヘディング」のやり方をレクチャー。上半身と下半身を連動させ、体をムチのようにしならせるヘディングを、谷さんが実践しました。(詳細はタニラダーADVANCED DVDを参照)
およそ2時間のトレーニングを終えた後、子ども達に感想を聞くと、次のような答えが返ってきました。
「ドリブルでボールを運ぶときは『アウトサイドのあたりでボールを触る』とトレーニングしてきたけど、谷さんに教えてもらって、どこに当てるのか、足の角度はどうするのかが、とてもよくわかりました。それをラダーでやってみて、何となくじゃなく、しっかり動きを意識することができて、これなら自分でもトレーニングできると思います。ドリブルの姿勢が良くなることで、これまでは首を振らないと見えなかったところも見えるようになりました。家でも練習してみたいです」
「僕はドリブルの切り返しがうまくなくて、相手にボールを取られることが多かったのですが、スムーズにターンができるようになりました。いままでは速いドリブルも遅いドリブルもインサイドでタッチしてたけど、速くドリブルするときはスウィートスポットを使った方が、うまくいくことがわかりました」
子ども達は、タニラダーを使ったシンプルでわかりやすいトレーニングをすることで、ドリブルをするコツを身につけたようです。この記事を読んで「自分もチャレンジしてみたい!」と思った選手、「我が子にやらせてみたい!」と思った保護者の方々、ぜひラダートレーニングに取り組んでみてください。きっと、新たな発見があるはずです。
谷 真一郎(たに しんいちろう)
筑波大学在学中に日本代表に招集され、柏レイソルで1995年までプレー。引退後は筑波大学大学院にてコーチ学を専攻し、その後、15年以上に渡りJリーグのクラブでフィジカルコーチを務める。500試合以上の指導経験を持ち、2012年にはJ2で24戦無敗のJリーグ記録に貢献。『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』
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