スポーツ先進国の親たちが学ぶ!スポーツペアレンティング講座とは
2016年12月12日
ポジティブな声掛けと改善点の指摘の割合は5:1が理想。わが子の「エモーショナル・タンク」を満たそう
スポーツ先進国アメリカでおこなわれる「スポーツペアレンティング講座」の内容をお伝えしていくこの連載。この講座はスポーツをする子どもを持つ親を対象にしたもので、親として、子どものスポーツとどのように関わるかを考えるものです。
筆者はアメリカの「ポジティブ・コーチング・アライアンス」という団体が提供している親向けのオンラインコースを受講しました。
前回はELMツリーをご紹介しました。ELMツリーとは、「努力して最善を尽くすこと」、「学ぶ意欲」、「ミスによって何かを止めてしまわない」といったものです。
第3回は「エモーショナル・タンク」についてです。「エモーショナル・タンク」とは、前向き、幸福感、意欲などで気持ちのタンクを満たすという意味です。(取材・文 谷口輝世子)
■エモーショナル・タンクとは
スポーツ心理学では「エモーショナル・タンク」で気持ちを満たされた選手ほど、よりよいパフォーマンスを発揮できると言われています。子どもの場合は、コーチの助言に耳を傾け、よりよい選手になりたいという意欲が高まるとされています。
エモーショナル・タンクを満たす人との関わり方・具体的な事実に対して褒める。・感謝の気持ちを述べる。・相手の話を聞く。・非言語的コミュニケーションとして傾聴の姿勢、笑顔など。
これとは逆にエモーショナル・タンクから意欲や幸福感を奪う関わり方も挙げられています。
意欲や幸福感を奪う人との関わり方・非難する。・皮肉やあてこすりの発言。・無視、話を聞かない・非言語的コミュニケーションとして、ため息など。
■「ポジティブなやりとり 5:1 避難や批判」が適切
非難するより褒めて育てることがいいということはわかりますが、子どもはいつも、褒められるような行動をしたり、感謝したくなるような行動をしたりするわけではありません。むしろ、その逆であることが多いと思います。サッカーの練習中や試合中でも褒めたくなることよりも、責めたくなることの方が多いかもしれません。
もちろん、チームメートをいじめる、相手選手を汚い言葉で罵るなど、悪いことをしたときにはその場で注意をしなければなりません。
そういったこととは別に、サッカー選手として向上するためにも、変えていかなければいけない、直さなければいけないことについて、コーチや親はどのようにアドバイスすればよいのでしょうか。
ワシントン大学のジョン・ゴットマン教授が、結婚生活が続く夫婦と、離婚に至る夫婦について、2人の間のポジティブなやりとりと、非難や批判の割合について調査しました。ポジティブなやりとりが5、非難や批判が1の割合である夫婦は結婚生活が続きやすく、ポジティブなやりとりが2、非難や批判が1の割合か、ポジティブなやりとりがそれ以下の割合になってくると結婚生活が破たんしやすいという傾向が分かったそうです。
後の研究によって、子どもたちが何かを学ぶときでも、この比率が応用できることが分かりました。教師やコーチからポジティブなやりとり5、非難や批判1の割合であるほうが、子どもたち自身が指示を受け入れやすく、よりよい方向に改善していこうという意欲が出るとのこと。講座では、これをスポーツ指導や、親子の関わりにも取り入れようと薦めていました。
親として、サッカー少年の改善すべきこと、変わらなければいけないことを助言するときにどうしたらよいのでしょうか。スポーツペアレンティング講座では、こう伝えています。
親としてサッカー少年に助言する際に心がけること・試合の直後は避ける。・人前ではなく、時間と場所を選ぶ・子どもに聞く意思があるか確認する・ポジティブな点を挙げたあとで、改善するべきことを指摘する。
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