W杯出場パパに聞く!親子で楽しむ「2018年ロシアW杯」の観戦術
2018年2月 5日
「親が言いすぎると子どもの感情が無くなる」 3児のパパ小村徳男が語る、子どもを成長させる親のスタンス
打点の高いヘッドと、ハードなマークを武器に横浜F・マリノスやサンフレッチェ広島などでCBとして活躍した小村徳男さん。日本が初めてワールドカップに出場した1998年フランス大会のメンバーにも名を連ね、第3戦のジャマイカ戦のピッチにも立ちました。
引退後はSC鳥取の監督を務めた小村さんは、現在、解説者として活躍する傍ら、サッカースクールのコーチを務めるなど、精力的な活動を続けています。
世界を知る名DFは、どのような想いで子どもたちを指導しているのでしょうか。自身のお子さんとの関わり方も含め、指導者、父親としての考え方を窺いました。(取材・文:原山裕平、写真:平間喬)
後編:「エリア内ハンドを...」小村徳男が今だから語れる、W杯の思い出>>
■わが子のサッカーと親は一線を引かなければならない
――小村さんは3人のお子さんがいるそうですね。
はい、6年生、4年生、2年生の子どもがいます。上から男、女、男ですね。
――サッカーはやっているんですか?
みんな一度はやっていたんですけど、今は一番下の子だけがやっています。
――上のお子さんはサッカーを辞めてしまったんですね。
全然センスもないし、本人にもやる気がなかったので(笑)。サッカーよりも好きなことがあるので、今はそっちをやっています。
――続けてもらいたかったのでは?
いや、そういう気はないですね。僕の父親は大工なんですが、僕は大工を継ぐ気はなかった。それと同じで、親がサッカー選手だったからといって、子どももサッカーをやらなければいけないことはないですから。
自分がやりたいこと、続けられることをやってもらえれば十分です。子どもは、子どもですから。ただし、『中途半端にやるのではなく、やるならしっかりやり切れ』ということだけは言っています。
――サッカーを続けている2年生のお子さんに対して、アドバイスはしますか?
まだ始めたばかりで、戯れているという感じですが、少しだけ助言はしています。特にボール扱いの部分ですね。
やっぱり、ボールを思うように扱えなければサッカーは面白くないですから。ボールがあれば小さいスペースでできるようなことを、教えています。
――試合の応援にも行かれますか?
見に行きますけど、僕から何か言うことはないです。やっぱりコーチがいますから、任せている以上、そこは一線を引かないといけない。もちろん、僕の考えとは違う部分もありますけど、それを口に出してしまってはいけないと思っていますす。
――いろいろと口出ししてしまう親も多いようですが、そうした行為についてはどう思いますか?
ダメ出しではなく、こうしたほうがいいよとか、前向きな声かけをしたほうがいいと思いますね。例えば、ボールを取った後はこうしたほうがいいよ、とか。僕の場合はあくまで現状を見たうえで、ワンランク上がれるようなアドバイスをしますね。
■親があれこれ言うと子どもの感情が消えてしまう
――ご自身が子どもの頃は、どういった練習をされていましたか?
覚えてないです(笑)。ただ、身近にはあまりサッカー専門の指導者がいなかったと思うので、小学生の頃は、みんなでこうしようとか、こういうことをやってみようという感じで、自分たちで考えながらやっていた気がします。
――ご両親からはどういうサポートを受けていましたか?
母親はサポートしてくれましたね。ドリンクを用意してくれたり、レモンの砂糖漬けみたいなのを作ってくれたり。お弁当もそうですけど、サッカーを楽しくプレーするための環境を用意してくれました。逆に父親は一切、何も言ってこなかったです。
――試合の応援にも来なかったのですか?
一度だけ見に来てくれたんですけど、その理由はビデオカメラを買ったから。試しに撮ってみたかったんでしょう(笑)。まあ、仕事が忙しいという事情はあったと思いますけど、父親から何かダメだしやアドバイスされたりすることはなかったですよ。
――親がそれくらいのスタンスのほうが、子どもにとってはやりやすいのでしょうか?
僕はそう思いますね。いろいろと言われて、情報が入りすぎてしまうと、それに応えなきゃいけないというプレッシャーになる。それに、言われるからやるのと自分からやるのとでは全然違いますから。
やらされている感じになってしまうと、子どもが燃え尽き症候群になってしまうかもしれないですし。やっぱり、子どもの頃って、単純にサッカーが楽しいとか、試合に勝ってうれしい、負けて悔しいという感情が大事で、そういう気持ちがプレーの継続や成長につながるんです。親やコーチがいろいろ言いすぎることで、子どもの中からそういう感情が消えてしまうのは、やっぱり良いことではないですよ。