子どもに自信がつく!サカイクキャンプWINTER2018特集
2018年12月 5日
引っ込み思案の息子を変えたかった父の思いと、息子を変えたサッカーコーチの"ひと言"
子どもが大きくなって社会に出るころ、親であるわたしたちは年老いて力になってあげることができないかもしれない。だからこそ、ひとりで生きていけるような自立した大人になってほしい。
ところが、自分の子どもをみていると先が思いやられるような行動ばかりが目についてしまう。
サカイク読者のなかにも、そんなふうに思う人は少なくないはずです。では、どうすれば自立した子どもを育てることができるのでしょうか。
そのヒントは、毎年多くのサッカー少年が参加し、サカイクの考えを実践するサッカー合宿「サカイクキャンプ」に参加したお父さんの声に隠されているのかもしれません。(取材・文 サカイク編集部)
■引っ込み思案になってしまった息子を変えたかった
「もともとは積極的にコミュニケーションを図り、周囲の友だちをリードしていくような子だったんです。ところが小学校に入学すると、周りにやんちゃな子どもが増え、仲間外れにされるようなこともあったようで、引っ込み思案な性格になってしまいました」
そう打ち明けてくれたのは、これまでサカイクキャンプに3度も参加してくれている小学4年生の男の子を持つお父さん。子どもの消極的な性格はサッカーのプレーにも表れるそうです。優しい性格で相手の気持ちになってものごとを考えることができる子。もっと自信を持っていいのになかなかそれができないわが子を見ていると、なにもしてあげられないことが歯がゆかった。
「出る杭は打たれる。小学校でそれを肌で感じ、出過ぎないようにしているように見えます。そんな息子を元の姿に戻すきっかけになればと思い、大阪堺市で行われたサカイクキャンプに、はじめて息子を参加させました。普段とはちがう環境を体験してみることが息子にとって大切だと思ったんです」
ところが、普段通っているチームでもうまくチームに溶け込めていない子が、顔見知りのいないサカイクキャンプでいきなり積極的になれるとは考えにくい。案の定、トレーニングで二人組にならないといけない場面でも、なかなか周りの子に声をかけることができませんでした。
「ひとりでぽつんとおった。サカイクキャンプに参加しても、なかなか息子の消極的な姿勢は直らなかった」とお父さんは振り返ります。
「もちろんそんなに急に成長しないことはわかってます。それでも、高峯ヘッドコーチや他のコーチたちがみせる子どもたちへの接し方や、練習終了後に送られてくる報告メールを見ていると、サカイクキャンプに参加させていることは間違いじゃないなと思えたんです」
そして3度目の参加となるサカイクキャンプで、ようやくわが子に変化の兆しを見たそうです。
「練習中、おなじグループの子たちに、積極的に話しかけている息子の姿がありました。プレーを見ていても、上手とは言えないですけど、積極的にボールに関与しようとしている様子は伺えました。あっ、ちょっと変わったんじゃないかな、と思えました」
■息子さんを変えたサカイクコーチの"ひと言"
息子さんはどうして変わることができたのでしょう。お父さんは次のように話してくれました。
「息子に話を聞くと、5年生として同じ部屋の4年生を引っ張っていくように、どうやらコーチが促してくれたようなんです。『○○くんは、何度か参加していてわかっているし年上なんだから、同じ部屋の子たちにいろいろと教えてあげてな』と。どうも、それが息子にとっての変わるきっかけになったようです。それと同じ部屋の子が『この部屋はみんな友だちやで』と言ってくれたことも、プラスに作用したみたいです」
変わった息子さんをサカイクコーチ陣はどのように見ていたのでしょうか? 高峯ヘッドコーチは言います。
「2日目から、急に性格が変わったように同じグループの仲間とコミュニケーションをとるようになりました。これまでは、練習中に二人組も組めないほど消極的だった子が、休憩中もずっとゴール前で仲間と遊んでいました」
変化はプレーにも表れたと高峯コーチは続けます。
■積極性がサッカー選手としての成長を助ける理由とは
「キャンプに参加したからといって、2日や3日で急激に技術が成長するということはなかなかありません。でも、積極的にプレーできるようになりました。これはサッカー選手としてとても大きな成長です」
なぜ、積極的にプレーすることがサッカー選手にとって大切なのでしょうか。
「消極的なプレーとは、責任が発生しないプレーです。パスから逃げたり、シュートを打てる場面で味方にパスを出してしまう。つまり、成功も失敗もない責任転嫁のプレーになります。逆に、積極的になると自分で実行したプレーに責任を持つようになります。そして自分の責任のもと選択したプレーが成功すれば自信につながります。自信を持つことで、子どもたちは自分たちで考え出します」
お父さんも積極的になることのメリットを話してくれました。
「ものごとに積極的に取り組んだり、前向きにとらえることができれば、子どもはどんどん成長していくと思っています。だから、息子には変わってほしかった。サカイクキャンプのコーチ陣は、子どもたちの積極性や自信を育てるような関わり方をしてくれていると思っています」
子どもたちの積極性や自信を育てる指導。サカイクキャンプのコーチ陣は子どもたちと接するときにどのようなことに気をつけているのでしょう。高峯コーチが教えてくれました。
「よく、褒める指導と言いますが、無理に褒めようと思ってもなかなか難しいものです。褒めるというよりも、認めてあげればいいんです。『いまのパスはミスになってしまったけど、見ているところはよかったよ』とか、『一生懸命ボールを追っかけていたね。ナイス』とか。自分のことを見ていてくれる。周囲の大人が与えるその安心感が、子どもの積極性や自信を引き出すと思って子どもたちと向き合っています」