あなたの支え合う心が、子どもの成長を加速させる
2015年12月21日
とくに冬は実践したい!自宅で簡単1日10分でできる親子ストレッチ
前回のできごとがきっかけで、あらためてけがについて意識するようになった加藤和雄さん・幸子さん夫妻。接触プレーでのけがも心配ですが、季節が冬へと移り変わり、気温が下がるにしたがって『こくみん共済SC』の選手たちも足首の痛み、ひざの痛みなどを訴える頻度が高くなってきているようです。
気温が低くなる冬は、けがに要注意の季節。寒さで凝り固まった筋肉は、いつもより柔軟性がなくなっています。こんな状態でいきなりサッカーをプレーしたらけがをしても不思議ではありません。普段、運動不足のお父さんが子どもの運動会で全盛期の走りをイメージして、いきなり全速力で走ろうとしてけがをしてしまうのと同じようなことです。
冬に必要なのは、筋肉の温度を上げて可動域を広げておくこと。特に効果的なのは筋肉を伸ばすストレッチです。(構成 大塚一樹 監修 井川明日香)
今回、読者の疑問に答えてくれる『こくみん共済SC』のメンバーはこの人
加藤幸子(36歳)
【職業】パート/主婦
【チームでの役割】差し入れ担当(レモンのはちみつ漬け)
【応援スタイル】[ひかえめ他力本願型]
他より一歩引いて見ている。「サッカーのことはよくわからないから、他のお母さんたちにお任せします」。時折「がんばれ~」など発声するも、ボリュームが小さく子どもまで届いているか定かではない。
【備考】
仕事ができるタイプではないが、頼まれ事は断れなくコツコツと行う。
家では夫に愚痴ることもしばしば。周囲の目を気にするほうで目立った行動は控えることが多い。
※このキャラクターはフィクションです。登場する人物、団体名は実物のものとは関係ありません。
私、加藤幸子には6年生の息子がいます。毎日がんばっている息子を見ていると、「私も何かしてあげたい」という気持ちが出てきます。しかし、私たち夫婦はサッカーのサの字も知りません。夫にも「もっと一緒にボールを蹴ってあげて!」と愚痴ってしまうこともあるのですが、平日忙しく働いている夫にそこまで求めるのは少し酷かなとわかってはいるのです。
パートの帰り道、本屋さんに立ち寄った幸子さんの目に留まったのが、ストレッチのやり方がわかりやすく写真で説明されている本。
(へぇ、この程度の運動なら私にもできるし、時間もかからない。ボールを使った自主練習に付き合うのは無理だけど、これなら。いくつかやってみよう)
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こうして幸子さんは「サッカーに役立つ親子で簡単にできるストレッチ」をおうちで実践することにしたのです。
とはいえ、ストレッチ初心者の幸子さん。どの筋肉をどのように伸ばせばいいのかわかりません。そこは専門知識のある人にメニューだけは教わろうと、以前から気になっていたストレッチを教えてくれるスタジオを訪ねました。
ストレッチメニューとポイントを教えてくれるのはストレッチング&コンディショニングトレーナーの井川明日香先生。ここからは幸子さんと一緒に「サッカーに役立つ親子で簡単にできるストレッチ」を見ていきましょう。
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※すべての種目は1回5秒、左右で行います。3セットくらいを目安にしましょう。
■けが予防に 太ももうらの筋肉を伸ばす
井川先生が最初に紹介してくれたのは、太もものうらの筋肉を伸ばすストレッチです。冬の寒さでこわばった体をほぐして、筋肉温度を上げるためには大きな筋肉を動かすのが一番です。ももの裏の筋肉を伸ばすことで血流が良くなり、体も温まります。
仰向けに寝転んだ子どもの片方のひざの上辺りを押さえます(写真の場合は左足を右手で押さえる)。もう片方の足はかかとより少し上を支えるようにして少しずつ上げます。
幸子「どれくらいの力で押さえつけたら良いんですか?」
井川「ストレッチというと伸びれば伸びるほど良い! 柔らかくするために強めにやる!っていう誤解があるんですけど、心地良いくらいでいいんです。押さえてあげるときはあくまでも補助でお子さんに確認しながら徐々に力を加えていくと良いですよ」
幸子「そうなんですね。痛いって言っても体がかたいと良くないからガマンしなさい!って言ってました・・・・・・」
親子でストレッチをする際に重要なのはコミュニケーション。顔が見える体勢の時はできるだけ目を合わせて、違和感がないか、どこまでなら心地良い、気持ちいいのかを確認しながら行いましょう。
■走るときに使う筋肉 お尻のストレッチ
次のメニューはお尻の筋肉を伸ばすストレッチです。お尻は走るためやボールを蹴る際の原動力になる大切な場所です。このストレッチもいきなり力を加えるのではなく、ゆっくり足を上げていくようにしましょう。
子どもは仰向けに寝ます。大人は片方の足を両手で持ち、ひざを持った方の手は手前に引くように、足首を持った手は押し出すようにして少しずつ力を加えます。反対の足はまっすぐ伸ばしますが、外側に広がらないように押さえてあげると良いでしょう。
ポイントは力の加え方です。ひざを持つ手は手前に、足首は奥に押し出すようにして力を加えながらお子さんの体に引きつけるように動かすと、足を曲げている方のお尻が効果的に伸ばせます。
幸子「これもゆっくりですね。他に気をつけることはありますか?」
井川「ストレッチすべてに言えることですが、呼吸を止めないでやってください。自然に流すようなイメージで呼吸をしながらリラックスすることが大切ですね」
■インサイドキックの動き 太もも内側のストレッチ
サッカーのインサイドキックの時に使う太ももの内側を伸ばすストレッチです。一人でもできますが、形だけマネして肝心のももの内側が伸びていないこともよくあります。お父さんお母さんがサポートすることで、正しい形で正しい場所を伸ばすことができます。
仰向けに寝て片方の足をがに股にして開きます。できるだけ90度に近い方がいいですが、痛いようなら無理をしてはいけません。大人は開いた足のひざの上と伸ばした足のももを軽く押さえて補助してあげてください。
両手で押さえるようにしてももの内側を伸ばしてあげてください。ひざが曲がりやすいように腰の辺りで足の裏を押さえてあげるとさらに効果的です。
幸子「そんなに時間はかからないけど、子どもと会話しながらできるのがいいですね。コミュニケーションにもなるかもしれません」
井川「これを毎日続けたら一日一回は親子の時間を持つことになりますよね。『前に比べて柔らかくなった』『あれ?今日はかたいぞ』とか体の様子や変化にも気がつけるようになります」
■力強く蹴り上げる 太ももの前のストレッチ
強いシュートを打つために必要な太もも前の筋肉。C.ロナウドのような弾丸シュートを打つためには筋肉の強さだけでなく柔らかさも必要です。
うつ伏せになって片足を90度に曲げます。大人はその逆の足を持って、ひざをお尻に近づけるようにして曲げます。
右手で押さえるのは足の付け根より少し上。左手は足の甲を持ってゆっくり曲げていきます。
幸子「それぞれサッカーの何のプレーに役立ちそうかわかっていてやると続けられそうですね」
井川「伸びている場所を意識してストレッチする方が効果的ですよ。ちゃんと伸びているか聞いて上げてくださいね」
■足首のけが予防にも ふくらはぎのストレッチ
子どもたちがもっとも痛めやすい足首のけが予防にもなるふくらはぎのストレッチです。ふくらはぎは心臓から送られてきた血液を送り返すポンプ機能を持つため「第二の心臓」とも言われています。
仰向けに寝て両足を伸ばした状態から片足を上げます、大人はひざが曲がらないように足を持って徐々に上げます。
補助する際は右手でつま先、左手でかかとを包み込むように持ちましょう。足首は固定したまま、足裏のつま先部分を軽く押して上げるとふくらはぎの裏がしっかり伸ばされます。
幸子「親子でやるストレッチをやるとしたらいつが良いとか時間やタイミングってあるんですか?」
井川「おうちでやるときはたとえば体が温まっているお風呂上がりとかがいいですね。もちろん朝の時間にゆとりがあれば、ゆっくり体を起こす意味で取り組んでも良いでしょう。大切なのはリラックスしながらストレッチをするということです」
幸子「練習前とかはどうですか?」
井川「いま紹介したパートナーストレッチは激しい運動をする直前には向きません。練習に行く前とか試合の日の朝に体をほぐす意味で行うのは良いですよ。練習前であれば、いまから紹介する一人でできるストレッチをやってみてください」
<<一人でできるストレッチ>>
■太もものストレッチ
まっすぐ立った状態から右足を一歩前に出します。このとき両手を足の付け根辺りにおきます。2,3秒したら今度は左足を前に踏み出して前に進む。また2,3秒静止します。
★OK!
★NG!
一歩前に出した足のつま先はなるべく上に向けます。かかとだけが地面に着いた状態です。悪い例では目線が下に落ち、猫背になって足も地面についてしまっています。
■お尻を伸ばすストレッチ
まっすぐ立った状態から片方の足を上げて、もう片方のひざの上に乗せます。両手は上げた方の足を持って、体に引き寄せるようにします。これも左右の足を入れ替えて前に進みながら行います。
★OK!
★NG!
目線に注意しましょう。まっすぐ前を向くのが正しい姿勢。目線が下に行くと背中が曲がってお尻が伸びません。
■体幹ストレッチ
まっすぐ立った状態から足を一歩前に出し、体をひねります。手は頭の後ろで組むようにして、上半身が一枚の板のように動くような意識を持ちましょう。つま先をしっかり前に向け前進しつつ、左右両サイドに体をひねります。
★OK!
★NG!
下半身は動かさず、つま先の向きも変えないで腰から上をひねりましょう。頭が下がっていると体幹を意識したストレッチにならないので、目の高さを変えないようにして体を左右にひねります。
※
今日教わったストレッチにはいくつかの効果があります。けが予防、またはけがをしてしまった子どものリハビリに、そして寒い冬に良いパフォーマンスを発揮するためのウォーミングアップ効果に。サッカーがよくわからない幸子さんにとっては、親子のコミュニケーションという点も、ぜひストレッチを続けてみたいと思う嬉しい効果でした。
パートナーストレッチで声を掛け合うこと、視線を合わせることは、反抗期とまでは行かなくても難しい年頃にさしかかった息子と関わり合う貴重な時間となりました。体に触れながらストレッチをすることも、体をリラックスさせる副交感神経に働きかける効果があります。
「けがへの心配」がきっかけではじまったストレッチへの興味・関心でしたが、「手当」という言葉は、手を当てること、触れることの治療効果が語源になっているという説もあります。サッカーがうまくなることはもちろん嬉しいことですが、幸子さんにとっては、触れ合うこと、コミュニケーションをとることができるストレッチが何より大切な時間になりました。
■加藤幸子さんのけがの保障に関する疑問
「ストレッチはけが予防にいいらしいけど、それでも突発的にけがをする可能性はあるわよね。年齢を増すたびに試合で接触プレーが多くなってきているし。打撲や捻挫はまだいいかもしれないけど、骨折とか大きなけがをしてしまったらどうしよう。井川先生も、ストレッチはけがのリスクを減らすことはできてもなくすことはできないと言っていた。けがしたときに安心な保険や共済はないかしら?」
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