サッカー練習メニュー
2024年4月 3日
チーム登録3年で奈良県制覇。スフォンダーレSS U-12が取り組む「ビルドアップトレーニング」の極意
2021年に奈良県協会にチーム登録し、3年で県大会優勝。全日本U-12選手権に出場したスフォンダーレSS。
全国大会では、強豪・ジェフ千葉を相手に引き分けに持ち込むなど、初出場ながら堂々とした戦いを披露した。
スフォンダーレSSは、常に複数の選択肢を持ちながら、後方からゲームを組み立て、主導権を握ることを目指している。
セレクションを実施しない街クラブにおいて、どのようにビルドアップの指導をしていくのか。チームを全国大会に導いた、依田章宏U-12コーチに実施してもらった。
ジュニアが実施するトレーニングだが、ジュニアユースから大人まで、すべての年代に必要な要素を、わかりやすく指導する様子は必見だ。(文・鈴木智之)
※この記事はCOACH UNITEDからの転載です
相手をギリギリまで観て判断する
依田コーチは「ポゼッションスタイルを実践する上で重要なことは、寄せてくる相手の矢印を、ボールを持っている選手の目線と体の向きでコントロールして、縦・横・斜めの複数の選択肢を作りながら、相手をギリギリまで観て判断することだと考えています」と述べる。
チームとして、4~5mのショートパスとダイレクトパスを多用するので、どうしてもミスが起こる。そこで「ミスをミスに見せない」(依田コーチ)リカバリーする技術もトレーニングし、スムーズなボール循環を目指していく。
前編では「体の向きと止める・蹴るの基礎技術の習得」をテーマに、「T字パストレーニング」を実施。4人1組になり、T字を描くように選手を配置し、外側の選手が、中央にいる選手に速いパスを出し、ボールを受けた選手は、時計回りに向きを変えてパスを出す。
依田コーチは「パスはボールを止めた足とは反対の足で出す」「大事にしてほしいのは、ボールを止める時にヘッドダウンしないこと」「止めて蹴る時に、軸足を引いて体の向きを作って、体重を乗せながら蹴ろう」とアドバイス。
また「観るものを増やして」「パススピードを上げよう」「ヘッドダウンしない」と声をかけ、「ボールを止めてから、蹴るまでのスピードをどれだけ短縮できるかが大事」と強調していた。
途中から「外の選手が、マーカーの左右どちらかに動く」というルールを追加。そうすることで、観ることへ意識を向けさせていく。
次に「中央の選手がパスの出し手に近寄り、ワンツーをする」というルールに変え、「パスの強弱とボールを呼び込むタイミングが大事」と声をかけていく。
「真ん中のスペースで受けるために、どういうパスを出せばタイミングが合うのか。そこを計算しよう」「左右のパスコースを見ることは絶対にやろう」といったアドバイスで、認知と判断に働きかけていった。
続いて、中央の受け手の選手がボールを浮かして、リカバリーするトレーニングに移行。設定は同じだが、最初のタッチでボールを浮かし、次のタッチでコントロールしてパスを出すというルールに変更し、一連のプレースピードを速くすることを求めていく。
懐を作り、パスの向きを変える
2つ目のトレーニングは「4対1ダイレクト」。3m四方のグリッドで4対1のボールポゼッション(ダイレクトパス)を実施。
「狭いスペースでも立ち位置を微調整して、足の角度を変えて、ギリギリまで相手を観ること。慌てずに、脱力しよう。目標はパスを20本繋ぐこと。懐を作って、どこにパスを出すか。パスをどちらの足につけるかを考えよう」
ここでは、懐を作ってパスの向きを変えることや、足の入れ替えをデモンストレーション。
「軸足を踏み込むと動けない。リラックスして、いい状態で待つことが大事。ヘッドダウンせず、全体が観える体の向きと目線を意識しよう」とアドバイスを送っていた。
前編最後のトレーニングは「3対1+3対1」。5m四方のグリッドを正方形になるように作り、攻撃と守備の選手を図のように配置する。同じ色同士で1つのグリッドに入り、3対1を実施。
グリッド内で5本以上パスをつなぐと、その場で継続するか、別のグリッドへ移動することができる。別のグリッドに移動した後は、そこでまた3対1を行い、制限時間内に20本以上パスを繋ぐことを目指す。
依田コーチは「相手のプレスを上回って、縦・横・斜めの選択肢を作るようにサポートしよう」「サポートする人は、ボール保持者の体の向きで次のプレーを予測する。そこを見逃さない」と声をかけていった。
ポイントは「ボールを持っていない人との関係をどれだけ作ることができるか」。選手同士が繋がることで、パスコースができ、ボール保持がしやすくなる。今回はジュニアが実施したが、中学、高校、大学、大人と、どのカテゴリーにおいても重要な要素だ。
トレーニング後、依田コーチは「ボールの循環を良くするためには、相手のプレースピードを上回ること。そして、周りのサポートとサポートする選手の体の向きが重要です」と総括し、「ボールの移動中に、複数の選択肢を持つため、観ることを重視して指導しています」と話した。
次回の後編では、試合に近い状況でのビルドアップトレーニングを行っていく。
【講師】依田章宏/
スフォンダーレサッカースクール(奈良県)で指導者としての活動をはじめ、「第47回全日本U-12サッカー選手権」、「第33回全日本U-12フットサル選手権大会 」では、チーム創立3年目で2つの全国大会出場に導いた。
「正しい認知,判断」「正確な止める蹴る」を重要視しフットサルトレーニングも取り入れて指導を行なっている。