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2024年7月12日

「3-3-1?」「2-3-2?」 8人制サッカーにおけるシステムの役割とビルドアップの基本

ジュニア年代で採用されている8人制サッカーでは、2-3-2や3-3-1など、2センターバックと3センターバックのシステムが主流だが、それぞれビルドアップの仕方が異なる。

サッカーの指導が学べる動画配信サービス「COACH UNITED ACADEMY」会員にアンケートをとると、「3-3-1から2-3-2にシステムを変更したところ、ポジショニングやボール運びが上手くできず、苦戦している」という声が寄せられた。

そこで今回はCOACH UNITED ACADEMYでおなじみ、筑波大学大学院でコーチングの研究を行い、指導を実践する内藤清志氏に「8人制サッカーの2センターバック時と3センターバック時におけるビルドアップの違いや特徴」を解説してもらった。

前編ではシステムの意義や立ち位置、ポジショナルプレーなどをキーワードに説明していく。(文・鈴木智之)

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システムは「味方がここにいてくれる」という役割分担のようなもの

内藤氏はまず「2センターバック、3センターバックとありますが、そもそもシステムとして組織を考えることが、なぜ必要なのかを整理したい」と話し、論を展開していく。

「8人制には3-3-1や2-3-2などのシステムがありますが、私はシステムを『安定して試合を進めるために必要な目印』と考えています。チームメイトが、基本的にはここにいてくれるという暗黙の了解のようなものです」

システムをベースに、各ポジションの役割を決めることで、再現性が生まれやすくなる。それによって攻撃や守備の仕方など、チームの中で約束事を決めやすくなるという利点がある。

「ただし、気をつけないといけないのが、日本人の国民性も関係しているのか、『A君のポジションはここだよ』と言ってしまうと、そこから動きづらくなってしまうこと。特に子どもたちは、指導者の言うことを素直に聞く子が多いので、そこのポジションの責任者ではなく、部門担当者ぐらいの認識がいいのかなと思います。自分の担当をしっかりとした上で、他のエリアにも力を貸してくれということです」

ビルドアップは後ろからパスを繋ぐのが目的ではないことを忘れない

8人制の場合、3センターバックの3-3-1と2センターバックの2-3-2が一般的だ。

内藤氏は3-3-1の場合、最終ラインの3人の中で、右センターバックの選手に対しては、「真ん中のセンターバックより右側、前にいる右サイドハーフの選手より後ろに位置して、その中でボール状況や相手との位置関係を見て、どの選手につくかを判断しよう」と、選手による判断の余白を残すような説明の仕方をしているという。

周囲との位置関係を踏まえた上でポジションをとることは、サッカーの基本だ。その前提があり、チームでプレーするための方法としてビルドアップがある。

「ビルドアップというと、最終ラインからボールをつなぐイメージがあると思います。それも間違いではありませんが、ビルドアップのトレーニングをするときは、ビルドアップをすることが目的になりすぎないようにしましょう。サッカーの目的はゴールを奪うことですからね」

最終ラインからボールをつなごうとすると、相手は前からプレスをかけにくる。その際に、相手選手が連動していないのであれば、プレスを掛けた選手の背後にスペースができていることが多い。

「相手が前線からプレスに来るのであれば、空いているスペースを使いながらゴールに向かえばいいわけです。ビルドアップをすることが目的になってしまうと、スペースがあるにも関わらず、最終ラインからボールをつなぐことに意識が行きがちです。指導者の方は、『ボールを失わないでゴールを目指す』という大枠の目的を忘れずにいてほしいと思います」

前にボールを運びやすい「1対0の位置」

ここからはビルドアップ時に必要な「立ち位置」について、説明が進んでいく。

「ビルドアップの指導をするときは、水が前に流れていく様子を例に説明しています。水が流れるときに、目の前に相手がいたら、せき止められてしまいます。そこで『前に相手がいないところに立ちましょう』といった表現をします」

目の前に相手がいない状況を、内藤氏は「1対0の位置」と表現する。

「自分のマークが見える『1対0』の位置にポジションを取ることで、ボールをもらったときに、技術的なミスをしなければ、スムーズに前進していくことができます」

前進の手段にはパスとドリブルがあるが、相手ゴール前に水を流すことをイメージすると、ドリブルではなくパスの方が、早く流すことができる。

「最終的なターゲットである前線の味方を見ながら、ボールを奪いにくる相手と正対しない位置(1対0の位置)に立つ。これが基本になります」

とはいえ、相手が人数を合わせて、同数でプレスをかけにくることもある。そこで大事なのが「プラス1」の選手を作ることだ。

相手に対して左右の位置に、ボールを持っていない味方がポジションをとることで、相手は守備の狙いを絞りにくくなり、「1対0」の状況を作りやすくなる。

「ただ人数が多いだけではなく、相手を挟み込むように、左右や背後のレーンにポジションを取ることが、ビルドアップの安定につながります」

COACH UNITED ACADEMYの講義では「ゴールキーパーが加わったときのビルドアップの仕方とポジショニング」を通じて「オセロのように、相手を挟む位置に立つと、1つ前のゾーンに進みやすくなる」「プラス1を作ることで、停留所のようにボールを運ぶポイントを作ることができる」といった表現を通じて、ビルドアップのメカニズムを解説していく。

これらはいわゆる「ポジショナルプレー」という考え方だが、内藤氏は「サッカーはボード上で起こることだけではありません。子どもたち自身が考えて、相手を見ながら選択したのであれば、その判断を考えついた過程を、指導者は楽しんでほしいと思います」とメッセージを送る。

ほかにも、ビルドアップの際に「場所を攻略する」「人を攻略する」といった考え方も説明している。ビルドアップの基本、原則を学びたい人にとって、非常に有益な動画になっているので、ぜひ繰り返し見ていただければと思う。

後編では、2センターバックと3センターバックの特徴と、トレーニング構築方法について解説を行っていく。

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【講師】内藤清志/
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。

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