運動能力
2015年4月 8日
「ひざをロック」でスピードアップ! サッカーで速く走るコツを最先端の技術で検証
『タニラダー』でおなじみ、ヴァンフォーレ甲府のフィジカル・コンディショニングコーチの谷真一郎さん。谷さんが所属するヴァンフォーレ甲府のアカデミーの選手たちが、株式会社スポレングス協力のもと、谷さんのメソッドを検証する取り組みを行いました。
スピードやアジリティを高めるためのトレーニング器具である、『タニラダー』の成果はどのぐらい出ているのでしょうか?最先端の器具を使い、測定したレポートをお届けします。
この日測定したのは、短距離のスプリントです。U-18とU-12の選手が参加して、2m往復ダッシュの測定を行いました。わずか2mの距離をダッシュし、目印のラインを越えて戻ってくるという動きを行います。まずは何も意識せずにダッシュを行います。次に、ラインを越えて戻ってくるときに"ひざをロックする"ことを意識して、ダッシュをします。タニラダーメソッドのポイントとなる、ひざをロックするか、しないかで、どれだけスピードに差があるのでしょうか? それを測定するのが、今回の狙いです。
○:ひざをロックした状態 ×:ひざをロックしない状態
測定に入る前に、なぜ距離が2mなのか、谷さんが説明してくれました。
「先ほど10mのスプリントを計測したのですが、ひざをロックする部分以外が、タイムに影響することがわかりました。走るフォームであったり、走りの技術でタイムに差が出るので、そうならないために距離を2mと短く設定しました」
2mは大人が大股で2歩ほどの距離です。選手たちはダッシュをしたらすぐにラインに差し掛かります。最初は「前方ダッシュ」。前方へ出ていき、ラインを越えたら、そのままの姿勢で背走します。次に「後方ダッシュ」。後方へ背走で走り、ラインを越えたら姿勢は崩さずに、前方へダッシュします。前方ダッシュと後方ダッシュそれぞれで、ひざをロックした状態とロックしない状態の2本ずつ測定します。
左:前方へダッシュして、後ろ向きにもどる
右:後ろ向きでダッシュして、前方にもどる
右:後ろ向きでダッシュして、前方にもどる
谷さんが選手たちにポイントを説明します。
「1本目のダッシュでラインを越えるときは、足のつま先をラインに垂直に向けてみよう(ひざをロックしない)。2本目は、ラインを越える方のひざをロックした状態で地面に着いてみよう。それと、拇指球に重心が乗る感覚も意識しようね」
実際に、選手たちが2mダッシュにチャレンジしていきます。その様子を見ていると、足のつま先をラインに垂直に向けて走る場合、ひざに重心がかかって潰れた状態になり、スピードが上がりません。逆にひざをロックした状態で走ると、ひざが潰れないので地面を力強く蹴ることができ、ダッシュのスピードも速いように見えます。さらには、ひざをロックしない場合、地面に足をとられて滑ってしまう選手も続出。後ろに重心がかかってしまうため、バランスが崩れやすくなっているのです。
ひざをロックしない状態だと、滑ってバランスが崩れてしまう
とはいえ、U-12の大半の選手たちはひざをロックした走り方が身についていて、スムーズに足を踏み変えてダッシュしています。なぜ、彼らはうまく走ることができているのでしょうか?谷さんは言います。
「U-12の選手たちは、ひざをロックするタニラダーのトレーニングを取り入れて、日々、この動きを身につけるトレーニングをしています。ゴールデンエイジと呼ばれる、神経系統が急激に伸びる時期に動きの基礎づくりをしているので、スムーズに足を運ぶことができていますよね」
ひざをしっかりロックして地面を蹴る
おもしろい現象がありました。測定時は良い走り方(ひざをロックする)と悪い走り方(ラインに対してつま先を垂直に向ける)の2パターンを行ったのですが、U-12の選手はタニラダーのトレーニングで習得した良い走り方が身についているので、悪い走り方がうまくできない子がたくさんいました。つまり、一度身についた身体の動かし方は、簡単には消し去ることができないのです。言い換えると、一度、良い身体の動かし方を身に付ければ、成長とともにうまく身体を使うことができますが、悪い身体の動かし方を身につけると、矯正するのはむずかしいのです。
測定の結果、良い走り方(ひざをロックする)と悪い走り方(ラインに対してつま先を垂直に向ける)の差は大きく開き、なかには2mで0.5秒も速くなる選手がいました。谷さんはこの結果について、こう語ります。
「ひざをロックして地面を蹴ると速く走れるというのが、数値ではっきりと出ました。ひざをロックしない状態で走ってバランスを崩して、足を滑らせている選手がいましたが、これと同じことが実際の試合で起きています。U-12年代で正しい走り方、身体の使い方を身につけさえすれば、相手に速く寄せに行くことも、すばやく進行方向を替えてスピードに乗ることもできます。これをゴールデンエイジの年代でいかにして身に付けるか。それが、その選手の将来の伸びに直結すると思います」
タイムを見ると、谷さんのメソッドでトレーニングを続けていたU-12の選手たちが、スピードアップの面で成長した姿を見て取ることができました。ジュニア年代で正しい身体の使い方を身につけることは、その先の選手としての成長に大きく影響していきます。数字の面からも、その有効性が再確認できた測定会でした。
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谷真一郎(たにしんいちろう)//
愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。
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