健康と食育
2018年11月12日
毎日のお風呂が身体を強くする!? パフォーマンスが上がる「正しい入浴と睡眠」の知識①
みなさんのお子さんは毎日入浴していますか? 湯船に入らずにシャワーだけだったり、サッと洗うカラスの行水だったりしませんか。子どもたちがそんなお風呂の入り方をしていたら要注意。それでは練習や試合の疲れは取れません。
入浴は体をきれいにするだけでなく良質な睡眠へ誘い、疲労を回復させてベストなパフォーマンスを導くもの。
今回はお風呂に入る効果を、数々のアスリートに入浴指導している「お風呂博士」こと(株)バスクリンの石川泰弘さんに教えてもらいました。
入浴は食事や睡眠と同じように、とっても大切なものなのです。子どものうちから正しい入浴の習慣を身に付けましょう。
(取材・文:前田陽子)
きちんと疲労回復すればサッカーする前よりコンディションUP。(写真は過去のサカイクキャンプです)
■最高のパフォーマンスのためには疲労回復が大事
プロスポーツ選手の多くが、入浴と睡眠にこだわっています。それは試合で最高のパフォーマンスを発揮するために疲労を回復すること、リカバリーすることが大事なことを理解しているから。
疲労回復に欠かせないのが、入浴と睡眠です。ですから、オリンピックの際に、選手村にはシャワーしかないので、エアー浴槽(ビニールでできていて空気を入れて膨らますお風呂)を持ち込んだ選手もいたそうです。
スポーツ選手の疲労といえば、主に筋肉の疲れです。筋肉が疲労すると、パフォーマンスが落ちます。それと同時に、脳が疲労を感知して筋肉の動きを抑えます(中枢性疲労)。アミノ酸が入ったゼリー飲料などを飲むことで動けるようになりますが、それは中枢性疲労を緩和するのが主な役割で、実際には身体の疲れが取れたわけではありません。ですから、試合や練習後にはきちんと疲労を取ることが大切なのです。
人間には、元の能力(コンディション)を超えるだけの回復力(=超回復)があり、運動後に正しく疲労を取ることができると、コンディションは疲労する前よりもアップします。疲労後にきちんと回復をすると、コンディションが右肩上がりでよくなるのです。
ただし、オーバートレーニングになると、きちんと疲労を回復することができずにコンディションは右肩下がりで悪くなります。もしもお子さんに次のような兆候が見られたらオーバートレーニングを疑って、練習量を見直したり、休むようにしましょう。
オーバートレーニングのチェック項目
□ 起床時の心拍数(脈拍数)が普段より5以上多い日が2、3日続く
(10~12歳のこどもで平均60~70)
□ トレーニングでいつもよりドキドキするタイミングが早い
(いつもならまだ疲れていないタイミングで息切れする など)
□ 急に痩せる、太るなどの体重変動
□ 食欲低下
□ 疲労感が抜けない
□ 疲れて以前こなせた練習ができないと本人が自覚する
疲労からの回復に必要なのは、エネルギー補給と良質な睡眠です。特に、糖を補給することで疲労の発現を遅らせることができます。様々なメディアで糖質制限などが謳われていますが、成長期の子どもたちにとって栄養バランスは大切です。バランスの良い食事をすることと、良質な睡眠をとることを日常化するようにしましょう。
■シャワーでは絶対得られない、バスタブに浸かることの効果
疲れていて面倒だったり、やりたいゲームがあったり、お風呂はサッと済ませたいこともあるかもしれません。どうしてシャワーだけでなく湯船につかることが大事なのでしょうか。
石川さんは、入浴によって次のようなことが身体に起きるのだと教えてくれました。
・浮力によって筋肉が緩み、リラクゼーション効果が得られる
・温熱によって血管が拡張し、血流が良くなる。内臓の働きを助け自律神経をコントロール
・水圧によって横隔膜が押し上げられ肺の容量が減少するので、空気を補うため呼吸が増え、心肺機能が高まる。
・水圧によって足にたまった血液が押し戻され、血液の循環を促進
上記のほか、温熱によって自律神経にも影響を及ぼします。熱めの湯につかると交感神経が優位になり、アクティブになります。ぬるめの湯では、副交感神経が優位になり、リラックスできます。ですから、疲労回復のためにはぬるめの湯につかるほうが効果的です。冬なら40℃、夏は38℃程度が目安。温度はあくまで目安であり自分がお湯に浸かって「気持ちいい」と感じる温度が適温です。
血液は1分ほどで体を1周します。熱めのお湯にサッとつかるだけでは、表面が温まるだけで深部体温は高まりませんし、冷えるのも早いのです。血流を良くすることが体温を上げるポイントなのでうっすらと汗が出てくるまで、10分程度浸かることをお勧めします。
ただし、個人差もありますので心拍数が上がってきたら、風呂を上がり休んでください。自分の身体を良く知ることが大事です。
また、お風呂に入れないときは洗面ボウルやタライにお湯を張って手だけ、足だけの部分浴をすると、入浴と同じように体温を上げてくれます。ちなみに手浴の方が、足浴にくらべ体が早く温まります。
※入浴によって体中の水分が減るので、入浴前に必ず水分を補給すること。水や麦茶など、糖分が多く含まれていない飲み物をコップ1杯程度飲みましょう。
体重の3%の水分が失われると運動能力や体温調整能力が低下します。水分補給は重要事項です。
続いては、主に美肌ケアに敏感なお母さんたちにもぜひ知ってほしい入浴剤の上手な使い方と保湿のゴールデンタイムについてお伝えします。
さらに、肌ケアは屋外スポーツをしているサッカー少年たちにも重要な理由も。 紫外線から守る以外の理由とは?