健康と食育

2019年1月22日

オスグッドは回避できない!? 世界共通の「子どものケガ」との向き合い方とは?

みなさんは、生活に支障が出るようなケガをしたことがありますか?

ケガをすると体を思うように動かせず、心は落ち込み、日々の生活に不安が出てしまいますよね。ケガをしてサッカーを楽しめなくなったり、辞めてしまう子どもも少なくありません。「サッカーにケガはつきもの」と言いますが、できることならケガをしないでプレーを楽しみたいでしょう。

では、どうしたらケガをしないようにできるのでしょう。また、ケガをしてしまったらどうすればいいのでしょうか。ケガをゼロにはできなくても、リスクを限りなく減らすことも、回復するために必要な心掛けもあるはずです。今回は、そういった「ケガとの向き合い方」について考えていきたいと思います。

お話を伺ったのは、FCバルセロナスペイン代表で理学療法士を務めていたエミリ・リカルトさん。

2018年7月に、アンドレス・イニエスタ選手と一緒にヴィッセル神戸に加わり、スポーツパフォーマンスアドバイザーとして活躍されています。ワールドカップ・ドイツ大会前に前十字靭帯断裂の大ケガを負ったシャビ・エルナンデス選手(元FCバルセロナ)を、本来は1年以上の治療が必要なところ、半年で治して大会に間に合わせたと選手の自伝でエミリさんへの感謝と共に語られています。そうしたケガとパフォーマンスの話にも触れていきます。
(取材・文:本田好伸)

イニエスタ選手のパーソナルトレーナーを務めるエミリ・リカルトさん

 

後編:ケガ予防&レベル向上にも期待!子どもの可能性を無限に広げる「他の運動」のススメ >>

■選手がケガをすることは本来はあり得ない

「土ではなく芝で練習することでケガを可能な限り回避できます。でも芝の長さやコンディションを維持できているかにもよるので、そういった原因を含めると足腰や膝のケガをゼロにはできません。スペインでも日本の子どもと同じようにケガをします」

「子どものケガ」という観点で考えた時に、エミリ・リカルトさんは、欧州とアジアの子どもに違いはないと言います。さらに、「サッカー用品は進化していますが、シューズが芝に適していないことが原因でケガが起こることもあります」と言うように、クリスティアーノ・ロナウド選手やリオネル・メッシ選手のようなスーパースターに憧れて、機能面を考慮しないでスパイクを選んでしまいがちと指摘する点は、世界共通かもしれません。

スペインの子どもたちも、日本の子どもと同じように、平日は学校が終わった後の時間を使って、週に2〜4回、1時間から1時間半(90分)のトレーニングをするそうです。

しかし、「インファンティル(U-14)までの子どもが2部練習をすることはないですし、学校の成績が悪ければ勉強をしないといけないこともあります」と、世界最高峰のサッカー強豪国では、過度なトレーニングで強化・育成することはあり得ないということです。

エミリさんは、適正なトレーニング時間を守り、しっかり休息する環境の中で過ごす子どもたちにとって「12歳くらいまでであれば、選手が足首やひざのケガをすることは本来あり得ないのです。だからスペインでは生活レベルで予防を促すこともありません」と言います。

相手と接触して、その衝撃で打撲や捻挫してしまうケガはあっても、肉離れのような筋肉系のトラブルはほとんど発症しないということです。

ただし、成長期の子どもが発症するひざの痛み「オスグッド」を防ぐことは難しいと言います。

「膝に運動負荷がかかることで痛みが悪化するので、(運動を制限して)大腿四頭筋やハムストリングをストレッチすることが治療法です。あとは骨と筋・腱の発達を待つしかありません。痛みが引くのに多くの場合半年以上は掛かりますね」

それでもひざの痛みを抱える子どもの数は日本ほど多くないようです。そう考えると、日常的に運動が過負荷になっていないか、痛みを悪化させないためにも子どもから痛みのサインが出ていないかなど、子どもを間近でサポートしてあげることが大切だと言えるでしょう。

そして、エミリさんが「体幹トレーニングより意味がある」と語る良い選手になるために必要なことを伺ったのでご紹介します。

次ページ:体幹トレーニングより意味があることとは?

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