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ケガ予防&レベル向上にも期待!子どもの可能性を無限に広げる「他の運動」のススメ

公開:2019年1月28日

キーワード:FCバルセロナアンドレス・イニエスタエミリ大坂なおみ膝の痛み運動能力間隔機能

ヴィッセル神戸のスポーツパフォーマンスアドバイザーであり、バルセロナやスペイン代表で理学療法士を務めていたエミリ・リカルトさんに話を伺った前編は「ケガとの向き合い方」に触れました。

子どもは本来的にケガをしない体を持っているけれど、ケガを避けることはできない──。

そうであるならば、ケガの予防や受傷後の向き合い方はとても大切なことでしょう。しかし、エミリさんと話をしているともう1つの大切なことに気がつきます。それは「ケガ予防」や「パフォーマンスアップ」を考える上で実践すべきことが、「他のスポーツをする」という共通の答えだったという点です。

他のスポーツ・運動がどうして子どもに良いのか。後編ではそんなテーマに踏み込んでいきます。

(取材・文:本田好伸)

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イニエスタ選手のパーソナルトレーナーを務めるエミリ・リカルトさん

 

<<前編:オスグッドは回避できない!? 世界共通の「子どものケガ」との向き合い方とは?

■「正しい体の使い方を覚える=子どもの可能性を知る」

前編では、エミリさんの「子どもがケガをすることは本来はあり得ない」という言葉が印象的でした。

一般的に「ケガ」というキーワードを挙げると、予防や回復、その後のパフォーマンスアップに焦点が当たります。ですが、本質的に子どもが「ケガをしない身体」の持ち主だということであれば、ケガとの向き合い方を考えるよりも、「どうやって能力を引き出すか(伸ばすか)」に注力できるはずです。

「サッカーの基本は『運動』です。そして運動とは、関節をより大きく使うこと。その意味で私たちは『走り方』も重要視しています。走り方や関節の使い方が悪いままスポーツをすると、過剰な負荷でケガのリスクが上がってしまいますから、身体の動かし方や走り方を重視して、トップ選手や子どもたちができるように取り組んでいます。これは、アヤックス(オランダ)が採り入れている走り方に注目するなかでやってきたことでもあります」

エミリさんは、バルセロナ時代から「身体の使い方」に注目したパフォーマンスアップの方法を考え、実践していたようです。育成に定評のあるオランダのアヤックスが何年も前から採用してきたのは、サッカーの技術の向上よりも、子どもの運動能力感覚機能を統合するコーディネーションといった分野の知見でした。

「正しい身体の使い方を覚える=ケガを予防する」ことであり、それは同時に「正しい身体の使い方を覚える=パフォーマンスがアップする」ことでもあると言えるでしょう。エミリさんもこう話します。

「子どもたちはまだ身体が出来上がっていないですから、サッカーだけではなくいろんなスポーツをしながら、いろんな体の動かし方を覚えて、本人の可能性を知ることが重要です」

前編でも少し触れましたが、スポーツ科学体系的なトレーニングが今ほど発達していなかった時代のアスリートたちは、今、世間で流行っているような方法を使わなくてもトップ選手になってきたわけです。

メキシコ代表として1986年のワールドカップに出場した、ハビエル・アギーレ元日本代表監督は野球経験者だったそうです。オランダの英雄、ヨハン・クライフさんはアヤックスのアカデミーに入ってからも夏のオフシーズンに野球を続けていたようですし、同じくオランダの名選手、マルコ・ファン・バステンさんは、国内でも指折りのテニス選手だったと言います。

こうした例は「サッカーだけがサッカーのレベルアップに必要なのではない」ことを教えてくれます。

■日本人は大坂なおみや錦織圭に学べる

体の使い方をまさに"体で覚える"ことがサッカーのパフォーマンスアップにつながりますが、他のスポーツや様々な運動をすることはそもそも「子どもの無限の可能性」を知るということでもあります。

最終的にどのスポーツが向いているのかを知るということ。柔道、野球、卓球、何でもいいです。個人スポーツと団体スポーツのどちらが適しているかを知ることもできます。親が決めたサッカーをやってきたけれど、本当は良いテニス選手になる可能性もあります。多くの選択肢の中から、本人が一番やりたいものを選ばせることが必要だと思います。『サッカーをしないといけない』という環境は危険です」とエミリさんは言います。

小さい頃からサッカー"だけ"に特化するのは、選択肢を限定してしまうということでした。

子どもがサッカーを楽しんでいるのであれば、パフォーマンスアップを促す意味でも、さらに他の可能性を模索するという意味でも、子どもが他の運動に触れる機会を作ってあげるといいのかもしれません。

「日本には良いモデルがたくさんあります。錦織圭選手や大坂なおみ選手といったテニスもそうですし、素晴らしい水泳選手や柔道家など、様々なスポーツの一流選手がいます。だから私はイニエスタと来日して、サッカーにおける子どもたちの例となるモデルを積み上げたいと思い、彼とプロジェクトを進めていきます」

ケガを防ぐこと。パフォーマンスを上げること。新しい可能性を知ること。「スポーツ」に限らず、あらゆる動きを含んだ「体を動かすこと」は、子どもの未来につながる大きな価値となりそうです。

<<前編:オスグッドは回避できない!? 世界共通の「子どものケガ」との向き合い方とは?

エミリ・リカルト
ヴィッセル神戸スポーツパフォーマンスアドバイザー
スペインのトップレベルの理学療法士で、2008年よりFCバルセロナの理学療法士に就任、アンドレス・イニエスタらトップ選手のケガからの復帰を支えた。このころからイニエスタのパーソナルトレーナーも務めている。
2013年のクラブ退団後は、スペイン代表のフィジカルコーチなどを歴任。
2018年イニエスタの神戸加入と共に来日し、同チームのスポーツパフォーマンスアドバイザーに就任した。Iniesta Methodologyプロジェクトの理事としてイニエスタのメソッドを子どもたちに伝える活動も行っている。

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取材・文:本田好伸

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