インタビュー

2018年11月13日

中村憲剛が語る、サッカーが上手くなるためにも「早いうちに挫折を経験したほうが良い」理由

38歳にしてもなお、衰えを知らないプレーで川崎フロンターレを牽引する中村憲剛選手。2016年にはJリーグMVP、2017年にはJ1リーグ優勝を勝ち取り、2018年も優勝争いを繰り広げるチームの主力として活躍しています。

中村選手とサカイクは「KENGOアカデミー」を通じて、子どもたちの育成に取り組むなど、育成理念に共感している間柄でもあります。そこで今回は、サカイクキャンプで学ぶことのできる「ライフスキル」をテーマにインタビューを敢行!

後編では「コミュニケーション」「チャレンジ」について、中村選手の考えを聞きました。(取材・文:鈴木智之、写真:平間喬)

↓↓ページ下部に中村憲剛選手のコメント動画付き

ライフスキルはサッカーでも社会生活の充実にも役に立つと語ってくれた中村憲剛選手 (C)平間喬

<<自分のプレーが通じない!「考えてプレーする」のきっかけとなった中学時代

■お互いに声をかけ合えば、もっと攻撃も守備もラクになるのに...

サッカーはチームスポーツなので、コミュニケーションは必要不可欠です。いまの子どもたちのサッカーを見ていると、技術的には僕たちが子どものころより上手い選手も多いですが、喋りながらプレーしている子が少ないですよね。いわゆる「コミュニケーション不足」の場面をよく目にします。自分がプレーしやすいように周りに声をかけることができれば、自分の負担は減り、他の仕事ができるようになり、その結果チームにプラスに働くことが多くなります。それがサッカーだと思います。自分がプレーしやすいように、周りを動かす、声をかけて動いてもらう。逆もしかり。僕はずっとそうしてきました。

周りの選手に動いてもらって、自分のところにボールが来るように仕向ける。パスコースを切らせて、自分のところでインターセプトする。声を出して、周りとコミュニケーションをとればそれができるのに、なぜ毎回自分ひとりでボールを追いかけるという、負荷のかかることをするのでしょうか。味方を動かせば、そんなに走らなくてもプレーできるのにって。

そうは言っても、こちらから一方的に「こう動け」と言っても、なかなか聞き入れてくれませんよね。それに「言わなくてもわかるだろう」と思っていても、実は全然わかっていなかったということもあります。そのために、そのつど話をして、「相手の考えを知り、自分の考えを伝える」それがコミュニケーションの基本だと思います。

相手の言うことを聞くこと、自分の考えを伝えること。コミュニケーションは双方向で成り立っています。例えばですが、僕は自分の子どもたちに「今日はなにかおもしろいことあった?」と聞いて、話をしてもらうようにしています。

考えを言葉にするトレーニングにもなりますし、思ったことを言葉にすること、自分の想いを相手に伝えられるようになることは、とても大切なことです。親がああだこうだ言いすぎると、子どもはすぐに喋ってくれなくなるので、なるべく子どもの方から話すように仕向けています。

■まずやってみよう、やってみた結果のミスは「成功までの過程」

じつは、自分のサッカー人生を振り返ったときに、実は「チャレンジしたな」と思ったことはありません。大学からプロに入るときも、Jリーガーになって日本代表に入るときも「チャレンジだ!」と気負うのではなく、「今までのプレーを評価されて呼ばれたんだから、いつもどおりやるだけ」と落ち着いて臨むことができていました。

チャレンジすることは大切ですが、そこに過度なプレッシャーを自分で背負い込む必要はないと思います。大人も子どもも、できない自分と向き合うのって嫌ですよね。だから、「チャレンジしようかな。でも失敗したらやだな」と尻込みしてしまうこともあります。

自分の子どもが怖がってチャレンジせず、尻込みをしていたら、僕は迷わず「やりなよ」と言います。「やってみれば、何ができて何ができないのかがわかるよね」って。チャレンジしてみて、できなかったら練習して、できるようになればいい。そこには成功も失敗もありません。あえて言うなら、チャレンジした結果のミスは「成功までの過程」です。

いまの子どもたちは、もしかしたら親御さんもそうかもしれませんが、失敗を過度に怖がっているのかなと思うことがあります。一度ミスしたら、失敗したら終わりではないのに...。そもそも失敗かどうかなんて、すぐにはわからないんですから。もしうまくいかなかったとしても、それは次に良くなるために大事なことなんです。

チャレンジしなければ、いまの自分の力も、なにができて、なにができないかもわからないままですよね。たとえチャレンジしてうまくいかなかったとしても、その経験は小さいうちにできるのであれば、しておいたほうがいいです。

■早いうちに挫折を経験したほうが良い理由

僕もそうですし、他のサッカー選手でも、小学生時代、中学生時代、高校時代にたくさんの失敗や挫折を経験してそこから這い上がってきた選手はたくさんいます。僕は中学時代、選抜にも選ばれなかったですし、小さな挫折はたくさんあります。

でも、それを「失敗」ととらえず、「やってみよう」とチャレンジし続けてきた結果、いまプロサッカー選手としてここにいます。だから、サカイクキャンプではみなさんもまずやってみましょうチャレンジせずに怖気づくのは最悪です。失敗してもいいんです。次にうまくできるようになれば!

早いうちに挫折を経験した人は、リバウンドメンタリティ(困難を跳ね返し、這い上がろうとする精神)を身につけ、そこから這い上がってきている分強いです。反対に、大人になるまでに失敗をせずに来てしまうと、どうしてダメなのか考えられなかったり、這い上がる術を持ち合わせていないため、一度の失敗、挫折が大きなダメージになってのし掛かってきます。そして、立ち直れずにフェイドアウトしてまうことも......。サッカー選手にも、そのケースはあります。

人間って、できない自分に向き合うのが怖いですよね。それは自分に期待しているからこそなんです。でも、勇気を持って「できない自分」を受け入れてみてください。そして「できない自分」を「できる自分」にするにはどうすればいいか考えましょう。そこからが本当の勝負の始まりです。だから、積極的にチャレンジしましょう。その気持ちを小学生時代から持ち続けることができれば、耐性がつくので、どんどん新たな経験をすることができると思います。

サッカーがうまくなるためにも、今後の社会生活をより充実させていく意味でも、ライフスキルはすごく大切です。サカイクキャンプに参加することで、その大切なライフスキルをサッカーを通じて身につけることができるのであれば、こんなに素晴らしいことはない。そう思います。

【動画】中村憲剛選手からサカイクキャンプに応援コメントをいただきました!

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