インタビュー
「え!? 今までのプレーが通じない!」小柄なドリブラー中村憲剛が考える力をつけるキッカケとなった部活での体験
公開:2018年11月 8日 更新:2023年6月30日
38歳にしてもなお、衰えを知らないプレーで川崎フロンターレを牽引する中村憲剛選手。2016年にはJリーグMVP、2017年にはJ1リーグ優勝を勝ち取り、2018年も優勝争いを繰り広げるチームの主力として活躍しています。
中村選手とサカイクは「KENGOアカデミー」を通じて、子どもたちの育成に取り組むなど、育成理念に共感している間柄でもあります。そこで今回は、サカイクキャンプで学ぶことのできる「ライフスキル」をテーマにインタビューを敢行!
前編では「考える力」について、サッカー界有数のサッカーインテリジェンスを持つ、中村選手の考えを聞きました。(取材・文:鈴木智之、写真:平間喬)
↓↓ページ下部に中村憲剛選手のコメント動画付き↓↓
サッカー界有数のサッカーインテリジェンスを持つ中村憲剛選手 (C)平間喬
■自分のプレーが通じない! 「考えてプレーする」のきっかけとなった中学時代
サッカーを始めた小学生の頃の僕は、体は小さかったですが、自分の思い描いたプレーがたくさんできたし、本当に楽しくボールを蹴っていました。それが、中学校に上がると周りとの体格差が出始め、今までできていたプレーが急に通用しなくなりました。そのときに「どうすればいいんだ?」と考え始めたのが、サッカーを通じて『考えてプレーする』ようになったきっかけです。小学生時代はドリブラーで、全国大会にも出るほどのレベルのチームで活躍していたのに、中学校に入ると体格差で自分のプレーができない。これはすごく悩みました。
そこで考えたのが「パスも出せるようにならなければいけない」ということでした。そこから試行錯誤して、少しずつできることが増えていきました。いま振り返ると、中学時代に考えてプレーしてきたことが、いまにつながる原点になっています。もちろん、当時は将来につながるぞ! なんてことは考えず、毎日必死に練習していただけですけどね(笑)
考える力はサッカーはもちろん、日常生活でも大切です。人間、毎日何かしら考えていますよね。何時に起きるか、何を食べるか、何を勉強するか......。小学生でも、日々考えて生活していると思います。大事なのは、24時間をどう過ごすか。小学生もプロサッカー選手も、1日に与えられた時間は24時間。みんな同じです。僕はプロサッカー選手なので、すべての時間を「サッカーがうまくなるため」に使おうと心がけています。
たとえば、練習後の体のケアや、練習後にすぐ食事を摂ることなどは強制ではないので、しなくてもいいんです。でも、もっとサッカーがうまくなりたい、より良い選手になりたいので、そのために自分ができることは怠りません。性格的に、自分がやれることをサボって、マイナスになるのが嫌なんですね。それは両親にそういう言葉をかけられて育った影響も大きいのですが、やるべきことはきちんとやる。そうしないと、何に対してもだらしない人間になってしまいますから。
■サッカーで身につけた集中力は勉強でも活かせる
中学、高校時代は勉強もちゃんとしていました。授業中に寝たこともほとんどなかったと思います。やったことはすべて自分に返ってきます。「今日は勉強しなくていいや」「練習しなくていいや」と思ってサボったことは、すべて自分に返ってくる。だからこそ、自分で考えて決断することが大切で、それはサッカーも勉強も日常生活も、すべて同じだと思います。
いまの子どもたちは、僕が子どもの頃と比べて忙しいですよね。学校の授業も6時間目まである日も多く、うちの小学4年生の息子も、16時ごろに帰ってきて宿題をして、休む間もなくサッカーの練習に行って......と体力的に大変な生活を送っているなと、見ていて思います。そこで「楽をしろ」とは言いませんが、勉強の時間とサッカーの時間をどう効率よく守るか。それも考える力です。サッカーをやることで集中力も高まりますし、培った集中力は勉強にも活きると思います。自分の子どもにも「勉強もしっかりやらないと、サッカーもうまくならないよ」と言っています。これは経験上、自信を持って言えることです。
■16年のプロ経験でわかった伸びる選手の特徴
僕はプロサッカー選手として16年間プレーし、たくさんの選手と接してきました。いまではチーム最年長として、多くの若手選手と話をしています。その中で、かなりの精度で「伸びる選手」と「伸びない選手」の見分けがつくようになってきました。それは「人の話をしっかり聞ける選手は伸びる」ということです。
いま38歳なので、20歳の選手と比べると、18年の経験値の差があります。その中で気づいたこと、とくにプレー面について、いろいろなアドバイスをします。(大島)僚太もそうだし、守田(英正)や、今日は田中碧という20歳の選手に、練習後に「こうすればもっと良いプレーができるし、チームのプラスになる」という話をしました。
僕のアドバイスをどう受け取るかはその選手次第ですが、言われたことを自分なりに考えて、次の日の練習、また次の日の練習と意識して取り組むことで、できることが増えるし、選手としてのレベルも上がっていきます。その姿を見て、僕は「前に言ったことができるようになったな。じゃあ、次は別のアドバイスをしよう」という形で、段階的に話しをして引き上げていきます。そうやって選手個人のレベルが上がることは、チーム力がアップすることにつながるので、積極的にしています。まあ、気づいたことがあると、言わずにはいられないという自分の性格もあるのですが(笑)
■アドバイスも「自分で考えて」受け入れる
アドバイスを聞いたときに、すべてを受け入れる必要はないと思います。僕自身、先輩からアドバイスをされたときに、全部を聞き入れていたわけではありません。でも、なるほどなと思ったことは進んで取り入れて、自分のものにしてきました。それも「考える力」だと思います。
反対に、それができない選手は、ある程度のところで成長が止まってしまうように思います。実際に、そういう選手をたくさん見てきました。アドバイスをしても、聞いていない、聞き入れない。結果、プレーが改善されず、選手としても伸びていかない。これはサッカー選手だけでなく、大人にも子どもにも当てはまると思います。
サッカーを通じて、考える力やコミュニケーション能力は伸ばすことはできますし、それはサッカー以外の場面でも役に立つと思うので、ぜひサカイクキャンプで大好きなサッカーというスポーツを通じて、いろいろなライフスキルを身につけてもらえればと思っています。
【動画】中村憲剛選手からサカイクキャンプに応援コメントをいただきました!
サカイクキャンプ2022夏 参加者募集中!
テーマは「年代ごとに身に付けておきたい攻撃・守備の原理原則」
親元を離れた非日常体験を通してサッカーも、人間としても成長するキャンプです。