サッカー豆知識
2023年10月17日
医師が解説! サッカー少年少女の足が臭い理由と今日からできる足のにおい対策
「子どもの足のにおいが酷い」というのは、スポーツをする子どもの親の困りごとですよね。サカイクのSNSでも約40%の方が悩んでいることがわかり、自宅でどんな対応をしているかアンケートを行ったところ、さまざまな対処法が寄せられました。
前回はその対処法について医学的に効果があるのかを医師の桑満おさむ先生にお答えいただきました。そして今回は、それらの根拠となる「足のにおいの原因と対策」について、根本からお話しいただきます。
記事の最後に、医師がおすすめする足のにおい対策をご紹介します。今すぐできるのでぜひ実践してみてください。
(取材・文:小林博子)
<<前編:これって正しいの? サカイク読者が実践している足のにおい対策について医師に聞いた
■足のにおいの原因は? 医学的な根拠を解説
お子さんの足のにおい対策に日々奮闘されている親御さんが多いとのこと。すでに成人していますが、私も2人の子どもを持つ父親なので、そのお気持ちはとてもよくわかります。
今回は私が前回の記事でお答えした足のにおい対策の効果の根拠を医学的なエビデンスをもとに解説します。
サカイク読者も約40%が悩んでいるサッカー少年少女の足のにおい
■足のにおいの原因は「イソ吉草酸
いきなり難しい言葉を出してしまいましたが、ずばり、足の臭さを作り出す成分の名前は「イソ吉草酸(いそきちそうさん)」です。名前は覚えなくても大丈夫! この成分の濃度が悪臭の強さに比例するという論文が発表されています。
つまり、イソ吉草酸が濃くなると、足が臭くなるというわけ。濃くなる原因は、ばい菌の繁殖です。足のばい菌が増える理由は汗や古い角質、水虫など。水虫になっている場合は医療の力で治療するとして、ご家庭でできる対処法は汗と古い角質ということがわかります。
■足は菌が繁殖しやすい
ではなぜ、サッカーキッズは足がキョーレツに臭うのでしょうか。その理由の1つはトレーニングシューズやスパイクにあり、蒸れやすく熱がこもりやすいから。シューズの中はばい菌が大好きな環境なのです。
とはいえ汗をかかなくするのは無理なので、汗をかいてもばい菌が繁殖しにくい環境にしておくこと=古い角質や汚れを極力なくすことが対処法といえます。
前回の記事で「爪を短く切る」「ゴシゴシ洗うのはNG」「ブラシでこすらなくてもOK」などとお伝えしたのはそんな理由からです。
トレーニングシューズやスパイクは群れやすく熱がこもりやすいので、ばい菌が繁殖しやすい
■「腰から下」はばい菌の生息地
ちなみに、医療の世界では床に近づくほど「菌」が多いというのが常識で、腰から下はばい菌が多いとされています。ドラマや映画で観る手術前のシーンでは、医師が手を消毒後に両腕を上げて歩いていますよね。腰より下に手を下げないようにしているからです。
それゆえ、シューズの中は蒸れやすいのはもちろん、そもそも床に隣接する足はばい菌が多いのです。臭くなりやすい原因はそれもあります。
■足のにおいの発信源は、ずばり「足先」
足が臭うといっても、足の中でも特に臭いやすい=「ばい菌が繁殖しやすい」ところがあり、それは足先。足の裏全体と思われがちですが、実はかかとや土踏まずあたりより、足指のにおいが強いんです。
理由は汗が一番多く出るのが足の指だから。ヒトの足の汗は圧がかかることで出ます。これはもともと、足の指でも何かを掴むことがあったことに由来しているそう。適度な水分=汗ですべりにくくするためです。走ったり蹴ったり止まったりというサッカーの一連の動作で酷使される足の指は、常にプッシュされていますよね。だから、足指から汗の量が多くなりがちです。
さらに、ソックスの中で足の指と指が密着していることで、他の部位より蒸れます。ばい菌が繁殖する条件が整ってしまいますよね。
前回の記事で「指の間を丁寧に洗う」「厚手のソックスや5本指ソックス」を推奨したのはこれが理由です。
■医療に頼る方法もあります
なお、あまりにも足の汗が多く日常生活がままならないほどの人は「原発製足蹠多汗症」である場合も。最近、手汗が多い人のための薬のテレビCMが流れていますが、その足バージョンもあります。その場合は医師の診断のもと、塗り薬を処方してもらうことも可能ではあります。
■家庭にある「消毒用アルコール」が足臭対策に
そもそも菌が繁殖しないために、足にある菌を減らしておくことが有効です。ばい菌が繁殖しないようにするには、除菌や殺菌をして元となる菌の母数を減らすことが効果的なのです。
前回の記事で洗った後のシューズや靴下は「高温で乾かす」などは除菌・殺菌のためですが、もっとおすすめなのは、コロナ禍を経て一家に1つは必ず常備しているであろう消毒用アルコールジェルを足に使うことです。これにより繁殖のもととなる菌自体が除菌されるからです。
スプレーや液体よりジェル状のものが足にも塗りやすく、またシート状のものよりもコスパよく毎日使えるでしょう。足にしっかりと塗り込んでください。なお、これから購入する場合はアルコール濃度が70%以上のものを選んでください。
■医師がおすすめ! 今日からできる足のにおい対策
まとめると、みなさんに実践してもらいたい足のにおい対策は以下になります。どれも特別なものは使わず、ちょっとの手間で実践できることばかり。ぜひ今日からやってみてください。
①朝、ソックスやシューズを履く前
・消毒用アルコールジェルを足指まわりを中心に塗る
・爪はよく着れる爪切りで肌に傷がつかないよう切っておく(ラウンドカット推奨)
※前日夜の入浴後にアルコール除菌ができていれば、朝はマストではありません
②練習や試合後、帰宅前
・履いていたソックスを脱ぎ、足を濡れタオルやウエットティッシュで拭く
・汗をよく吸うソックスに履き替える
※友達の洗濯物を間違えて持ち帰ってしまわないように注意してください。各家庭にいる「菌」はそれぞれなので、他の家庭の菌を家に入れてしまうと、菌の種類が増え、繁殖する母体が多くなることに繋がります。
③帰宅後
【お風呂で】
・殺菌成分を配合した薬用の石鹸やボディソープを使う
・足の指まわりを中心に、きめ細かな泡を使ってやさしくしっかり洗う
・できれば爪の間も泡が行き届くように洗う
※固いスポンジを使うより、手の指で洗うほうがベター。泡ででてくるポンプ式のボディソープなら、理想的な泡上になっているので子どもには特におすすめ。
【お風呂あがり】
・消毒用アルコールジェルを足指まわりを中心に塗る
・床の上を裸足で歩かない
④洗濯とシューズの管理編
【洗濯】
・帰宅後すぐ、子どもに予洗いをしてもらう
・ソックスは裏返して洗う
・高温で乾かせる乾燥機で乾かす
・カビが気になる場合は酸素系漂白剤を使う
【シューズの管理】
・同じシューズを毎日履かない
■食べ物まで制限する必要はなし
ちなみに、におい対策として汗や尿を臭くする食材(ニンニクやアスパラガス、タマネギなど)を控えた方がいい? と思う親御さんもいらっしゃるかもしれませんがそこまでしなくても大丈夫。
成長期のお子さんは特に、好きなものをバランスよく食べさせてあげてください。
■母親が息子のにおいを「臭い」と感じるのは本能
最後にトリビア的なお話をしますが、母親が息子のにおいを臭いと感じるのは、実は生物学的にも説明がつく現象です。女性は近親相姦を避けるため、異性の血縁者のにおいに敏感になるのだとか。娘が父親のにおいを嫌がりがちなのも同じ理由です。
もしかしたら我が子の匂いは家族以外にはそこまでではないのかもしれないと思うと、少しだけ心が軽くなりませんか?
お母さんたちが「息子の足が臭い!」と話すとき、深刻な臭さに悩みつつも、笑い話として盛り上がりますよね。その表情は、実は困っているというよりは幸せそうにお見受けします。そんな幸せなお悩みだからこそ、ご紹介した対策で上手に付き合っていきましょう。
桑満おさむ
五本木クリニック 院長
泌尿器科専門医。1997年に東京都目黒区に一般医療と美容医療の総合クリニックである五本木クリニックを開院。著書に『"意識高い系"がハマる「ニセ医学」が危ない! 』(扶桑社)があるほか、自信のYouTube「桑満おさむちゃんネル」やTwitterなどで、日々情報発信を続けている。