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腹筋がグロインペイン症候群を引きおこす? 元スペイン名門のトレーナーに聞く、そけい部の痛みの原因と症状改善

公開:2018年2月 8日 更新:2020年3月24日

キーワード:いい姿勢けがそけい部エスパニョールグロインペイン症候群スペイン腹筋

サッカーをする子どもたちにとって、怪我はその楽しみを奪う厄介な"敵"です。なかでも、成長期においてはオスグッド(ヒザの痛み)や、シーバー病(かかとの痛み)、あるいはグロインペイン症候群(股関節の痛み)といった、スポーツ障害に悩まされる子どもが多くいます。

なぜ、そのような障害が引き起こるのか。ならないためにはどうすればいいのか。スペインの強豪RCDエスパニョールや、Jリーグのベガルタ仙台でトレーナーを務めていたアスレティック・トレーナーの松井真弥さんに、スポーツ障害の痛みの原因と、予防について話を伺いました。

これまでヒザの痛みかかとの痛みについてお送りしましたが、今回は「日本人の方が重症化しがち」だという「そけい部の痛み」についてお送りします。

(取材・文:原山裕平)

グロインペイン症候群を防ぐ
トレーニング動画はこちら

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(写真はU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2017より)

<<かかとが痛い!を予防して一瞬のスピードを上げる。元スペイン1部のトレーナーが提唱する「足指の使い方」

■グロインペイン症候群は日本人の方が重症化しやすい?

そけい部といわれる股関節周辺に痛みをもたらすグロインペイン症候群は、サッカー選手にとって厄介な怪我として知られています。

これは子どもだけではなく、プロの選手も苦しめられるもので、元日本代表の中田英寿さんや、現日本代表キャプテンの長谷部誠選手も、一時期この怪我によって離脱を余儀なくされました。

グロインペイン症候群の原因は、やはり筋肉のダメージによるものです。松井さんによれば、屈筋と伸筋のバランスが崩れていることが、一番の問題なのだそうです。

「筋肉には曲げる筋肉(屈筋)と伸ばす筋肉(伸筋)があるのですが、一般的に屈筋優位で使っている選手が多い。そうすると、身体の前側の筋肉ばかりを使って動いていることになり、そこで身体全体のバランスが崩れてそけい部に痛みが起きるのです」

長くスペインでトレーナーを務めた経験のある松井さんによるとグロインペインの症状は、スペイン人と日本人とでは異なると言います。

日本人のほうが厄介ですね。それは、やっぱり姿勢から来ていると思うんですよ。スペイン人もそけい部や内転筋の付着部に炎症を起こすこともあるのですが、骨盤が上がった状態で動いているので、そこまで痛みは多岐に渡らない事が多かったです。でも、日本人の場合は骨盤が後傾して下がっているので痛みの要因が複雑なんです。股関節の周辺だけでなく、下腹部が痛くなったりとスペイン人に比べると症状が重くなります。その原因は立証されていませんが、骨盤の後ろが落ちた状態で動いていることが原因ではないかと僕は考えています」

その意味でグロインペイン症候群も、オスグッドやシーバー病と同様に、正しい姿勢を身に付けることが、改善の道へとつながります。屈筋だけではなく、伸筋を使って、筋肉にかかる負担を分散させることが重要なポイントなのです。

■腹筋するほど猫背になる

「グロインペインになったら腹筋を止めさせている」
松井さんは、そうアドバイスを送ります。

腹筋をやればやるほど、前側の筋肉が硬くなって、猫背になってしまうんですよ。そうすると、どうしても身体の前面の筋肉に負担がかかります。大事なのは強くするんじゃなくて、全身を緩めてあげること。緩めてあげたら足でふんばる力が軽減されるので、負荷が減少するんです。実際に、グロインペイン症候群になりかけた子どもが腹筋を止めることで、その症状が改善したケースがあります。オスグッドやシーバー病のテーマの時にも言いましたが、身体全体の動きを改善することが、グロインペイン症候群の治療にもつながってくるのです」

意識するのは、やはり骨盤、背中、お尻の動きになります。前面ばかりではなく、背面の筋肉を上手く使ってあげることで、筋肉の負担は分散されます。とりわけ重要なのは骨盤の動きで、グロインペイン症候群の改善方法で一番有効なエクササイズは、骨盤を連動させてあげる事なのだそうです。

「骨盤を上下に動かしてあげるんです。硬くなった骨盤のつまりを取ってあげるイメージですね。そうすると股関節の動きがスムーズになって、負担はだいぶ改善させると思います」

参照:骨盤と背中の動きを柔らかくするエクササイズ(2ページ目)

■痛みの原因は「痛い箇所」ではなく別のところにある

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(骨盤が立っている欧米人は日本人に比べてそけい部痛の症状が軽い事が多いそう)

グロインペイン症候群はその程度にもよりますが、痛みを抱えながらもプレーする選手もいて、手術に至るケースも少なくはありません。とはいえ、同じようにプレーを続けていけば、負担は積み重なり、悪化する可能性は高くなります。

その場合はもちろん休養を取ることが求められますが、やりながら治していく選択を取るのであれば、骨盤を上げることや、伸筋を意識し、正しい姿勢でプレーする意識を持つことが何より重要なのです。

松井さんは痛みの原因は、痛い箇所そのものにあるのではなく、身体全体にあると考えています。

身体はひとつにつながっているわけですから、一部分だけを修正すればというわけではありません。原因はそこにはなく、別のところにある。その根本の部分を治すことで、個々の負担が減るという考え方なんです」

オスグット、シーバー病、そしてグロインペインなど、足に負担のかかるサッカーを続けるうえで、こうしたスポーツ障害は十分に起こりうるものです。しかし、そこには確実に原因があるのも確か。姿勢を変え、意識を変えることで、十分に避けられるものでもあるのです。

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松井真弥(まつい・しんや)
アスレティック・トレーナー。2010年より10年間、スペインのリーガ・エスパニョーラ1部の名門RCDエスパニョールでトレーナーを務める。帰国後は2011年から14年までJリーグのベガルタ仙台でトレーナーとして活動。現在は千葉市にある鍋島整形外科にて身体のケアや身体の使い方によるケガ減少の指導を行っている。不定期で走り方教室を開催中。
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文:原山裕平、写真:新井賢一(U-12ジュニアワールドチャレンジ2017)

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