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中村憲剛の「KENGOアカデミー」
「どこに行くかではなく、そこで何をするか」中学生になるサッカー少年へ中村憲剛が"贈る言葉"
公開:2021年2月18日
中村憲剛さんが読者の質問に答える「KENGOアカデミー」。今回は4月に中学生になるみなさんに憲剛さんの“贈る言葉”です。
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【質問】
今、クラブチームに所属しているのですが、同じチームの友達はほとんどが4月から中学校の部活に入るようです。クラブを選ぶべきか、友達が多い部活に入るべきか……。アドバイスをお願いします。
【憲剛さんの回答】
質問ありがとう!
まさかKENGOアカデミーで進路の相談を受けるとは思ってなかったけど(笑)。僕なりのチーム選びに対する考え方を話していきたいと思います。
■あまりいい思い出のなかった中学時代
まず、質問に答える前に僕自身の経験を話していきます。
正直言って、中学時代はあまりいい思い出がありません。
小学校までは地元の上手な子が集まっている少年団で活躍して、全国大会にも出場しました。体は小さかったですが、すばしっこくて、テクニックもあったので、試合に出ればドリブルで何人も抜いてゴールを決めていました。地元で「中村憲剛」と言えば、ちょっとした有名選手でした。
ただ、僕が所属していたチームは少年団までしかなくて、中学校になったら別のチームに行かなければいけませんでした。
たぶん今だったらJクラブのセレクションとかを受けていたかもしれないけど、僕が小学校のときはJリーグも開幕していなかった。
中学校に上がるとき、僕には2つの選択肢がありました。
1.中学校で部活に入る。2.新設されるクラブチームに入る。
僕が選んだのは「2」でした。そこまで深く考えたわけではなくて、近隣地域の友達がみんな行くと言っていたから何となく決めたのです。それが大きな間違いだったと気付くのに、時間はかかりませんでした。
新設されたクラブチームなので、当然ですが全員1年生。対戦相手は3年生ばかりなので、試合をしても全く歯が立ちません。しかも、僕は背が低かった。中学校に入学する時点で136センチしかありませんでした。中学生ともなれば、160センチ以上の選手もいます。20〜30センチも大きいので、大人と子供の差です。
ボールを持ったら吹っ飛ばされるし、ドリブルで抜いても追い付かれる。ボコボコにやられました。大好きだったサッカーが全く楽しくなくなっていました。
そして半年が経った時、クラブを辞めました。サッカーから距離を置いて、しばらくはパソコン研究会に所属していました。
中2からサッカー部に入ったものの、僕の中学校は強くなかったので、全国大会なんて夢のまた夢でした。1回だけ市の大会で優勝したのが最高成績です。
■どこに行くかではなく、そこで何をするか
つまり、僕は中学校の進路選択で「失敗」した人間です。でも、だからこそアドバイスできることもあると思います。
それは「自分が何をしたいのか?」を、しっかり考えてほしいということ。
・プロ選手になりたいのか。・友達と一緒にサッカーがしたいのか。・勉強をしっかりと頑張りたいのか。
自分の中で優先順位をハッキリとさせることが、自分がどこに行くかを決めるうえでは、とても大事です。
ただ、究極を言えば、どこに行ったとしても何とかなります。サッカーがうまくなるかを決めるのは、どこのチームに入ったかではなく、入ったチームで自分が何をするかだと思うからです。
人に何とかしてもらおうという考え方では、どこに行ったとしてもうまくはなりません。そうじゃなくて、自分がうまくなるために何をするかを考え抜いて行動する。
プロの世界でもそうです。才能がある選手や能力がある選手が毎年入ってきます。でもその中でレギュラーのポジションをつかんで、日本代表に選ばれる選手というのは、自分で自分を高められる選手です。
強いチームや有名なチームに入ったとしても、そこで満足してしまう選手は伸びていきません。逆に言えば、それほど強くないチームでも、自分次第でうまくなることはできる。
・自分の長所と短所を分析する。・テーマを持って練習する。・サッカーを勉強する
僕は中学校までは“プロになれるはずがない選手”でした。だけど、そこから自分がうまくなるために何が必要かを考えてきたから今があります。
どこに行くかではなく、そこで何をするか。中学校の3年間でしっかりと考えて高めてきた選手と、あまり考えずに何となくやっていた選手では全く違った結果になるはずです。
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中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ。東京都小平市出身。小学生時代に府ロクサッカークラブでサッカーを始め、都立久留米高校(現・東京都立東久留米総合高校)、中央大学を経て03年に川崎フロンターレ加入。06年10月、日本代表デビュー。国際Aマッチ68試合出場6得点(2020年7月現在)。05年から19年までJリーグ優秀選手賞を15回連続受賞。Jリーグベストイレブン8回選出。16年に史上最年長で受賞したJリーグMVPはギネス世界記録に認定されている。
構成:北健一郎 協力:ケンプランニング
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