イベントレポート
2020年9月 7日
GKキャンプレポート(後編)味方へ指示を出す3つのポイントと「伝える気持ち」の表現
2020年8月に関東と関西で開催し、大好評を得た「サカイクGKキャンプ」。好評につき、9月には「通いでのGKクリニック」の開催も決定しました。そこで、メインコーチを務める澤村公康さん(元サンフレッチェ広島、ロアッソ熊本等)に、8月のGKキャンプを振り返っていただきました。後編では、コミュニケーションの重要性や保護者の接し方などについて、話は進んでいきます。(インタビュー・記事:鈴木智之)
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――サカイクのGKキャンプを通じて、ジュニア年代のGKの傾向をどのように感じましたか?
子どもたちに限らないことだと思いますが、味方とコミュニケーションをとって守ることが苦手な選手が多い印象を受けました。たとえば、前にいる選手にパスを出し、リターンパスを受けてシュートを打つ「ポストシュート」という練習があります。味方DFがいない状態だと、シュートに対して良い反応をするのですが、「リターンパスをした選手がDFになる」というルールにすると、シュート対応がうまくいかないことが多いのです。
――本来ならば、守備側の選手が増えるので、守りやすくなるはずですよね?
はい。でもそこで「味方に指示を出さないといけない」という気持ちが強くなり、シュート対応が遅れてしまう。これはジュニアに限らず、日本のGKの現状だと思います。子どもたちに「DFが増えるので、有利になるはずなのに、どうして守りにくくなるんだろう?」と質問をすると「味方にどんな指示を出せばいいかがわからない」という声が多く聞かれました。
――普段の所属チームのトレーニングでは、教わっていなんですね。
そこで「味方とのコミュニケーションには何がある?」という部分から入り、アイコンタクト、ボディランゲージ、声の3種類があって、ちゃんと伝えるためにはタイミングとボリュームと質が大事。なかでも意識してほしいのが「自分はこれを伝えたいんだ」という気持ちを表現することです。そのような話をすると、選手同士で声が出始めるようになりました。「4対2+GK」のトレーニングでは、DF2人とGKが話し合って「3人でゴールを守ろう」と、コミュニケーションが活発になりました。
――味方とコミュニケーションをとりながらゴールキーピングができると、GK自身も受け身ではなく、積極的にプレーできますよね。
はい。しかしながら、試合中に味方の名前を呼ばず、コミュニケーションをとらない。自己発信ができない選手が多いのが、日本のGKの現状だと思います。普段から「仲間と一緒にゴールを守る」という意識が乏しいので、リーダーシップを発揮することもなく、身につかないのではないでしょうか。僕は「GKは、守備のリーダーであるべき」と思っているので、自分から声を出して、味方を動かし、ゴールを守る。そして、味方が良いプレーをしたら、名前を呼んで「ナイス!」と褒めよう。そうやって、みんなでゴールを守るんだよということは、繰り返し伝えています。
――キャンプを通じて、コミュニケーション面での成長は見られましたか?
キャンプは3日間でしたが、最後のゲーム形式の練習では、味方が良いプレーをしたら「●●、ナイス!」と言うだけでなく、「ステップが良かった」「ボールに向かって行く姿勢が良かった」と、理由もちゃんと言えるようになったんです。そうなったら、コーチが言うことはなにもありません。選手同士で高めあうような、すごく良い雰囲気でした。
<関東キャンプ最終日の様子>
――澤村さんのトレーニングは熱量がすごく、練習も面白いので、子どもたちは集中して取り組めるのではないでしょうか?
アシスタントコーチが「トレーニングでフロントダイビングとローリングダウンしかやってないのに、何でダイビングができちゃうんですか?」と言っていました。それほど、子ども達のパフォーマンスはみるみる変わっていきました。なぜかと言うと、ひとつは普段からできている動作が出たこと。もうひとつは、ローリングダウンの延長がダイビングなので、自然とそういうプレーが出る雰囲気になっていたこと。コーチが教えることだけがすべてではなくて、トレーニングのオーガナイズや雰囲気で、選手が持っている能力、パフォーマンスを出させることも大切なんです。
――選手の能力を引き出すためには、コーチが言って「やらせる」練習ではなく、選手自らが「やりたい」と前向きに取り組むことが必要です。
そう思います。子どもたちには、積極的、前向きな気持ちでトレーニングに参加してほしかったので、「シュートストップの練習をするから、この設定でルールを3つ加えていいよ」と言って、グループでディスカッションをさせることもありました。すると「自陣からのゴールは3点」「GKとDFの連携が良かったら1点」といったように、たくさん意見が出ました。練習自体もすごく盛り上がって、こちらが「そろそろ終わりにする?」と聞いたら「まだやれます!」「もっとやらせてください!」と言うほどでした。練習を「やらされている」のではなく「やりたい」という気持ちになってくれたのだと思います。
――保護者の声はどうでしたか?
熱心にずっと見ていたお父さんが、最後に「3日間のキャンプで子どもが変わりました」と言ってくれました。他の保護者からは「2泊3日でこの内容は、正直(金額的に)安いと思う」と言われました。保護者の方はすごく熱心で、子どもたちの様子をビデオに撮っていました。ただ、その映像が子どもへのダメ出しの原因になってはいけない。それはお伝えしたいです。映像を見て、「このプレーが良かった」とポジティブな気持ちになればいいですが、ネガティブな気分にさせる必要はありません。僕は、保護者の方にいつも言っています。「親という漢字に、口はついていません。ついているのは見るという字です。だから、お子さんを見守ってあげてください」と。子どもたちは、「上手くなりたい」という気持ちを持っています。それを周りの大人があれこれ言うことで、消してしまうことがあります。
――最後に、今後のGKキャンプに向けて一言お願いします。
GKの技術や戦術はもちろん大切ですが、その土台となる、前向きで積極的な気持ち、仲間とコミュニケーションをとるマインドを持っていないと、上に積み上げられる量が限られてしまいます。GKキャンプでは、まず選手としての土台を大きくして、その上で技術、戦術を積み上げられるような指導内容を組んでいます。ぜひ一度参加して、「GKって、こんなに楽しいポジションなんだ」「奥が深いんだな」と感じてくれたらうれしいです。
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