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GKキャンプレポート(前編)なぜ参加者した子どもたち全員が「GKがもっと楽しくなったのか?」

公開:2020年9月 4日 更新:2022年5月18日

キーワード:ゴールキーパー澤村公康

2020年8月に関東と関西で開催し、大好評を得た「サカイクGKキャンプ」。参加者アンケートの回答者全員が「GKがもっと楽しくなった!」と答えるなど、GKの新たな魅力を知る機会となったようです。好評につき、9月には「通いでのGKクリニック」の開催も決定しました。そこで、メインコーチを務める澤村公康さん(元サンフレッチェ広島、ロアッソ熊本等)に、8月のGKキャンプを振り返り、GK指導について大切なことについて、話をうかがいました。(インタビュー・記事:鈴木智之)

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――2020年8月に開催された、サカイクでは初となる、澤村コーチのGKキャンプ(2泊3日)ですが、どのようなことをしたのでしょうか?

初日はレクチャーから入りました。「GKとは、○○なポジションである」をテーマに、子どもたちとコーチが一緒になってディスカッションをし、「フィールドプレイヤーと違い、ピッチに立てるGKはひとりだけなので、自信と誇りを持ってプレーしよう」という話をしました。そして、実際の試合でGKがシュートストップした映像を見せて、どこが良かったか、試合の状況、点差はどうだったのか、このシュートストップが試合の流れにどのような影響を及ぼしたのかといった話もしました。

――キャンプには、小学校4~6年生が参加しましたが、GKの役割などについて、どれほど理解していたのでしょうか?

熱心で意欲的な子が参加してくれたので、みんな知識はたくさん持っていました。でも、それを自分の中で留めるだけで、プレーに活かしきれていない印象を受けました。小学生なので仕方のないことではありますが、頭でっかちではなく、心でっかちになってほしいと思い、子どもたちと接していました。具体的には、味方がゴールしているのに喜ばず、点を決められても悔しさがない。キャンプの3日間で伝えたのも、「味方がゴールしたのだから喜ぼう」「ゴールされないように、みんなで協力しよう」ということです。子どもたちの感情表現や自己発信の部分が乏しいと感じたので、そこは僕以外のコーチ陣も意識しました。

――プレー以外のライフスキルの部分で、子どもたちに変化は見られましたか?

2日目の午前練習の後に、おもしろいことがありました。その回のトレーニングは、子どもたちが集中していて、とても良い雰囲気の中、質の高い取り組みができていました。暑さもあったので、60分程トレーニングをしたところで「すごく良い取り組みをしてくれたので、午前中の練習はこれで終わろう」と言いました。すると、ほとんどの子どもが「澤村コーチ、もう少し練習したいです!」と言ってきました。そのうちの一人が「もっと練習したい人?」と呼びかけたら、一人をのぞいて全員が手を挙げました。手を挙げなかった子は「僕は疲れた。もう無理」と言いました。その様子を見て、僕は「そう言っている子もいるから、ゆっくり休んで午後の練習に備えよう」と言って、午前の練習はそこで終わりました。

――みんなが「もっとやりたい」と言っているのに、「もう無理」と言えるのはすごいですね。

そうなんです。「もう無理」と言った子は、周りの雰囲気に流されるのではなく、ちゃんと自己主張をしました。それは、午前の練習ですべてを出し切ったからこその「もう無理」だったと思います。その自己主張は、指導現場においてすごく良いことで、たとえば海外の選手たちは、それをしっかりできると思うんです。「僕の今の状況はこうだから、ここで止めます」と。それは一見、ネガティブに受け止められるかも知れないけど、正直に言うことができれば、ケガをすることも減るだろうし、オーバートレーニングも減る。結果として長くサッカーをすることができて、上達します。

――日本には同調圧力が強く、空気を乱してはいけないという考えがあります。

おそらく、海外には「空気を読む」という言葉はないと思います。「僕はこう思う」と主語がしっかりありますよね。サッカーの中で自己主張することは、とても重要です。それがコミュニケーションにもつながります。キャンプに来た子たちが、「もう無理」と自己主張できたのは、コーチ陣が威圧的にトレーニングさせていなかったからでもあると思います。それはコーチ陣のファインプレーですね。サッカーはコーチが子どもたちに言ってやらせるのものではなく、自分でやるものですから。

――ちなみに、午前練習の最後に、全員が「もっとやりたい」と言ったらどうしましたか?

やめさせていました。というのも、それ以上やるとけが人が出ると思ったからです。GKの練習って、相当な運動量なんです。たくさんボールを蹴るし、FWやDFとしてもプレーします。キャッチングやフロントダイビングなど、飛んだり、跳ねたり、起き上がったりと、かなりのエネルギーを消耗します。午後の練習に良いコンディションで臨んでほしかったので、「集中してできたので、ここで終わろう!と言いました。

――たしかに、試合中はGKの運動量は多くはありませんが、GKだけのトレーニングは、かなり高い強度で行われています。そのキツさを理解していない、GK経験のない指導者は多いような気がします。

高強度の有酸素運動をしているようなものですからね。午後のトレーニングも、すごく良い取り組みができました。午前中に「もう無理」と言っていた子も、最後のゲーム形式のトレーニングでは、失点したら「もう1回やらせてください!」と積極的に言ってきましたから。

【夏休み関東・関西開催】元JクラブGKコーチによる「GKスペシャルキャンプ」>>

――技術面のトレーニングは、どのようなことをしたのでしょうか?

参加者を4~5人のグループに分けて、それぞれにコーチをつけました。アシスタントコーチは僕の教え子の大学生なのですが、彼らがフロントダイビングなどのデモンストレーションを本気でやってくれるんです。お兄さんたちの本気のプレーを見たら、子どもたちの目つきが一気に変わります。大人が本気を見せると、子どももそれに応えてくれるんですよね。初日は基礎的な正面付近のキャッチング、ステッピング、ローリングダウン、フロントダイビングをやって、2日目の午前中は基礎技術をやってから、シュート対応をしました。

――アシスタントコーチがたくさんいると、子どもたちにきめ細かい指導ができますね。

コーチはシュート役などで、プレーに参加します。シュートを決めると、子どもたちが「コーチ、大人げない!」とか言ってくるわけです(笑)。そこで、「だったら、『僕は小学生なので、強いシュートは打たないでください』って、背中に張り紙しておけばいいじゃん(笑)」とか、ワイワイ言いながら楽しんでいます。グラウンドの中に入ったら、大人も子どもも関係ないですから。僕たちは、子どもを子ども扱いしないで、いちサッカー選手として見ています。

――澤村さんの指導を見ていると、子どもにも大学生にも、プロ選手にも、全員に同じ接し方をしていますよね?

そこを変える必要は一切ないと思います。グラウンドに入ったら、年齢もカテゴリーも関係なく、一人のGKなのですから。それは僕が指導した、大迫敬介もシュミット・ダニエルも、キャンプに来てくれた子も同じです。ただ、子どもたちは、知識も経験も少ないぶん、エラーが出るのは当たり前。そこを我々コーチが修正すると同時に、彼ら自身で修正する能力を身につけさせてあげる。それが大事なことだと思っています。

後編に続く

【夏休み関東・関西開催】元JクラブGKコーチによる「GKスペシャルキャンプ」>>

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