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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
負けん気が強いあまり暴言や暴力に及ぶ息子の問題
公開:2017年3月22日
チームメイトの失敗を許せず暴言を吐く小2の息子に手を焼くサッカーパパ。このままでは仲間外れになる可能性もありますし、親として悩みますよね。相手を思いやる心を持つことをどう伝えたらよいのでしょうか。
自身もサッカー少年少女の母として子育てした経験を持つ、教育・スポーツジャーナリストの島沢優子が、読者の悩みに答える『蹴球子育てのツボ』。 今回は、負けん気の強さがマイナスに作用している子どもへの向き合い方についてお答えします。(文 島沢優子)
<サッカーパパからの相談>
小学2年生男子の父親です。息子が、練習の際に仲間がミスをしたり思い通りにいかないとイライラしたり、暴言をはいたりします。
最近のチームの公式試合では、経験不足の仲間がミスをして失点したらその子の足を蹴りました。
その都度注意をしますが、勝ち負けにこだわる分、納得しません。普段の並びの順番も常に一番にこだわります。「一番でなくてもいいんだよ」とは伝えているのですが。
本当は親ではなく、第三者から注意してもらうのがいいとは思いますが、相手を思いやる心と伝え方をどう指導したらよいのか悩んでいます。
スクールのコーチから「レベルが上がってくると、周りの子の協力が必要になってくるので心の部分をレベルアップできるように」とのアドバイスは受けていますが、チームで指導者にお願いするにはどうしたらいいでしょうか?
このままではさらに仲間外れになってしまのではと心配です。
■正面から向き合い、対話を重ねて親の気持ちを伝える
お子さんに、手を焼いておられるようですね。短い文面から、お父さんの複雑な気持ちが伝わります。
お子さんのもつ負けん気を歓迎したい気持ちもありながら、コーチから「心のレベルアップを」と言われて悩んでいらっしゃる。加えて、暴言を吐かれたり、ミスしただけで足を蹴られた子の親御さんたちの手前、なんとかしなくてはという気持ちもあるかもしれません。
ここでは、三つのことをアドバイスします。
ひとつ目は、まず親として息子さんの「癇癪持ち」という一面にしっかり向き合いましょう。
可愛いわが子の負の側面に、正面から向き合うのは非常に難しいことです。そのうえ「普段の並びの順番も常に一番にこだわる」ほど、少々こだわりの強いお子さんのようです。
ただし、こだわりが強いことは悪いことではありません。良いほうに解釈すると、自分でこうだとこだわって考えたことはとことんやり切る特性を持っている。ということは、サッカーだけでなく、さまざまな方面で力を伸ばせる可能性があるということ。ぜひ、彼の「こだわり力」を伸ばして上げてください。
とはいえ、今回はマイナスの方向にこだわり力が影響しているので、ここは親御さんが頑張って向き合いましょう。小さいときにきちんとやっておけば、後々の親子の信頼関係にもつながりますから。
まず、「その都度注意をした」とありますが、どのようなお話しをされたでしょうか? もし、「もう二度とするな!いいな!」みたいなことで終わっていたら、以下のことに取り組んでください。
「仲間がミスをしたり思い通りのいかないとイライラしたり、暴言をはいたんだよね?」
「仲間がミスをして失点したら、その子の足を蹴ったんだよね?」
できれば最初に「君がやったことって、こういうことだよね?」と実際にやってしまったことを確認します。
そのあとに彼の気持ちを聴きながら、お父さんの気持ちや意見を言う。さらに、その意見に対してどう思うかを尋ねる。例えば、このような「対話」を繰り返します。
「こういうのって、フェアプレーなのかな?」
違うと言えば「どうしてフェアじゃないことをやってしまったのかな?」と理由を尋ねます。ミスに腹が立ったとか、さまざまなことを話すでしょう。
そこで、お父さんの気持ちや意見を話してください。「だからって普通、仲間を蹴ったりしないよ」などという一般論ではなく「お父さん(私)はこう感じた」「こう思う」」という「I(アイ)メッセージ」です。
「お父さんは、君が暴言を吐いたり、仲間の脚を蹴ったことはすごく残念だし、すごく悲しい」
「お父さんが、蹴られた子どもだったら、すごく辛くなると思う」
そのようなことです。「勝ち負けにこだわるぶん、納得しません」とありますが、勝ち負けにこだわるなら仲間割れをするのはマイナスであることを伝えてください。
■チームプレーヤーとしてどう振る舞うべきか考えさせる
二つ目は、本人にサッカーというスポーツをどうとらえているかを尋ねてください。上記の対話の続きです。
「サッカーはミスするスポーツだし、チームでやるスポーツだよね?」
「君はミスしないの?」
「本当に勝ちたいのに、試合中に罵り合ったり、選手が味方に暴力をふるったりするチームが勝てると思う? いい試合ができると思う?」
「いいチームになるために、これからどうしたらいいと思う?」
そのような問いかけをして、最終的に、自分がどのような態度でプレーすべきかを具体的に考えさせてください。
もう二度とするな! で終わってしまう家庭は多いようですが、それでは単に「我慢すればいいんでしょ」という居直りや「もうこんなチーム、どうでもいいや」という捨て鉢な考え方につながります。
ストレスをためるのではなく、暴言の代りに「ドンマイ!」と言えるようになる。
暴力の代わりに「切り替えよう」と言って肩をたたける、もしくはその子のミスをカバーしようと動く。
そんなふうに変化できるのが、学びのゴールです。そこまで考えさせることが必要です。
文:島沢優子
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