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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
送迎する親は1時間待ち。監督の話が長すぎて困る問題
公開:2018年10月10日
練習や試合後の話が長く、終了時間が1時間以上オーバーする監督。土日に働いているワーキングマザーだから仕事の合間をぬって迎えに行くこともあるけど、さすがに1時間オーバーはちょっと......、でも監督には言えない。どうすれば? というご相談をいただきました。
週末であれば試合のあとに家族で外食したり、予定を入れているご家庭もありますよね。みなさんならこんな時どうしますか?
スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、今回もジャーナリストとしての知見やご自身の経験を通してアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)
※小学生の集中力は大人に比べて長くない。 写真は過去のサカイクキャンプのものです。質問者及び質問内容とは関係ありません
<<サッカーを嫌々やっているふうな息子をやめさせるべきか問題
<サッカーママからの相談>
いつも参考にさせていただいております。
子どもはもう小学生でないのですがご相談させてください。
息子は小学生のときより地元のクラブチームに入っており、中学になった今も同じクラブのジュニアユースにいます。
悩みというのは練習時や試合後の終わりの時間を守っていただけないことです。
子どもたちには時間厳守とかなり厳しく指導されていますが、終わりの時刻を長引かせているのはいつも監督、コーチの話が原因です。
一生懸命指導してくれている気持ちはよくわかります。
しかし、お迎え時間を1時間以上過ぎても終わらないなんて日常茶飯事なのです。
その間、保護者はいつ終わるかわからないため、その場所でひたすら待たされています。
20分くらいの時間が経過してしまうのは仕方ないと思うのですが、1時間はないのでは? と毎回思っていますが誰も監督には言えません。
私も土日仕事をしていて、仕事の合間をぬってお迎えに行く場合もあります。兄弟が別のスポーツや習い事をしている関係で次の予定もある親御さんもいます。自転車で行っている場合は予定よりも1時間以上も帰ってこなければ、途中で事故にでもあっているのかと本当に気が気ではありません。
こんなに終わり時間にけじめがなく、だらだらしていて良いチームになるのでしょうか?
また、監督にはどのようにしたら、わかっていただけるのでしょうか?
長くなりましたが、ご意見聞かせていただけますと幸いです。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
私の親としての経験や取材した実態から見ると、優秀な指導者ほど話は簡潔で短いです。
彼らは、中高生が長時間にわたる話に集中できないし、大事なことが伝わりづらいことを知っています。それを考慮して、例えば「大事なことは二つだけ」と要点をナンバーリングして伝えたりします。
■良い指導者は伝えたい内容を整理して話す
そのほかの良い例は、試合の後は「楽しかったね」とか、「惜しかったね」「頑張ったね」と話してすぐに帰らせる。次回の練習前に「先週の試合はこうだったね。解決するために、今日はこんな練習をやってみよう」と言って始めます。
そのような良い指導者に共通するのは、サッカーをやる「主体」、つまり主人公が選手だと理解していることです。
練習や試合のあと、指導者自身に言いたいことがたくさんあっても、そこを冷静に整理します。プレーして疲れている子どもたちに長々と話しても、プラスにならないとわかっています。
「お母さん、もう迎えに来て待ってるだろうな。待たせたら悪いなあ」
「お腹が空いた。早く終わらないかな」
教え子たちがそんなことを感じるだろうと想像しています。
自分で学んでコーチングを高めていく人がよく言うのは「選手(子ども)からすれば」とか「選手(子ども)にとっては」という言葉。
たとえば、こんな話です。
「選手からすれば、試合後に1時間も話を聴かされるのは苦痛ですよね。アイシングしたり栄養補給したほうがいいに決まっています」
「選手にとっては、意味の無い時間ですよね」
■伝え方を知らないからどんどん話が長くなる
ところが、相談された方のチームの監督さんはそれとは逆です。選手ではなく、ご自分が主人公なのかもしれません。自分は「情熱を持った指導者」と考えているから、その熱い気持ちを伝えているだけです。きっと、ご自分を教えたコーチも長々と、同じことを繰り返していたのでしょう。それを何の疑いもなく、踏襲しています。
「俺もこんなに熱い気持ちをもっている。俺についてこい!」 そんな感覚です。
もうひとつは、単に正しい伝え方を知らないタイプです。
「選手が主人公」「選手ファーストで私は指導しています」とおっしゃる方にも時折、選手の状況を見ずに、長く話をする人がいらっしゃいます。
あれも言わなきゃ、これも言わなきゃと、出てきたものをすべて伝えてしまいます。目についたことをすべて伝える、アドバイスするのがコーチの役目だと考えているからです。
「あ、それと、君らに言いたいことはもうひとつあって......」と、どんどん長くなります。それは話をする前に、ご自分のなかで整理されていないからです。
そのような「伝えなきゃ監督」も熱血監督も、どちらも悪気はありません。相談者様がおっしゃるように、子どもたちを思うからこそ、きっと話が長くなるのでしょう。
ただ、コーチングの勉強不足であることは否めません。もしくは、「選手は黙って監督の話を聞くのは当然だ」とどこかで思っているのかもしれません。
しかも、彼らだけが特別ではありません。
プロ選手がいるクラブの下部チーム(高校生)のコーチが、練習開始前の話がすごく長くて困るという相談を受けたことがあります。ご自分の思いだけで話し続けるので、あれよあれよと言う間に時間が経過します。
ご自分でもそんなに長く話をしている感覚はないのでしょう。そのコーチの口癖は「もうこんな時間か」だったそうです。
そのためアップした体は冷え切ってしまい、選手たちは「せっかくアップしたのに」と辛そうだった、と。このチームに選手のケガや故障が多いのは「監督の話が長いせいだ」と、相談された保護者はおっしゃっていました。
このように、長話をする指導者はどこにもいるので、彼らがそれを改めようという意識になりづらい環境です。
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