蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~
2021年8月18日
低学年なのにメンバー固定。意見したいが「面倒な親認定」されたくない問題
上手い子や昔から所属していた子が優先的にポジションを決められ、下の学年の上手い子も優先的に出される状況。
まだ低学年だからポジションやメンバーを固定せず、みんなを出場させてあげてほしいと思うけど、親の意見をクラブに言ってもいい? 子どもがチームに居づらくならない? というご相談をいただきました。
今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんに子どもが楽しくサッカーを続けるためのサポートをアドバイスします。
(文:島沢優子)
<<仲間に心無い言葉を投げられる息子。親はどう介入すべきか問題
<サッカーママからのご相談>
今年からクラブチームへ入会した低学年(8歳)です。
新学年になるタイミングでチームへ加入し練習試合がありますが、出場機会が平等にないように感じます。
上手い子や昔から所属していた子が優先的にポジションを決められ、下の学年の上手い子も優先的に出される状況なので、うちの子の出場機会が少ないです。
また試合に同行するコーチも毎回違い、指導者間でもやり方にも差があるように思います。
まだ、低学年ですしポジションやメンバーも固定せず、せめて同学年は力量関係なく出して欲しいと思うのですが、こういった保護者の意見はクラブチーム側へ言っても良いのでしょうか?
親が余計なことをして子どもがチームに居づらくなるのが心配です。通える範囲にはサッカーができる場所(チーム、スクールともに)ないので、クラブに面倒な親認定されたくないのですが、いいやり方があればアドバイスいただきたいです。
<島沢さんのアドバイス>
ご相談ありがとうございます。
お母さんのように「出場機会が平等でないのはおかしい」と気づかれる方がもっと増えるといいのですが、まだまだ少ないのが現状のようです。周囲に相談できるママ友も多くないでしょうし、孤独感を持たれているのではないでしょうか。
■全員出してほしい、という希望はごもっとも
8歳で「低学年」とあるので、小学2年生でしょうか。お母さんが書いている「低学年ですし、ポジションやメンバーも固定せずせめて同(この)学年は力関係なく出して欲しい」という希望は、もっともだと思います。どんな性質のクラブなのかはわかりかねますが、コーチの方々の育成への理解がもしかしたら少し乏しいチームなのかもしれません。
とはいえ「試合に同行するコーチも毎回違い、指導者間でもやり方にも差がある」というのは、例えば地域の少年団や町クラブで、指導者が他に職業をもったボランティアコーチで編成されているのなら、致し方ないかなとも思います。よもや有償のコーチを揃えた民間クラブだったとしても、運営は一部の大規模クラブ以外は経営が厳しい場合が多いです。コーチをやりくりするうえで全体を見ていることも少なくありません。
■複数のコーチに見てもらうことは選手にとってメリットになることもある
ただ、いつも同じコーチで、指導方法も同じの良さもありますが、選手を見る目やサッカーに対する考え方が偏ってしまうデメリットもあります。反対に、複数のコーチがみて違う方法で指導することは、一件継続性に欠けるかのように見えます。が、実は、さまざまな価値観にふれたり異なる指導を経験できるのは、選手にとってメリットになることもあります。
例えば「利き足を磨け」と言うコーチがいる一方で、「左右蹴れるようになれ」と促すコーチがいる。
でも、それを選ぶのは選手です。
そして、選ぶ力をつける際は、サッカーコーチもサポートとしますが、その前に家庭の子育てがものを言います。
■クラブに意見するというより、訪ねる形で切り出してみては
次に、書かれている質問に答えさせてください。
「こういった保護者の意見はクラブチーム側へ言っても良いのでしょうか?」
意見するというよりも、「今の少年サッカーは、平等に出場させるというか、低学年は特にそんな傾向だと聞きますが、どんなふうに考えていらっしゃいますか?」と育成の方針を尋ねてみてはいかがでしょうか?
育成の方針を聞いたうえで、日本サッカー協会が示している育成方針(スライド7枚目「将来に向けて この年代にふさわしいゲーム環境を」)などをホームページから抜き出してコピーしたものを渡してはどうでしょうか。そこで初めて「保護者としては全員に試合に出場する機会を設けてほしい。せめて低学年のうちは試合を平等に経験できるよう配慮してほしい」と希望を伝えます。
■コーチの回答がどんなものでも、息子さんが他のことをしたいと言うまでは通わせて
そうした場合、クラブ側の答えがどんなものになるでしょうか。「そうですね。まだ低学年だから全員出場させますね」と言ってもらえるとありがたいですね。しかしながら、それとは逆になる確率のほうが高そうです。
例えば、私がこれまで似たようなケースで保護者がクラブ側に問い合わせた場合、もらった答えは以下のようなものです。
「コーチの判断でやっていることなので、嫌だったらやめてください」
「スポーツは実力の世界なので、試合に出たいなら上手くなれとしか言えません」
「公式戦は勝たなくてはいけないので選ばれた子だけしか出られませんが、練習試合はほぼ同じ時間出られるよう調整します」
こういった回答だった場合は、他のチームを探してみる選択肢もあります。ただし、通える範囲にはサッカーができる場所がここ以外にないとのこと。息子さんが試合の出場機会がなくてもサッカーを続けたいと言うのであれば、お母さんが妥協するしかないかもしれません。息子さんがサッカーに飽きたり、他のことをやりたいと言い出すまでは通わせてあげたほうがいいかと思います。
■サッカー、スポーツに限らず何をするかを選ぶのは子ども自身
しかしながら、日本に小学生ができるスポーツはサッカー以外にもたくさんあります。例えばスケートボードなど、さまざまな競技があることは、オリンピックやパラリンピックが教えてくれますね。よって息子さんに「他のスポーツに興味が出てきたら、言ってね。お母さんも調べたり、協力するよ」と言っておいてもいいかと思います。
さらにいえば、スポーツに限らず、他にもたくさんあります。楽器、歌唱、囲碁や将棋、絵画といった芸術。加えて、スポーツの部類ですがダンス教室に通う子どもも増えています。さまざまな選択肢を与えてあげるのは親だとしても、そこから自分で選ぶのは子どもだという理解のもと、一緒に考えてあげてください。
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