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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

走り切れなかった息子に「手の施しようがない」 選手を見限るコーチどうなの問題

公開:2019年7月17日

キーワード:インターバル走コーチスポーツ少年団子どもの権利小学生暴力暴言走り切れない

練習最後のインターバル走で走り切れなかった息子。練習後に子どもと自分(親)に直接「ここで頑張れないなら、もう手の施しようがない」とコーチが言い放った。

自分もD級ライセンスを持っているのだけど、子どもを見限る発言をすることはどうなの? チームの監督と代表にクレームを入れたけど、親としてまずい対応だった? とのご相談をいただきました。 みなさんならこんな時どうしますか。

今回も、スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、ご自身の体験と数々の取材活動で得た知見をもとに、ご相談者さまにアドバイスを授けます。参考になさってください。(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<怒るコーチが怖くてサッカーやめたい問題

<サッカーパパからのご相談>

息子は普通のスポ少に入っているのですが、この春から新しいコーチが入って来ました。

先日、練習の最後でインターバル走を行なった時に息子が最後まで走りきれませんでした。それに対して練習後に子どもと私の前で「ここで頑張れないなら、もう手の施しようが無い」とコーチから発言されました。

私もD級ライセンスを持っていますが、子どもを見限るような発言を平気でする事に違和感があり、声掛けの仕方が違うんじゃないのか? と抗議して、チーム監督及び代表者にクレームを入れたのですが、親としてまずい対応でしょうか?

指導者が子どもたちを見下している態度を見せた時、保護者としてはどのようにすればよいのか、教えてくれませんか。

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

9歳ですから、小学3年か4年生ですね。そもそもその年代で、練習の最後にインターバル走を行うこと自体は正解なのでしょうか。なんのためにやらせているのか、私にはわかりません。

また、コーチの方が子どもの前でおっしゃられた「ここで頑張れないなら、もう手の施しようが無い」という言葉。これは、パワハラであり、子どもの権利条約にも抵触しています。

それらはさておき、このコーチがなぜこのようなことを口にしたのか、考えてみませんか。

■感情的になりやすい相手には、自分が冷静を保って質問してみる

ご本人に尋ねなければ真意はわかりませんが、このコーチは走り切れない子どもの姿を見て感情的になったのではないか、と推測します。情けないというような失望感、もしくは、なぜ頑張れないのだというような怒り、でしょうか。

それでは、保護者としてどう対応したらよいか。

このように、多少なりとも感情的になりやすく「怒りコミュニケーション」になりがちな方に対しては、まずこちらが冷静に向き合う必要があります。

「すみません。わからないので教えてくれませんか?」と"質問"する姿勢を見せるのがひとつの方法かと考えます。

例えばこんな質問をしてみましょう。

★「ここで頑張れないなら、もう手の施しようが無い」という言葉の真意はどこにあるのでしょうか?
★コーチは、どんな意図や目的があって、そうおっしゃったのでしょうか?
★このような言葉で、子どもは成長するのでしょうか?

そのようなやりとりができたら、お父さんサイドの主張の根拠として、下記のように、スポーツ少年団のことについて書かれてあるものをプリントアウトして渡します。

日本スポーツ協会(以前の体協)のサイトに「スポーツ少年団とは」という説明があり、そこに「スポーツ少年団「理念」の再確認と今後のあり方について」というPDFの書類が掲示されています。
スポーツ少年団「理念」の再確認と今後のあり方について

こちらの「Ⅱ」の「3.その活動」という項目に、活動で留意する点が13項目並んでいます。

そこにある、(7)と(8)は、このケースに近いかもしれません。

(7) 基本的にはスポーツ少年団におけるスポーツ活動は団員の年齢,性,体力,運動能 力や技術および活動目標などが考慮され,発育・発展途上にある団員達にとって,量 的にも質的にもバランスのとれたスポーツ活動が提供されなければなりません。
そのためには,常に新しい活動プログラムの開発,少年期にふさわしい競技ルール の制定など周到な配慮が必要です。

(8) つまり,基本的には少年期は心身ともに発育・発展の途上にあり,それゆえに未完成 の時期であり,またいろいろなスポーツ種目への適性の可能性を秘めている時期であ ることを考慮し,将来を展望したスポーツ活動が大切になります。

引用元:スポーツ少年団「理念」の再確認と今後のあり方について

この二つのみならず、13項目はどれも正解であり、大切なことなのですが、いかんせん指導者の方のこころに突き刺す、浸透させるような工夫はなされていません。
したがって、少年スポーツにかかわる大人たちが指導や運営の仕方をアップデートできないままです。

そのなかで、次々と子どもが傷つき、こぼれてスポーツから離れていくという現状があると感じています。お父さんの息子さんもそのひとりかもしれません。

■指導現場の暴力・暴言など 引き継がれてきた負の連鎖

ただ、「罪を憎んで人を憎まず」という言葉があるように、息子さんのコーチに対してストレスを貯めないようにしましょう。そのコーチもおそらく「ここで頑張れないなら、もう手の施しようが無い」と似たような、ひどい言葉を言われ、見下されて育ったのでしょう。

幼少時の刷り込みの影響は非常に大きく、自分で気づいたり、勉強するなどしなくては、結局同じ指導をしてしまうもの。彼からすれば、自分が子どものときに出会った大人たちの態度を踏襲しているだけにすぎません。暴力も、暴言も、小学生でもレギュラーしか出場させない勝利至上主義も、理不尽なハードトレーニングも、すべて同じ流れだと思います。

だからといって、お父さんおひとりの力で彼らを変えるのは難しいでしょう。

私自身、子どもが少年団に所属しているとき、みなさんにわかってほしくて池上正さんの本を見せたりしましたが、目次をみるだけで「ああ、ぼくらとはちょっとやり方が違いますね」とパタッと閉じられてしまいました。

これは10年前のことですが、まだ難しい。少年サッカーのパラダイムシフト(価値判断の変容)は劇的には進みません。

次ページ:言い方、切り口を変えてお願いすれば事態が好転する可能性も

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文:島沢優子

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